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2006年6月30日 (金)

武田薬品 移転価格税制で追徴570億円

1.報道によると

 昨日(平成18629日)の報道によると、武田薬品工業株式会社(以下『武田薬品』)が税務調査を受け、海外の関係会社に通常の売値よるも安い値段で製品を販売したことにより海外に利益を移転したということで、570億円追徴課税されたそうです。このような課税を移転価格税制といいます。

 武田薬品としては、到底納得できないということで、今後裁判等でとことん争うというスタンスをとっているようです。

 最近といって10年以上の傾向ですが、大企業が移転価格税制で、ものすごい金額の税金を追徴されるケースが目立ちます。

 武田薬品は、この570億円の税金はいずれ自分の正当性が認められて還付されるものと考えているので、長期仮払税金(資産)として計上するようです(注1)。

 ちなみにここ1年くらいで移転価格税制により追徴課税されたTDKや京セラは、過年度法人税等(費用)として税金を計上しています。

2.移転価格税制とは、

 移転価格税制とは、ようするに国同士の税金の取り合いが本質だと思います。

ある日本の会社が100円で作った製品をアメリカの第三者の会社に250円で販売し、アメリカの会社はこの製品を300円で販売します。この場合、日本では利益が150円、アメリカでは利益が50円となり、各々の利益に対して税金が課せられます。

ところが日本の会社がアメリカに販売子会社を作り、同じ製品を子会社に200円で販売し、子会社は300円で販売します。この場合、日本で利益が100円、アメリカでは利益が100円となり、各々の利益に対して税金が課せられます。

日本サイドからみると、第三者に販売した場合150円の利益に対して税金が課せられるのに、子会社に販売したら100円の利益に対してしか税金が課せられないというのは、会社が50円分アメリカに利益を移転させたからと考えます。そしてこの部分は本来日本で発生すべき利益だから税金をもらいますよということです。

グループ全体でみると100円で作ったものを300円で売っているから利益は200円なのですが、日本とアメリカでこの利益をいくらでわけるかというそれぞれの国がルールづけしたのが移転価格税制であり、その分ける基準は、第三者に販売したらいくらかというような金額をベースに判断することになります。

3.救済方法は?

上記の例でアメリカの子会社に200円で販売したのに日本で250円で販売したものとみなして税金が課されると、50円部分については、日本とアメリカの両国において課税されることになります。

同じ所得に対して2重に税金を課すというのは不合理なので、救済方法としては、日本のお上とアメリカのお上で話し合いをしてもらい、日本で増加した所得部分については、アメリカで所得を減額してもらい、アメリカで納付した税金を還付してもらうという方法はあります。

ただ話し合いは必ず合意に達するとは限りません。だめな場合もあります。

ですから通常、移転価格税制で追徴課税された場合納税者は、アメリカのお上と協議してくださいというお願いをすると同時に、日本国内で、お上の処分は納得いかないということで異議を申し立てることができます。そして納得がいくまで、それこそ最高裁判所の判決がでるまで争うこともできます。

4.事前に対策をとることはできないのか

移転価格税制は、追徴される税額が非常に大きな金額となり企業経営に対するインパクトも大きくなります。課税リスクがいくらぐらいあるか事前に予想できないと、経営判断に狂いも生じかねません。

事前に対策をとる方法として事前確認制度の利用があります。これは、海外の関係会社と取引をする場合の価格の設定方法に関して将来課税リスクがおこらないかどうか事前に確認する方法です。

事前確認制度は日本のお上だけに確認をとる方法と、相手国のお上の方も確認をとる方法の2つあります。日本のお上だけの方が、時間やコストはかからないといっても、かなり時間とコストがかかります。

また事前確認制度の執行件数も2国間協議つきの場合だと2004年で発生件数が63件、処理件数49件、繰越件数143件(注2)というように、世の中で起こっている取引数から考えると非常に少ない件数しか処理がなされていません。

5.さて武田薬品の今後は

さて、武田薬品の移転価格税制の動向はどうなるのでしょうか。武田薬品の場合は、米国に50:50で設立した会社(TAP社)に対する製品の販売価格が低いということで課税されています。

武田薬品側としては、TAP社の株主の半分は第三者であり、第三者に利益を移転させるようなことは、経済的合理性を追求する武田薬品が行うはずがない。

また製品の価格は自社だけでは決められず、第三者である合弁先の意向が働く、つまり利害の対立する会社間で決められた価格だから、移転価格税制の対象にならない。

にもかかわらず課税したのは不当だからとことん争うというように読み取れます。

しかし移転価格税制というのは、50%超の資本関係のある会社との取引ではなく50% 以上の資本関係のある会社も対象会社に含まれます。

また移転価格税制では相手会社に対する利益の移転の意思があるかどうかが問題ではなく、合理的な価格で取引がなされているかという簡単なようで非常に難しい客観的な価格を弾き出し、その価格との乖離がどうなっているかで判断をされるものです。

感情論で裁判にもつれこんでも武田薬品側によい結果はもたらされないと思います。あくまでも勘定論で、武田薬品は法律に基づいて価格を算定し、その価格は合理的である。お上の弾き出した価格は法律に基づくと不合理である、だから課税処分は取り消せというように主張を展開していくのかなあって、信託大好きおばちゃんは思うのですが♪

1 平成18629日 日本経済新聞 朝刊

注2 国税庁『事 況 A P A 2005』

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2006年6月29日 (木)

信託会社は 適格機関投資家じゃないんですね

1.信託協会の平成18年規制改革要望

平成18年6月28日、社団法人 信託協会が『平成18年度規制改革要望』を提出しています。

いつになく長文で頭がいたくなったのですが、その中であれっと思う要望が書かれていました。

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信託会社の適格機関投資家化について

証券取引法及び証券取引法第2条に規定する定義に関する内閣府令において、信託会社は、適格機関投資家として規定されていない。

・流動化取引において、特定社債等のプロ私募による発行が行われているが、プロ私募に適用される転売制限の結果、適格機関投資家でない信託会社は、プロ私募により発行された特定社債等を受託できない。

・よって、信託業法第3条の免許を受けた信託会社のうち、信託財産に含まれる有価証券が一定額以上であるなど、一定の要件を満たす信託会社について適格機関投資家とすることを要望するもの。

 

2. 適格機関投資家って

適格機関投資家というのは、プロの投資家みたいなものです。証券取引法(もうすぐ金融商品取引法 略して金取)は、情報を知らない投資家が金融商品を買って損をしないため、つまり投資家保護のためのルールですが、適格機関投資家というのはプロだから、投資家保護がそんなに必要がない。

通常50以上の人に新たに株式を発行して引き受けてもらうような場合は、有価証券届出書を提出し、その後半永久的に有価証券報告書を提出し続け、会計士の監査を受け続けないといけないのです。でも適格機関投資家だけが株式を引き受ける場合だったら、100人の適格機関投資家だってこの制限にはかかりません。

3.適格機関投資家って誰がなれるの

 これは内閣府令4で定めているのですが、たとえば証券会社、投資信託委託業者、銀行、保険会社、農協もあるし、届出を出せばベンチャーキャピタルも、一般の事業会社もなれるみたいです。それからなんと投資事業有限責任組合も適格機関投資家なのですね。

