目的信託? 公益信託
中田さん12/10のコメントにお答えして
「地域開発がらみで、地方自治体に、地元住民が資金を寄付するような仕組みを検討しています。チャリタブル・トラストや信託宣言を使った、いい仕組みは無いでしょうか?」
これって 地元住民 → → 地方自治体 → → 地域開発
お金(寄付) お金
というスキームですよね。これに信託を利用するということですよね。
住民 → → 信託 →→ 地域開発(受益者)
委託者 受託者 受益者
いわゆる他益信託で、受益者が特定していないというパターンですよね。
たぶん、公益のために使われるから、公益信託にはなるような気がします。公益信託の場合は、主務官庁の許認可がいると思います(信託法67~75)。
ただし公益信託については主務官庁制を廃止するかどうかについては、公益法人法制の改正の動向を踏まえて、なお検討するものとする(信託法改正要綱試案第70)となっていますので、今後は許認可はいらない方向になると思いますが、税制上の特典を受けるためには、別途手続が必要となってくると思います。
この公益信託のうち特定公益信託というのがあって、信託銀行がやっているのですが、一定の世のために集めたお金を使うような信託の場合は、国がやるべきことをかわりにやるものだから、このために寄付をした人に対して税金上の特典をあげましょうというものです。これにあてはまると、寄付をした個人は寄付金控除(所得税法78①、③)、法人は寄付金の損金算入(税金計算上、費用としてみてあげる)(法人税法37⑤)、相続財産を信託した場合は、相続税が非課税(租税特別措置法70)、信託期間中の運用益も非課税(というような恩典(所得税法11③、法人税法12①但書)があります。
特定公益信託の場合は、税法上の特典が得られるということでかなり制限が設けられています。 まず受託者自ら事業を執行するようなものはだめです。だから住民から集めたお金を受託者が事業資金として使い、あがった収益を地域開発に使うというのはだめということでしょう。
いわゆるお金を左から右にわたすようなもの 国、地方公共団体ならびに公益法人等が所有する公共施設等の設置、管理に対する助成金の給付はOKのようですが、(社団法人信託協会、公益信託その制度のあらまし P14)
受託者自身が事業を行いその儲けを地域開発に使うような場合の信託としては、今信託法の改正が行われ目的信託というのが検討されていますが、これで使えるかもしれません。
問題は、税金なんですよね。特定公益信託にもならず、公益信託のカテゴリーにもあてはまらないような目的信託となった場合、寄付した人がばばをつかむような税金のシステムなんですよ。つまり寄付しても寄付金を税金の計算上、引いてもらえない。あげくのはてに信託で事業をやって儲けた分については、自分は利益を受けないにもかかわらず、税金だけかかってしまったりするんですよ(所得税法13①二、法人税法①二)。
特定公益信託にならないけど公益信託というような場合、寄付した段階で個人や法人が寄付金を税金の計算上引いてもらえるかどうか微妙だし(むずかしいかもしれない)、信託期間中の儲けに関して、個人は公益信託の場合は税金がかからないが(所得税法11)、法人は儲けに対して税金がかかってしまう(法人税法12)という悲惨な結果になります。
つまり寄付した人が損をしないような信託スキームは特定公益信託にするしかないんですね。特定公益信託については信託銀行に相談された方がいいとおもいます。
なお、信託法が平成19年にも改正されそうですし、公益法人制度改革もありますし、ついでに信託周り、公益法人周りの税金も付随して改正が行われると思われますので、この辺の動向をにらんで、どうするか考えられた方がいいとも思います♪
---------参考 目的信託-------------------------------------------------
目的信託というのは受益者を特定しないものです。上記のようなケース でこれについて要綱試案では2案でていて、
甲案 受益者を確定し得ない信託(いわゆる目的信託は)は、公益信託を除き、有効に成立しないものとする
乙案 1.受益者を確定し得ない信託は、有効に成立するするものとする
2.公益信託以外の信託であって受益者が確定されないものは、効力の発生の日から起算して一定の期間を超えて存続してはならないもとのとする
| 固定リンク
コメント
中田です。いろいろご教示ありがとう、ございました。参考にさせていただきます。
投稿: | 2005年12月13日 (火) 09時53分