信託税制の不思議 退職給付信託
今日は4月24日、おそらく、上場会社の個別決算は、ほとんど〆てると思います。
決算をしている作業で、いろんな勘定科目を固めていきますが、いつも最後に残るのが、税金、税効果、 まあ利益が固まらないとどうしようもないので、そうなるのですが
上場会社は、会計と税務が結構遊離しているので、法人税法別表4やら別表5(1)やらにぎっしり、数値が書き込まれてたりしますよね。
申告書を作る段階になって、なんでこんなややこしいことせにゃならんのかと思うものの1つとして退職給付信託の処理があります。
これは、退職給付引当金を会計上導入する時に、多額の会計基準変更時差異をいきなり計上すると、費用がいっぱいいでて、決算の数値が悪くなるのはかなわないということで、信託銀行あたりがあみだしたものだと思います。
たとえば含め益のある有価証券に退職給付債務を設定することにより、解消しましょうというもの。 会計上の仕訳
退職給付費用(会計基準変更時差異) XXX 退職給付引当金 XXX
退職給付引当金 XXX 有価証券 XXX
有価証券譲渡益 XXX
退職給付信託というのは、従業員等の将来の退職金にあてるために会社財産に信託を設定したもので、会社は信託設定後、自由に処分できないので、有価証券も退職給付引当金も会計上、オフバランス化しましょうというものです。
でもね。ここで税務が登場してくるわけです。税務上、退職給付債務というのは、受益者が特定していない信託となるわけなのです。従業員ということはわかっているけど、どの従業員にどれだけというのがはっきりわからない。未来の従業員もいてる。
で、こんな場合は、お約束の委託者課税となるわけです。但書信託で記載されている厚生年金基金等の契約とも違うしね。
そうすると、どうなるかというと 会計上は有価証券はないとして計算してるけど、税務上は有価証券があるよって計算するんですね。
信託設定時に、会計上は、有価証券譲渡益がでてきても、税務上は、有価証券を譲渡していないから、この部分は税務上は益金にならないのは、企業にとって喜ばしいことだった。たしかにここまでは、
ところが有価証券があると仮定して、税務上は処理をし続けないといけない。だから、配当を受取った場合は、その分を資産計上しないといけないし、国内からの配当の場合は、受取配当の益金不算入をしないといけない。 期待運用収益部分は、会計上の仮定の収入だからこれは、税務上は益金にいれてはいけない。。。。(ためいき)
これがややこしくて大変。。わけのわからん資料を作らないといけないし、、、間違えそうだし
でも退職給付信託って、委託者(企業)への返還が認められないものでしょ。つまり実質的には、自分が得られない収入に対して、税金だけかけられる。しかも手間が大変。
これは、おかしいですよね。。。 委託者課税の大弊害です。信託財産を1つの組織体として課税して、信託財産の収益から税金を払うというようにすればいいのです。信託設定時に譲渡益課税が行われるという弊害はありますが、
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法人税法第12条 信託財産に係る収入及び支出の帰属
信託財産に帰せられる収入及び支出については、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める者がその信託財産を有するものとみなして、この法律の規定を適用する。ただし、合同運用信託、投資信託、特定目的信託、 第37条第6項(寄附金の損金不算入)に規定する特定公益信託、社債等の振替に関する法律(平成13年法律第75号)第2条第11項(定義)に規定する加入者保護信託又は 第84条第1項(退職年金等積立金の額の計算)に規定する厚生年金基金契約、確定給付年金資産管理運用契約、確定給付年金基金資産運用契約、確定拠出年金資産管理契約、勤労者財産形成給付契約若しくは勤労者財産形成基金給付契約、国民年金基金若しくは国民年金基金連合会の締結した国民年金法(昭和34年法律第141号)第128条第3項(基金の業務)若しくは第137条の15第4項(連合会の業務)に規定する契約若しくはこれらに類する退職年金に関する契約で政令で定めるものに係る信託の信託財産に帰せられる収入及び支出については、この限りでない。
- 一 受益者が特定している場合 その受益者
- 二 受益者が特定していない場合又は存在していない場合 その信託財産に係る信託の委託者
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コメント
犬飼さん
信託大好きおばちゃんです。
コメントありがとうございます。
信託税法のみなし受益者の要件 変更権+停止条件付財産給付にしたのは、退職給付信託を委託者課税にさせるためだろうと予測していたのですが、先日のセミナーでそのとおりだということがはっきりしました。
投稿: 信託大好きおばちゃん | 2009年6月16日 (火) 06時34分
遅ればせながら、やっとここまできました!
会計上の退職給付信託は、税務上の退職年金等信託とは異なるが分かって、次に平成20年度監査六法を見ました。そしたら、そこに載っていた退職給付会計に係る税務上の取り扱いは、信託法改正前のもの。どうしたものかと思って、ネットで調べたら一番にこちらのページにあたりました。とても勉強になりました。ありがとうございます!
投稿: 犬飼久美 | 2009年6月15日 (月) 20時32分