信託銀行っていうのは、銀行だし、信託業法で免許を取得するのではなく兼営法による免許を取得しているから適格機関投資家なのでしょう。きっと

4. 適格機関投資家になった場合のメリットは

適格機関投資家になった場合のメリットというと、TMK(特定目的会社)の社債を引き受けると、TMKが支払う配当が損金(税務上の費用になる)になることです。配当が損金になるとTMKの所得がその分減るから、税金によるキャッシュアウトが減り、投資家の受け取る利益が増えます。

配当が損金となるための要件として、適格機関投資家がTMKの社債を引き受けた場合というのがあります。TMKに関して、同族会社に該当するとこれまた配当が損金とならないのですが、適格機関投資家に社債を引き受けてもらったような場合は、同族会社の要件が不要になります。

要望は通るでしょうか

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2006年6月28日 (水)

利益参加型社債に投資した場合の投資家の税務

1.利益参加型社債

利益参加型社債とは、社債の利子が、発行する会社の利益に連動するような社債のことです。

日本でも商法の時代から利益参加型社債は、定款で定めることにより発行することが可能という見解もありました。しかし日本で利益参加型社債が発行された事例を私は確認していません。

2.ケイマンで発行された利益参加型社債のスキーム

この利益参加型社債はケイマンで発行することができます。ケイマンで発行された利益参加型社債を組み込んだ代表的なスキームとしては、日本の投資家がケイマンのファンドに出資し、ケイマンのファンドがケイマンで発行された利益参加型社債に出資し、この会社が匿名組合出資するものがあります。    

3.ケイマンのファンドからの収益の分配金は利子か配当か

ケイマンのファンドに個人が出資して収益の分配を受けた場合その所得が利子所得なのか配当所得なのかという問題があります。

もしこのファンドが日本の金融機関を通じて購入した公募公社債投資信託ならば利子所得として収益分配金に20%の税金が源泉分離課税されます。確定申告で精算する必要はありません。

もしこのファンドが日本の金融機関を通じて購入した公募株式投資信託ならば、配当所得として平成20331日までに受け取る収益分配金に10%の税金が源泉徴収されます。確定申告をしなくてもいいし、確定申告することもできます。

収益の分配金に課せられる税金を考えると公募株式投資信託とされる方にメリットはあります。そして多くのケイマンの利益参加型社債を組み込んだファンドの収益の分配金は公募株式投資信託として処理されています。

4.株式投資信託とされるためには

税法上、公社債投資信託とは、証券投資信託のうち、信託財産のうち1%も株式に投資せず、国債、地方債や社債のみに投資するものです。このような公社債投資信託の分配金は利子所得とされます。

利益参加型社債というのは、経済的に考えると議決権のない種類株式に投資して、配当が支払われたものと同じようにも考えられますが、税法でどの所得かを考える場合は、実質主義で判断するといっても法律で決められたルールを逸脱して判断することはありません。社債としての法律上の要件を満たしているものであるならば、この社債のみを組み込んだ投資信託は公社債投資信託となると思います。

おそらく若干株式にも投資することにより公社債投資信託の要件を満たさないように組成しているのではないでしょうか。

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2006年6月27日 (火)

議決権の信託とヒルズ黙示録

1.議決権の信託

議決権の信託というのは、株式そのものを信託するのではなく、株主権のうち議決権だけを切り出して信託するということです。

これは認められないと解されています。なぜなら信託できるのはあくまでも財産権であり、議決権というのはその財産権の一部を形成しているものだから、この部分だけを切り出すことはできないと考えられるからです(注1)。

2.ヒルズ黙示録のなぞ

(1)証取法の大量保有報告

『ヒルズ黙示録』の中で、フジサンケイグループの元議長鹿内啓明夫妻が所有するニッポン放送株式を大和SMBCに直接売却せず、この株式を信託しています。そして株式の権利を経済的権利と経営支配的権利(議決権)に切り分けて、まず経済的権利の部分に相当する信託受益権を大和SMBCに売却しています。

議決権は鹿内夫妻が有しているので、証券取引法上は株式の事実上の支配権は鹿内側にあるとされたから証券取引法で大株主(5%以上)の株式の移動があったときに必要な大量保有報告の届出を免れたとされています(注2)。

(2)なぜ信託契約後、鹿内氏は株主総会に参加できたか

それではニッポン放送株の名義変更はどうなっていたのでしょうか。議決権だけを鹿内夫妻に残し、経済的価値部分だけを信託するということは、議決権の信託ができないのと同様できないのではないかと考えます。そうすると株式(株券)が信託銀行に引き渡されます。信託銀行は発行会社に対抗するために名義を変更する必要があります。

名義を変更すると株主が変わるから、株主総会に参加できるのは新たな株主です。信託した株式の議決権を鹿内氏が有しているというのは、鹿内氏の指示にしたがって受託者が議決権を行使するということだと思います。でも鹿内氏が信託受益権の契約締結後、株主総会に出席する旨の連絡をしてきました(注3)。

本来なら信託銀行が株主だから株主総会に出席すべきなのになぜだろうかと考えました。ポイントはこの信託受益権契約が平成16527日に行われたことにあると思います。

株主総会に出席することができる株主は、株主名簿に記載されている株主です。株主は変わることがあるので、いつの株主名簿に載っている株主が総会に出席できるかを決める必要があります。そしてこの日をたとえば3月31日と決めたならば、3月31日時点のニッポン放送の株主であった鹿内氏が株主総会に参加できるのです。総会時点では株主であるかどうかは問題ではありません。

このような手法を採用することにより、議決権を鹿内氏が行使しているからまだニッポン放送株式を所有しているという状況を作りながら、実質的には大和SMBCに譲渡したのでしょうか。

1 四宮和夫 信託法 (新版) 有斐閣 P136

注2      大鹿靖明『ヒルズ黙示録 検証ライブドア』朝日新聞社P33

注3      上掲 大鹿靖明P48

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2006年6月26日 (月)

酷似した解説書は著作権侵害にあたらない

1.平成183月15日の判決

 平成18315日 知的財産高等裁判所第4部は、法律の解説書の著作権侵害差止めについて、著作権侵害に基づく損害賠償請求は認められないが、一般の不法行為に基づく損害賠償請求権は認められるという判決を下しました(平成17年(ネ)100951010710108

2.解説書の内容をコピーしても著作権侵害には当たらない

この判決は法律の解説書ですが、信託大好きおばちゃんも縁があって法律や税務の解説書の一部を書いたことはあります。

解説書というのは、あの一読して、3回は頭が痛くなるような法律を自分の頭でくるっとかきまぜて、理解して、ほかの人にもわかってもらえるようにしたものです。いまや解説書は、決まってルールを実務に落とし込むためには必要不可欠なツールです。

このほかの人にもわかってもらえるような表現をするというのは、著者の創造性に依拠するものだから、私は著作権で保護するべきものではないかと考えています。

でも判決の要旨によると『格別な創意工夫を凝らしてするものでない限り、平易か、単純化等の工夫を図るほど、その成果物として得られる表現は平凡なものとなってしまい、著作権法によって保護される個性的な表現から遠ざかってしまう』、だから、酷似したような文献が出版されても著作権法による侵害は認められないとされています。

