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2005年10月10日 (月)

知財信託はなぜブレークしない

 知財信託とは、知的財産を信託するものです。これは信託業法の改正により可能になったものです。従来の信託業法では、信託財産が限定列挙されていたため知的財産を信託することはできませんでした。この知的財産とは、たとえば特許権とか著作権とか、目に見えない価値のあるのですが、いくらなのかを客観的に評価するのが難しいものです。

 たとえば中小企業が持っている特許権をそのままもっていても管理することができる人がいないために、宝の持ち腐れになったり、侵害されても泣き寝入りするところ、いくつかの中小企業の特許権をまとめて信託することにより、専門家が管理できるというメリットがあります。

 大企業のグループがばらばらに持っている権利をまとめて管理することにより効率化が図られます。

 特許権を持っていた事業会社が倒産しても、権利は破産管財人の手にわたりません。

 もし知財管理会社を作り、そこに権利を譲渡した場合は、譲渡時に時価と簿価の差額に譲渡益課税がなされコスト増になりますが、信託の場合は、信託設定時点では、課税されません。

 また、信託設定により受け取った信託受益権を売却することにより、投下資本を早期に回収することも可能になります。

 知財立国をめざす日本の牽引車の一つに知財信託はなるはずですが、なかなかブレークしません。これはなぜなのか。要因はいくつかあると思いますが、決定的な要因の一つに、権利侵害者が現れたときに請求できる損害賠償の範囲が狭まることです。

 特許権侵害に基づく、損害賠償額のうち逸失利益の算定方法は

①譲渡された侵害物権の数量に特許権者の単位数量当たり利益額を乗じた額で、特許権者の実施能力を超えない額(ただし、特許権者に販売することができないとする事情があるときはその分を控除する)を損害の額と擬制する。(特許法102①)

②侵害者が侵害行為によって利益(限界利益)を得ている場合には、その利益額を権利者の損害と推定する。(特許法102②)

③特許発明の実施に対して受けるべき金額の額に相当する額(通常は侵害品売上額X実施料率)を自己が受けた損害の額として賠償請求できる。。(特許法102③)

 このうち、特許権を有している事業会社が、訴えの当事者の場合は①から③のいずれかの方法により算定された金額で損害賠償ができますが、信託をした場合は、信託会社自体は、③(信託会社自身が実施許諾権限を有していることが前提)しか請求できないことになります。

 さらに信託設定後の事業会社で、専用実施権や独占的通常実施権が付与されていないケースにおいては、原告適格すら認められなくなります。つまり信託設定により、権利を守るどころか、権利の侵害に手が出せなくなる状況がおこりかねないのです。

 この問題は法律を改正することで早期に解決しないと、大きな目標である知財立国のための知財信託は、掛け声倒れになってしまいます。

参考  弁護士 小林卓泰 知的財産信託における法的留意点 別冊NBL No102 商事法務

 

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