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2006年3月18日 (土)

来料加工問題 納税者VS国税 どっちが勝つか?

 昨年あたり、税金をめぐる納税者と国税の争いで話題になったものに来料加工問題があります。

 これは、日本のメーカーが、中国で製造を行うために直接進出する際に生じるビジネスリスクを避けるためによく使われるスキームです。すなわち日本のメーカーが香港に子会社を作ります。子会社は中国の会社と製造委託契約を結びます。材料は無償で提供し、中国の会社で生産し、製品を買い取ります。また中国の会社での製品の品質の管理等のために香港の会社と中国の会社が経営委任契約を結び、管理者を香港の会社が中国の会社に派遣します。中国の会社に対しては、加工賃や家賃等を支払います。

 日本では、香港のような税率の低い国に子会社を作った場合、原則としてその子会社の利益を親会社の利益に合算させて税金を計算しないといけません。子会社に利益を溜め込んで、日本での税金を減らすのは許せない!ということでしょう。この税金の制度をタックスヘイブン税制といいます。

 でも税率の低い国の子会社の利益はなんでも合算課税の対象になるのではありません。ちゃんとビジネスをした場合は、合算課税の対象になりません。

 合算課税の対象にならない要件はいくつもありますが、もし卸売業なら非関連者基準といって、親会社グループ以外とたくさん取引をしていたらOKです。製造業ならば、その国に工場があればOKというのがあります。

 日本標準産業分類によると 自ら製造を行わないで、自己の所有するに属する原材料を下請工場などに支給して製品をつくらせ、これを自己の名称で販売する製造問屋は製造業とせずとなってます。

 国税側は、来料加工契約は経営委任契約とセットになっている。香港の子会社から人を派遣して、工場をコントロールしているということは、実質的には、香港の子会社の工場のようなものだ。ということは香港の子会社は工場を持っているから製造業だ。なのに香港に工場がないということはタックスヘイブン税制でいう製造業はその国に工場を持たないとだめと言う要件を満たしていない。だから税金をかけるぞということでしょう。

 ちなみに香港と中国は政治的には同じくにでも、税金的には別の国の扱いを受けます。

 納税者側は、来料加工契約はあくまでも下請け契約であり、香港の子会社は、下請けから受取った製品を自分のブランドで売ってるから、製造問屋です。また中国の会社へ管理者を派遣するのは、品質維持のために必要だからであり、これをもってして、製造問屋ではなく実質的に製造業というのはおかしいということでしょう。

 ところで日本においては租税法律主義という原則があります。これは、税金をかける場合は、法律で決めてください。お上が勝手に税金をかけると、納税者は不安で、取引ができなくなるでしょ。ということです。

 取引が税務上どうかを判断する時は、本件の場合は、来料加工契約一連のスキームが製造問屋としての要件を満たしているかを判断します。その際に大事なのは、あくまでも法律的に要件にあてはまっているかであって、経済的な実質がどうかではないのです。

 国税は、最近経済的実質アプローチで税務訴訟に持ち込んで負けてますね。例えば航空機リース事件において、任意組合契約を実質的には利益配当契約だと主張しましたが、任意組合契約としての要件を満たしているので、任意組合契約の場合の税金のルールで税金を計算して問題がないと判決されてます。

 経営委任契約により香港子会社の従業員が中国の会社で製造のコントロールをしてもその効果はあくまでも中国の会社に帰属するので、この契約をもって中国の会社の工場が香港の子会社の工場とはいえません。

 また来料加工契約も、契約として下請契約の要件を満たしており、実質上も下請として運営されているならばまぎれもく香港の子会社は製造問屋であり、製造業ではなく卸売業と判断されるのではないでしょうか。

 参考文献

 宮武敏夫 「タックスヘイブン対策税制と来料加工」 国際税務 Vol25 N012.

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