これはとってもむかつきますね。だって物事を複雑にわかりにくく表現することより、わかりやすく平凡に表現することの方が、はるかに難しく、創造性を要求されるからです。

3.解説書のコピーは一般の不法行為にはあてはまる

このように内容が酷似したような解説書が出版されても著作権に基づく損害賠償はできませんが、一般の不法行為による損害賠償請求はできるとされました。

酷似した書籍の出版は、元の書籍の出版から短期間の間になされています。このように短期間の間に出版ができたのは、元の書籍の文章や構成に依拠したようなものだからです。この依拠というのは、通常、他人が同じ主題で原稿を作るなら、当然別の表現になるだろうと思われるような部分までも酷似していることです。

短期間に同じような読者層をターゲットにするような書籍で明らかにコピーしたようなものを出版した結果、元の書籍の売上が競争により減少します。これは酷似した書籍の執筆者や出版社が、元の書籍の執筆者や出版社を妨害したことによる利益の減少であり、その分酷似した書籍の執筆者等は不当に利益を受けているから、この利益に相当する部分は、元の書籍の執筆者等に損害賠償を支払いなさいと命じています。

この判決は現在、上告提起中ということですが、私自身はやはり著作権が認められないということが納得できません。たまたま短期間の出版だから一般の不法行為成立というならば、もし数年後に酷似した解説書を出版しても、著作権の侵害にもならないし一般の不法行為にもあたらないということになりかねないからです。解説書って、季節商品みたいなものではないと思うのですが♪

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2006年6月25日 (日)

Get Ahead, Learn Mandarin

1.      Get Ahead, Learn Mandarin

2006626日のTIME誌で”Get Ahead, Learn Mandarin”(進んで、中国語を学びましょう)という記事があります。

以前世界の国の中には、中国語を学ぶことを禁止するような国(たとえばインドネシア)がありました。これはひとつには中国語を学ぶということは、自国において共産主義を広めることになりかねないという懸念があったからだと思います。

それが今、中国語を学ぶということが世界的にみてもブームになっています。

中国経済が成長し、世界経済に与える影響が大きくなったことが主たる要因です。20世紀、世界の人々は英語を積極的に学びました。これは英語圏の国とくにアメリカの世界経済に与える影響が大きかったから、英語を学ばないとビジネスに支障をきたすことも大きな要因だったと思います。そして21世紀は、このキーとなる言語に中国語が加わると思います。

2.英語圏の人が中国語を学ぶのは難しい

中国語学習ブームはアメリカでもあります。ただ学びたい人は多いけれども、中国語を教える人が非常に少ないという問題があります。

アメリカ人のような英語圏の人にとって中国語を学ぶのは非常に難しいです。アメリカでは中国語は、アラビア語、広東語、日本語、ハングル語とならんで5大難解言語といわれています( the U.S State Department’s Foreign Service Instituteより)

ですから彼らがフランス語やスペイン語を学習するよりも習熟するのに3倍の時間がかかります.

3.日本人が中国語を学ぶのも難しい

実は信託大好きおばちゃんも中国語を学習して2年ぐらいたっているのですが、非常に難しいなと思っています。

なぜ難しいかというとまず日本人なら誰でも戸惑う4声の発音の問題があります。中国語は独特で、同じ発音でも抑揚が4通りあって、それぞれ意味の違う言葉になります。この発音の違いを聞き取ったり、きちんと発音するのが難しいです。

また中国語の発音はピンインという発音記号をつけて読み方をあらわしていますが、たとえばzhijiの区別 nngを明確に聞き分けるのも難しいです。

次に文法ですが、これも日本語の文法の体系というよりは、英語に似た文型になります。

漢字は、日本でも使われているので、文章を読んでいるとなんとなく意味はつかめます。でも意味が違うものもあれば、漢字は似ていても微妙に違うものもありますし、簡体字から意味をすぐ読み取るのも難しいです。

4.大人が第2外国語、第3外国語を学ぶためには

子供は、誰でも自然に言葉を覚え、使えるようになります。特に猛烈な訓練をしているわけでもありません。周囲の環境もありますし、子供は、新しい言語を吸収するキャパシティが頭に備わっていることもあります。

大人になると、既に言語を理解し使う回路が頭にできていて、この回路に、新しい言語を入れ、新しい回路を作るのは非常に難しいとされています。

しかし新しい言語を学び習得するのが難しいといっても不可能とはいっていません。大人は、理屈を考え、理解して新しいものを頭脳にいれることができます。記憶が衰えても、理解して覚えると記憶が頭の中に定着します。

とはいっても語学は、理解よりもまずインプット、そしてインプットした言葉をしゃべったり書いたりというようにアウトプットすることが何よりも大事、Never give up! ですね♪

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2006年6月24日 (土)

井沢元彦さんの『逆説の日本史』~信長の比叡山延暦寺焼き討ち~

1.比叡山延暦寺の焼き討ち

1571912日、織田信長は、比叡山延暦寺を焼き討ちし、僧侶、俗人、老若男女あわせて4,000人を皆殺しにしたといわれています。

罪のない人たちを、問答無用とばかりに皆殺しにしたことから織田信長は血も涙もない残酷な人であり、宗教弾圧を行ったと後世の人たちは批判しています。

この批判に対して否という回答をわかりやすくおこなったのが、井沢元彦さんの『逆説の日本史 10 戦国覇王編』です。

2.巨大寺院は、強い戦国大名のひとつ

織田信長が登場するまでの日本における巨大寺院(たとえば本願寺や延暦寺)は、ものすごい権力を持っていました。ものすごい権力とは経済力と軍事力です。

経済力の源泉は、広大な荘園や様々な利権です。たとえば寺院が関所を管理して、その関所を通る人からお金を徴収していました。

軍事力の源泉は、多くの信徒です。これらの人は、もし寺院が他の寺院や大名に襲われるような事態が生じた場合は、武器を手に立ち上がり一丸となって戦いました。

この時代、寺院がほかの寺院を焼き討ちすることが行われたのですが、これは自分の寺院の勢力の拡大を求めて行われたことが多かったようです。

比叡山延暦寺も天文法華の乱では、洛中の法華寺院を焼き討ちし最大1万人の人を皆殺しにしたのですから、織田信長の焼き討ちがこの時代の焼き討ちの中で、ずば抜けて大きな事件ではなかったのです。

 3.なぜ比叡山延暦寺を焼き討ちにしたのか。

それでは、なぜ織田信長は比叡山延暦寺を焼き討ちしたのでしょうか。

織田信長は、戦国大名でありながら、他の大名と異なった点が一つあります。他の大名は、自分の勢力の拡大を目指して戦っていただけですが、彼は、天下を統一し、その後どのように運営すればいいのかというグランドデザインを持っていたのです。

このグランドデザインというのは、ようするに日本をよりよい国にするために、寺院の持つ利権を剥奪しましょう。そして楽市楽座のような自由に商取引がおこなえる場所を設けて、経済を発展させましょうというものです。

4.信長は宗教弾圧をしたのか

信長は比叡山延暦寺などを焼き討ちしたことから後世において宗教弾圧を行ったともいわれていますが果たしてそうだったのでしょうか。

この答えは否です。たしかに織田信長は比叡山延暦寺を焼き討ちしました。しかし比叡山延暦寺が信仰する天台宗まで弾圧はしていません。

彼が弾圧したのはあくまでも武装勢力であり利権を持つ宗教団体の比叡山延暦寺であり、宗教である天台宗ではなかったのです。

徳川時代になってキリスト教を弾圧したのとは異なります。

5.信長の比叡山延暦寺焼き討ちの功績は

織田信長が比叡山延暦寺を焼き討ちにしたことにより、それまで日本の政治、経済に大きな影響力を与えてきた宗教団体の力が急速に弱まりました。

これ以降、宗教団体は、布教活動を行う団体としての位置づけを保ち続けています。ですから後世の人たちは、信仰に帰依する老若男女を無慈悲に虐殺した織田信長は残酷な人だと言います。

でも後世の人がそのように思うようになるような社会を作ったことこそ織田信長の功績です。

なぜなら他の国々では、宗教勢力が大きな力を政治的、経済的に現在に至るまで持ち続け、悩まされ続けているところが多いのにもかかわらず、日本においては、そのような問題は織田信長以後、なくなったのですから。

このように井沢さんの著書は、常識的な見解として定まっている歴史に対して、疑問を呈し、本質を考えながら自説をわかりやすく展開しているのでとっても面白いですね。

信託大好きおばちゃんは、専門書を読む以上の真剣さで何時間も読んでしまいました♪

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2006年6月23日 (金)

上場会社が信託受益権販売業に進出するのは、

1.上場企業、金融事業に進出

平成18622日の日本経済新聞の夕刊のトップに『上場企業、金融事業に進出』というタイトルの記事が掲載されました。

この記事によると上場企業の中には、顧客のニーズや規制緩和を背景に本業と関連のある金融事業に進出し収益の拡大を図ろうとしているところがあります。

その中でNTT都市開発、清水建設は信託受益権の保有、売買および仲介を始めるようです。

たとえばNTT都市開発はプレスリリースで定款の変更を公表しています。事業の目的として新たに次の項目を追加しています。

     信託受益権の保有、売買および仲介

清水建設の方は、事業の目的として新たに次の項目を追加しています。

     信託業法に基づく信託受益権販売業及び不動産特定共同事業法に基づく事業

2.信託受益権販売業とは、

信託受益権販売業とは、ビジネスとして信託受益権を自分で直接販売したり、受益者から委託を受けて販売の勧誘をすることです。

信託業法の改正により、より多くの業者が販売業に参入することができるようになったのですが、内閣総理大臣の登録(3年で更新)が必要です。また営業保証金として1,000万円必要です。

信託会社が信託業以外の事業を行うのは、事業が失敗した場合、信託業務に支障をきたすリスクがあるので難しいです。これに対して信託受益権販売業の場合は、信託業以外の事業を行うのは認められます。

. オリジネーターは信託受益権販売業者の登録は必要か

さて、ここで問題となるのが資産の流動化の主役の一人であるオリジネーターの取り扱いです。オリジネーターは、保有する資産を信託して信託受益権を受け取り、これをSPCなどに売却します。

このオリジネーターが保有する信託受益権をSPCに何度も譲渡するようなことを行った場合はオリジネーターは信託受益権販売業者にならなければならないのでしょうか。つまりSPCも投資家の一人だから、信託受益権の内容を説明する必要があると考えるのでしょうか。

SPCは流動化スキームのメンバーの一人だから、SPCに対する説明は不要と思われますが、原則的には信託受益権販売業者の登録が必要です。ただし信託会社等に関する総合的な監督指針1021を読むと、信託受益権の販売の代理を一切、信託受益権販売業者に委ねて、自分は営業をしないような場合は、登録は必要ないようです。業者に委ねとコストがかかるので、頻繁に信託受益権を譲渡する場合は、自分で登録した方が、コストが削減できる場合もあります。

NTT都市開発も清水建設も所有する不動産の証券化を頻繁に行うことが予想されるため、信託受益権販売業者の登録を行う方がメリットがあるから定款を変更したのではないでしょうか。

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2006年6月22日 (木)

福井総裁と有価証券管理信託

村上ファンド騒動のおかげで、各方面の方々がとばっちりを受けていますが、そのとばっちりを思いっきり受けた方の一人が日銀総裁の福井さんだと思います。

日本経済新聞621日の朝刊によると、福井総裁は村上ファンドに1,000万円投資したのですが、その代償として月額200万円の給与の30%カットを半年(200万円×30%×6=360万円)されるようです。 

そして日銀総裁のような公人は、世間からごちゃごちゃ言われないようにするために、持っている株式などは信託すべきではないかという意見がでているようです。

ここでいう信託とは、有価証券管理信託のことだと思いますが、以下で少し書きます。

有価証券管理信託とは

有価証券管理信託とは、有価証券の管理を目的とするような信託です。有価証券の管理を目的とするから、受託者の判断で信託された株式を売却するようなことはできません。

委託者は、自分の所有している有価証券を受託者(信託銀行)に信託します。信託をした時点で名義上の株主は、委託者から受託者に移ります。

信託した株式に関して配当を支払われたら、受託者はその配当を受け取ります。受託者が受け取った配当に関しては、受益者へ交付する日までは、受託者が管理します。配当を受け取るつど(年2回とか)交付する場合と、毎年一定の時期にまとめて交付する場合があるようです(注1

またその信託をした株式を発行した会社が、株主総会を開く場合は、名義上は受託者が株主だから、受託者宛に株主総会の招集通知が送られてきます。受託者は株主だから、株主総会に出席して、株主総会での議決権を行使することができますが、受託者自らの判断で議決権を行使することよりも、委託者(=受益者)の指図にしたがうことが多いようです(注2)。

この有価証券管理信託というのは、諸般の事情で有価証券の管理を自分で行えない人のために、その人に代わって受託者が管理するというようなものですが、平成元年7月からは、閣僚になったような場合は、それまでに保有した株式は、在任期間中は信託されます。これにより在任中に所有する株式を売却して、やれインサイダーだとか後ろ指刺されないようにするためだと思います。

さて福井総裁が保有する株式を信託するかどうかは未定ですが、公人といわれるような立場の人にとっては、どんなに身の回りに気を配っても、何か綻びを発見されて、がたがた言われるうっとうしい時代になってきたなと思います。

でも日本経済新聞621日の朝刊の記事で、信託大好きおばちゃんを釘付けにしたのは、報酬カットではなく、1,000万円投資して、運用益が1,473万円(利回り147.3%)の方でした。やっぱりヘッジファンドって猛烈に儲かるものなのですね。

注1       三菱信託銀行信託研究会編著 『信託の法務と実務 4訂版』社団法人金融財政事情研究会 P503

注2       同著 P502

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2006年6月21日 (水)

NPO法人の会計、税務は難しすぎ、報酬は安すぎる

1.NPO法人とは

一昨日(620日)、信託大好きおばちゃんは、CPE(継続研修)稼ぎもかねて、1日がかりのNPO法人の会計、税務の研修を受けてきました。

NPO(Non Profit Organization)法人というのは、非営利活動を行うために設立された法人です。たとえば介護事業や、まちづくり、異文化交流に…etc,というように多様な活動をする団体であり、2006年2月末には25,682法人あるようです注1

これらの活動に参加する人たちは、目的の達成のためには一生懸命なのですが、えてして組織のコントロール面に関しては興味のない人が集まっているところが多くあります。とくに会計、税務の専門家のサポートが必要なのに、担い手がいないという問題があるようです。なぜ担い手がいないかというと、会計、税務のしくみが通常の会社と異なっていて、一から勉強しないと対応できないから、そして特殊な専門的知識を提供したことによる報酬が、NPOは非営利法人だから安すぎるからだと思います。

2.決算書が一般の会社とは違う

会社法の改正により一般の会社が作らなければならない決算書類としては、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表です。

これに対してNPO法人が作らなければならに決算書は、事業報告書、貸借対照表、収支計算書、財産目録です。

このうち事業会社の損益計算書と似て非なるものが収支計算書です。

一般の事業会社は利益を1円でも多く稼ぐことを目的として作られたものだから、この利益がいくらなのかが大事です。そこで利益がどうして稼がれたのかを期間に区切ってあらわしたものが損益計算書です。

一方NPO法人は利益を稼ぐことを目的としていません。でも活動をする限りお金の出入りが発生します。お金がどこから入ってきて出でいったのかわからないとNPOの運営もできないです。そこでこのお金の出入りをあらわしたものが収支計算書です。

上場会社などがキャッシュフロー計算書を作っていますが、これは現金などがどんな活動に使われているかをあらわしたものです。これに対して収支計算書の場合は、現金の動きに特化すると事務処理が大変なので、未収入金や未払金も現金の中に含めて計算することもできます。

収支計算書を作るのは、通常の汎用会計ソフトを転用することが可能な場合もありますが、パソコンや建物のような固定資産を購入したりすると対応が難しくなります。

3.法人税のかかる範囲を区分するのが大変

NPO法人は、非営利活動を行う法人です。このような法人の活動で利益がでることはあまりないのですが、それでも出てしまった場合、その利益を法人税で定めた収益事業に該当するのかどうか区分します。そして法人税で定めた収益事業の利益の場合は法人税を納めないといけません。

ところでNPO法人は特定非営利活動による収入かその他の事業収入かに区分して帳簿書類を作らないといけません。そして会計上の特定非営利活動による収入が、法人税法で定めている非収益事業に必ずあてはまるとは限らないのです。

ですから会計と法人税でそれぞれ定めている区分と内容に関する知識が必要とされます。

4.消費税は、もっと大変だ

消費税というのは、日本国内で商品を売ったら、その代金に対して消費税を課しましょう。そしてその消費税を納税しましょう。ただし商品を売るためにつかった商品の代金やその他の経費について生じた消費税は差し引いて計算してもいいですよというものです。

普通の会社が補助金をもらった場合、消費税はかかりませんが、その補助金によって消費税のかかるような物を購入した場合、その消費税を差し引いて計算することはできます。なぜなら普通の会社にとって補助金収入が収入全体に占める割合というのは低いからです。

しかし非営利法人の収入のうち補助金や寄付金は大きな収入源となります。これらの収入に対して消費税はもらわないのに、この収入を元にして多額の固定資産投資を行い、支払った消費税の還付を受けるというのは、消費税の趣旨に反するから、消費税を計算するときに差し引くことはできませんよとしています。

この計算が結構やっかいですね。ただし消費税を納めなければならないNPO法人で原則課税が適用されている場合だけです。簡易課税(2年前の課税売上が5,000万円以下なら使える)を選択しているならこのやっかいな計算はいりません。

こんな感じで、結構複雑なんですね。いっそ医療費のように会計税務の専門家に対する報酬のうち7割とはいわなくても5割くらいでもお上にもっていただけたら信託大好きおばちゃんもNPO大好きおばちゃんに宗旨替えするのですが、

1 内閣府資料 NPO法人の認証数の推移

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2006年6月20日 (火)

流動化案件の検証に対する疑問 信託検査マニュアル案

1.信託検査マニュアル案 流動化案件の検証

金融庁が『信託検査マニュアル(案)』に関してパブリックオピニオンを求めています。そのマニュアル案のp33信託引受審査態勢の確認検査用チェックリスト (6)流動化案件の検証の内容を要約すると次のようになります。

受益者保護の観点から、委託者の財産が委託者から倒産隔離されてないといけない。そのためには委託者から受託者への資産の譲渡が真正売買かどうか、また会計上オフバランスになるのかどうかを下記の観点からチェックする。

      対抗要件の具備

      当事者の意思の明示

      取引価額の適正性

      譲渡対象資産の特定性の程度

      遡及義務、買戻義務等の程度

      被担保債権、取戻権、清算義務の有無

      会計処理

      特定目的会社(SPC)等の独立性の程度

      信用補完、流動性補完措置

2.流動化のスキームでの信託の使われ方

委託者(オリジネーター)が、所有する資産を流動化するスキームというのは、資産をいきなりSPCに売却するのではなく、いったん信託をして信託受益権を受け取り、その信託受益権をSPCに譲渡し、SPCがその資産の価値に基づいて、投資家から資金を調達するというものです。

なぜ信託を使うかというと、倒産隔離が図られることや流通税コストが削減できるからと思います。

信託を使うことにより、信託した財産は、原則として、委託者が倒産しても、委託者の債権者が召し上げることはできません。でも委託者が信託受益権をそのまま手元においていた場合は、信託受益権も委託者のひとつの財産として、債権者に召し上げられる可能性はあると思います。

もしこの信託受益権をSPCに譲渡して、その譲渡が真正売買、すなわち譲渡担保(お金を借りる代わりに、担保として資産を渡しますよ。もしお金を返せなかったら、そのまま好きに使ってねというもの)でないならば、委託者の手元に名実ともに信託受益権はないから、委託者の債権者に召し上げられることはありません。

投資家の立場に立つと、自分が投資したお金の基になる資産が、委託者の債権者に召し上げられるのは困ります。だから委託者からSPCへの信託受益権の譲渡が真正売買であり、譲渡担保であってはならないのです。

そしてこの信託受益権の委託者からSPCへの譲渡が真正売買かどうかを確認するためのチェックポイントが上記①~⑦注1と思います。

3.委託者からの倒産隔離って

委託者からの倒産隔離というのは、上記にも書いたのですが、委託者が倒産した場合、債権者が信託した財産を召し上げることができないことです。

で、いつか改正される信託法の11条によると委託者が債権者を害することを知って信託を行ったような場合は、受託者が知らなくても、原則的には信託設定を取り消せるとなっています。

委託者から受託者への譲渡が倒産隔離なされているかどうかを確認するならば、この辺の確認を受託者はすべきではないかと思います。

他方チェックポイント③の取引価格の妥当性は、不要と思います。信託設定のためには、どのような資産がいくつあるのかは重要ですが、取引価格は信託受益権のSPCへの譲渡の際に重要なことで信託設定の際に大事なこととは思えないからです。

また⑦~⑨も同様に信託受益権の譲渡に際しては重要ですが、倒産隔離とは関係ないと思います。ですからこの辺は倒産隔離のための委託者から受託者への譲渡に関するチェックポイントからはずすべきと考えます。

4.会計上オフバランスにするためには、

会計上、信託受益権をSPCに譲渡する場合で、委託者の貸借対照表上、譲渡した資産を減らすことができるのは、平成12731日に日本公認会計士協会がだした会計制度委員会報告第15

『特別目的会社を活用した不動産の流動化にかかる譲渡人の会計処理に関する実務指針』に基づきます。

この報告には資産をオフバランスできる要件がいくつか列挙されていますが、上記譲渡担保になるかどうかの要件とは別に経済的リスクが移転されているかと言う要件が加わります。たとえば信託受益権を全部SPCに売却しても、SPCが信託受益権に基づいて発行した債券のうちおおむね5%を超えて委託者が購入したような場合は、法律上は譲渡に該当しても、会計上は金融取引であるから資産をオフバランスできないというものです。

だから会計上のオフバランスの可否を①~⑨で確認するのでは妥当ではないと思います。

5.私見

このように、つらつらと書いていきましたが、信託が流動化で果たす役割というのは、あくまでも脇役だと思うのです。委託者の財産が適切に信託されているのが確認されることが重要です。

でも流動化のスキームがどうなっているのか、ましてや委託者の会計上の処理がどうなっているかというのは、受託者の仕事の範囲を超えていると思うのです。にもかかわらず、全体を見渡して、その妥当性を検証しなければならないというのは、すこし責任が重いというよりも、仕事の内容と責任にアンマッチが生じていると思います。

ちょっと金融庁は過敏になりすぎているのではないでしょうか♪

注1                 江川由紀雄著 『実践証券化入門』シグマベイスキャピタル P39 この①から⑨の要件は、どうもこの著書のP38~P44あたりをまとめてひっぱってきたようにも思えるのですが、

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2006年6月19日 (月)

無議決権株式を利用した相続&相続税対策

先週の613日の日本経済新聞の朝刊に『議決権のない株、相続税評価20%低く 経産省要望へ 中小企業承継円滑に』という記事が載っていました。株主の権利(配当収受権、残余財産分配権、議決権)のうち、議決権がないような株式というのは、会社法施行前からありますが、家族が株式を持っているような会社(同族会社)で、後継者以外の人が相続でもらう株の評価はディスカウントしてね だって相続税が高すぎるから事業承継がうまくいかないだもんというものです。

1.相続対策の肝は?

事業を営んでいる人の相続対策の肝というのは、事業を譲りたい人に事業を渡すことです。会社で事業を営んでいるときは、私が死んだら社長をやってねというだけでは事業をコントロールするのは難しいです。株式会社で一番えらいのは、株をたくさん持っている人だからです。だから後継者に自社株をたくさん渡してあげるのが大事です。

この事業承継を円滑に行うための最大のコストは相続税です。とくに利益のでているような非上場の会社の株式の評価額は高いので相続税も高くなります。しかもこの株式は経営者にとっては大事ですが、経営に興味のない人にとっては何の価値もないので、売ってお金にかえるのが難しいです。

そこでどうするかというと相続税を減らそうと努力するのですが、相続税対策のために株式を後継者にならない人に渡すことが多くあります。これは相続税対策としては有効かもしれませんが、相続対策としては、後々問題を起こす原因になります。

2.非上場会社の株式の相続税評価額は2種類ある

 なぜ後継者以外に株式を渡すのかというと、非上場会社の株式の

相続税評価額は、2種類あるからです。

後継者のような会社の経営にかかわる人たちにとっての株式という

のは、経営の対価であるということから、会社の純資産などをベースに計算します。ほかの株主にとって株式というのは、儲かったら配当がもらえる権利であることから、配当の利回りをベースに計算します。

長年儲かっているような会社は、会社の内部に利益もたまっていることから純資産ベースの株価は非常に高額になります。

 儲かっている会社ほど、経営者グループとそれ以外の株価の差が大きくなるので、相続税対策として経営者グループ以外の人たちに株式を渡すことがあります。譲り受けた株主も当初は、経営者の意向を汲んで対応しますが、彼らに相続が発生し、次世代に譲り渡されるうちに経営者一族とも疎遠になり、株主の権利を使って経営者と揉め事を起こす人が現れることもあります。

3.分散した株式を後継者や会社が買い戻すのは大変

 株式が分散されると経営に支障をきたす可能性があるならば、今度は株式を買い戻す必要があります。買戻し先としては、経営者か会社になりますが、いずれが買い戻す場合でも、買取資金が必要になります。会社が買い戻す場合は、会社が内部に蓄積した利益の範囲内でしか株式を買い戻せません。また会社が買い戻す場合には、株主総会の決議が必要なので、株主間で買い戻しに関するコンセンサスが得られないなら買戻しは宙に浮いてしまいます。

4.相続人に対する株式の売渡請求

すでに分散した株式の買い戻しの方法は、会社法の施行により、今まで以上に増えています。たとえば相続により株式を取得した人に対して、会社側がその人に株が渡るとまずいなと判断した場合は、会社に株式を売ってくださいと請求することができます。これができるようにするためには、定款で相続人に対する売渡請求を定めて、株主総会の特別決議(普通の決議より要件がきつい)で承認されることが必要です。

5.無議決権株式を使った事業承継対策

 相続人に対する株式の売渡請求は、すでに分散された株式の買戻しの話ですが、新聞に載っていた話は、これからおこる相続のための対策です。

同族会社の経営者グループに属する人が、相続により株式をもらった場合は、たとえ経営に参加しなくても高い評価額で計算されることがあります。経営に参加しないのに高い評価額となるとコストばっかりで大変だからということで、株式が分散してしまったのです。

解決方法として、提案されているのが、無議決権株式を後継者以外の人が相続した場合は、評価額についてディスカウントを行うことにより相続税を減らし、かつ後継者に議決権を集中させ、より円滑に事業承継をさせましょうというものです。ただ同族会社というのは、すぐに株主総会を開いて無議決権株式を普通株式に変えることができるので、その辺のしばりはいれるそうですが。

でももし実現するなら、どのような形の法律が作られ、実務はどのように動いていくのでしょうか♪

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2006年6月18日 (日)

大竹文雄さんの『経済学的思考のセンス お金がない人を助けるには』

1.小学校5年生からのインタビュー『お金がない人を助けるには』

この著書は、経済学者である著者が近所の小学校5年生から受けた『お金がない人をたすけるには』というインタビューの回答から始まります。

2.運がなくてお金がない人だけを見つけるのは難しい

お金のない人のタイプは2つに分かれます。ひとつは運がないからお金がない人であり、もうひとつは、努力をしないからお金がない人です。

運がない人はみんなが助けてあげる必要があります。助ける方法としては、社会保障(年金や失業保険)であり職業紹介(ハローワーク)であり、赤十字のように寄付金をつのってお金を集め、それを渡す方法もあります。

努力をしない人を助けるためには、努力をするような仕組みを作りましょう。今問題となっているニートも、この努力をしない人なのでしょう。

運がない人と努力をしない人というのは、お金がないということは共通していますから表面上見分けるのは難しいかもしれません。努力をしていないためお金がない人が、運がないからと言うこともあります。

見分けるのが難しいから、お金のない人に一律にお金をあげていたら、誰も働かなくなります。そうすると経済が沈滞していくので困ります。

3.努力をしても運がないとお金持ちにはなれない

それでは、どうしたらお金持ちになれるのでしょうか。もちろん大金持ちの家に生まれたような場合は、その人の才能がどうであるかにかかわらず大金持ちになれます。

またどんなに運動の才能がありプロスポーツ選手になれたからといって、不運な大怪我により選手生命がなくなる人もあります。

つまり運がお金持ちになるためには重要な要素になります。

では運だけにたよって生きていければお金持ちになれるのでしょうか。お金持ちの家に生まれた人が、浪費家の場合は、せっかく親の代までに築いた財産を使い果たし、お金がない人になるかもしれません。またそんなに才能がない人が、猛烈な努力を継続させたことによって才能が認められ大金持ちなるかもしれません。

ですから努力も非常に重要な要素になります。

このことからわかるのは、あたりまえのことですがお金持ちになるためには、努力と努力する方向に運があるかというのが重要です。たとえばビルゲイツが世界一の大金持ちになったのは、彼にプログラマーや経営者としての卓越した才能と努力があったことも大きな要素ですが、もし彼が100年前に生まれてきたら、これほどの成功は獲得できなかったのではないでしょうか。

4.インセンティブは難しい

このように世の中には、お金持ちの人とお金のない人がいて、その理由は、運であり才能であり努力ですが、ようするに個人、個人による生産性が異なるから差異が生じます。

経済は、そこで働いている人の生産性が向上しないと発展していきません。生産性を向上させるためには働く人の意欲を奮い起こすことが必要です。そのために給料の格差を与えるとどうなるのでしょうか。この格差をどのように決めるのかがまた問題となります。

たとえば成果主義を徹底して、業績が多ければ給料もあげるとなると、努力だけでは解決できない、運不運によって所得が変動します。これによりやる気を失う人もいます。

それでは運、不運を排除して、努力のみで給料を決めるとなると、成果を上げた人も、あげた分に見合う給料をもらえないのでやる気を失います。

このように給与格差をつけて働く人のやる気を奮い起こすのは尺度をどのように決めても、不平等感を味わう人がでてくるので難しい問題があります。

この著書『経済学的思考のセンス お金がない人を助けるには』は、何もお金がない人を助ける具体的な方法を書いているのではありません。お金がない人を助ける解決方法を導き出すためには、意思決定メカニズムに踏み込んで考え、因果関係がどうなっているのかをはっきりさせることが大事です。そしてこの思考方法を身につけることは、いろんな場面で役に立つということを様々な事例を用いて教えているのではないでしょうか。

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2006年6月17日 (土)

あーっつ 国会終わっちゃった

 昨日で国会終わっちゃいました。信託法をはじめとする重要な法案を積み残して、

 総裁選があるから国会の延長をしなかったのでしょうか。

 小泉さんも もうやめるからどーでもいいのでしょうかね。国民の迷惑なんて考えていないのかもしれません。

 まあいつか国会で承認されることになると思いますが、新しい信託法の施行の時期もずれるのでしょうか。

 ま 信託大好きおばちゃんは 国会がどうだろうと関係ありません。信託の周りを中心に、面白い事件があったら、そっちに飛んだりはねたりしながら、楽しく毎日書いていきます。

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2006年6月16日 (金)

なぜ阪急と阪神は10月1日に株式交換するのか?

1.株式交換とは

なにかと話題の多い村上ファンド騒動から阪急と阪神の統合という関西在住者なら『なぜ』と思うようなことがおこりました。

阪急ホールディングス(阪急グループの持株会社『阪急HD』が阪神電気鉄道『阪神電車』の株式のうち45%以上を公開買い付け(村上ファンドから買うのでしょう)した後、阪急HDを完全親会社、阪神電車を完全子会社とする株式交換を行います。

株式交換とは、他の株式会社を100 %子会社とするために、自分の会社の株式などを発行することをいいます。このケースだと阪急HDの100%子会社に阪神電車がなることです。通常株式を手に入れるためにはお金を払うところですが、株式交換によると自分の会社の株式だからお金はでていきません。また阪神電車の株主からみると、株式交換により、自分の持っている阪神電車の株式がすべて阪急HDの株式に変わります。

2.株式交換の税制はどうなっているのか

 株式交換の税制はどうなっているのでしょうか。株式交換により阪神電車の株主は、いったん阪神電車の株式を譲渡して、譲渡代金で阪急HDの株を購入すると考えます。そうすると譲渡代金と阪神電車の株式を買ったときの値段の差額つまり譲渡益に対して税金がかかるというのが原則です。でも税金がかかると株式交換なんか誰もやらないので一定の場合は、株式交換の時点で税金がかからないとしています。

平成18930日までの株式交換の場合は、株式交換の対価として株式だけでなく現金もつけて渡したような場合で、対価の総額のうち現金の割合が5%未満なら譲渡益に対して課税しません。

そして阪急―阪神の株式交換の日である平成18101日からはこの株式交換の税制が変わります。

この株式交換をする会社がグループ企業(50%超の資本関係のある会社間)内で行われているものか、グループ外の第三者が共同で事業をやるために行われているものかにわけて、それぞれの要件を満たす場合は株式交換時点で新たな課税関係は生じません。

でも要件を満たさない場合は、完全子会社となる会社では株主が交代するだけなのに、その子会社の資産を時価で評価し、含み益がある場合は税金を払わなければなりません。また完全親会社となる会社の株主が現金を受け取った場合は原則として譲渡益に対して税金がかかります。

では阪急阪神の株式交換はどうなのでしょうか。プレスリリースを読むと45 以上となっていますから、阪急HDが阪神電車の株式を45%取得した場合は、第三者が共同で事業を行うための株式交換の要件を満たさないと、株式交換時に阪神電車の膨大な含み益に課税されることになります。ですからこの要件を満たすような株式交換を行うと思います。

3.連結納税を使うメリットがあるから

それではなぜ阪急HDと阪神電車は、税制が改正されてから株式交換を行うのでしょうか。

実は阪急HDは連結納税という制度を採用しています。通常法人税というのは、1社で1通の申告書を作るものです。でも連結納税を採用すると親会社と100%子会社はひとつのグループとして法人税を計算します。メリットとしては、ある会社で損失が生じた場合は、他の会社の利益と損失を相殺して税金を計算するので、損失分税金を減らすことがあります。

ただしこのメリットの乱用を避けるために、連結納税に加入する際の欠損金の取り込みの制限があったり、連結納税加入前にその会社の持っている資産の含み損益を吐き出しなさいというルールがあります。

そして平成18930日までのルールによると株式交換により完全子会社となる会社が連結納税グループに入るためには、含み損益を吐き出さなくてもいい条件を満たすのが非常に難しかったのです。

それが平成18101日からは、2.で掲げたような条件を満たした場合は、含み損益を吐き出さなくても連結納税に加入することができるようになるのです。

それでは阪神電車が阪急HDの連結納税グループに入った後、経営者は阪神電車株式の購入資金4,000億円をどのようにして返済するのでしょうか。

信託大好きおばちゃんが経営者だったら阪神電車の含み益がたくさんある土地を投資法人(REIT)に売却します。含み益がある土地を売却すると売却益が生じ、40%分は税金としてもっていかれます。でもたとえば他のグループ会社に含み損のある土地があるならば、その土地も同時に売却します。別々の会社で譲渡益と譲渡損が発生しますが、阪急HDは連結納税を採用しているからこの譲渡益と譲渡損を相殺して税金を計算するので、譲渡損に対応する税金は減少します。

そしてREITを上場し、投資家からお金を調達します。このお金でREITは土地の購入資金を支払い、阪急HDは土地の売却代金を4,000億円の返済に充てますというようにプランニングするのですが♪

 

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2006年6月15日 (木)

公益信託の税金のしくみ β版(相続編)

1. 公益信託とは

公益信託とは、教育や慈善目的のために財産に信託を設定するものです。また最終的に残余財産は国等の帰属になるので、委託者は信託をしたら、自由に財産を利用できません。

このような信託は、当初受益者が特定していないので、受益者の特定していない他益信託となります。信託財産の運用益は、税務上委託者に帰属し、運用益に係る税金を委託者は納付しなければなりません。しかし公益を目的とする信託に財産を拠出して、コントロールできないのに運用益に対する税金だけ払うのはおかしいということで、一定の場合は税金を課さないというルールを決めました。

2.公益信託を3つのメンバーにわける

 まず公益信託を3つのメンバーにわけます。それぞれ認定特定公益信託(以下「松信託」という)、特定公益信託(以下「竹信託」という)、公益信託(以下「梅信託」という)(所得税法施行令2172)。

これらの3つの信託のうち松信託が一番、税金の恩典を受け、次が竹信託、最後が梅信託となります。ようするにより公益性が高いものに税金の恩典も与えましょうということです。なお松信託、竹信託に関しては、金銭(現金や預金)でないと信託できません。

3.委託者が死亡した場合

 受益者の特定していない信託財産を拠出した委託者が死亡した場合は、委託者の地位を引き継いだ相続人がこの信託財産も相続したとして相続税の申告をしなければなりません。受益者が特定していない信託の収益が委託者課税であることとの整合性を考えても妥当と思います。

しかし公益を目的とした信託を設定して、委託者は信託の収益を全く受けないににもかかわらず、収益課税されるのはおかしいということで例外的に信託財産の収益に課税しないのと同様に、松信託と竹信託の委託者が死亡した場合は、この財産を相続財産に入れないとしています(所得税基本通達4-1)

4.相続人が相続財産を信託した場合

 それではある人が亡くなって相続により受け取った財産を相続人の意思で公益信託に拠出した場合は、この拠出した相続財産について非課税の規定はないのでしょうか。

相続人が相続税の申告期限(相続があったことを知ってから10ヶ月以内)に相続により取得した財産で現金などを松信託に拠出した場合は、この拠出した現金は相続財産にいれないとしています(租税特別措置法70③)。

金銭と定められているので、たとえば相続により取得した不動産を売却してその代金を拠出した場合は、その不動産について相続税の非課税の規定はありません。

なおこの金銭の拠出が相続税の極端な節税目的で行われたようなものであるとお上が認定した場合は非課税の措置は取り消されます(租税特別措置法70③、相続税法64①)。また信託を設定して2年経過した時点で松信託でなくなっていたような場合も非課税の措置は取り消されます(租税特別措置法70条④)。

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2006年6月14日 (水)

工作物責任と限定責任信託

先週の土曜日(6/10)、大阪の関西大学で信託法学会があり、信託大好きおばちゃんは500円払ってギャラリーとして参加していました。驚いたのは結構たくさんの人がいたこと。名札を見ると信託銀行系の若い人が多かったです。へーっとおもって眺めたら、顔に『義理と義務』と書いてありましたが、

この学会の発表でみすほ信託銀行の佐々木哲郎氏が『無過失責任に対する受託者の対応(信託財産の土壌汚染問題に関する受託者の無過失責任を題材として』というテーマでお話されていました。これって工作物責任の一種だと思います。

1.工作物責任とは、

工作物責任とは、たとえば土地の上に建物を建てたが、いいかげんな構造だったので、地震によりつぶれて多数の死傷者がでた場合、その損害について誰が賠償するかというものです。その建物を使っている人が一次的には賠償責任を負いますが、損害が発生しないようにするための注意を怠らなかったにもかかわらず事故が起こった場合は、占有者は免責され、損害の補償は所有者に飛んでいきます。そして所有者は、どんな理由を並べても賠償責任を免責されません。

2. 有限責任事業組合(LLP)の場合

有限責任事業組合(LLP)は、組合員の責任が出資限度となる組合です。有限責任となるのは、組合員に悪意や重過失がなくて組合の業務に関して第三者に損害が生じた場合です。

それではLLPが所有する不動産について工作物責任が生じた場合、組合員はLLP財産限度で責任を負えばいいのでしょうか。これについては解釈が分かれるところですが、私は無限責任になると考えます。

LLPは組合だから所有権は組合員の共有(厳密にいえば合有)となります。工作物責任は所有者に対して負わされる責任です。LLPの有限責任はあくまでも組合の業務に関して生じた損害というように限定されているので、所有者であることから生ずる責任は有限責任の範囲外と考えるからです。

3.信託財産について生じた工作物責任はどうなるか

信託財産について生じた工作物責任はどうなるのでしょうか。

(1)     現行信託法

現行信託法では、受託者は信託財産について生じた損失については、原則的には無限責任を負うことになります。信託財産の所有者は受託者ですから工作物責任も無限に負わなければなりません。

ただし受託者が行った信託業務について生じた費用は受益者に原則的には請求できるから、最終的なつけは受益者に回ってきます。受益者側としては受益権を放棄するという方法でつけの支払いを断ることもできますが、受託者側も『ばば』をつかみたくないので先に特約で放棄できないようにすることもできます。

(2) 改正信託法

それでは改正信託法ではどうなるのでしょうか。受益者への付回しは原則としてはできなくなります。もちろん特約をつければ可能になります。でも受託者は自分の利益のために所有しているのではなく受益者のために所有し、自分に責任のない損害を無限に負うのは厳しいと思います。

改正信託法で限定責任信託というものがあり、一定の債権に関しては信託財産が限度とされます。この一定の債権に信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利というのがあります。信託した建物に既に欠陥があることによって生じた損害賠償請求権というのは、信託財産を限度にできるとも読めます。そうすると受託者の工作物責任は限定されるのでしょうか。それでは工作物責任は最終的には誰が負うのでしょうか。

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2006年6月13日 (火)

どうして節税のために信託を使うとだめなの?

1.信託検査マニュアル案

信託検査マニュアル案というのがあります。金融庁が信託銀行等を検査する際に検査官が使用するチェックリストのようなものです。

以前このブログ『JPモルガン信託お仕置きだ!』で書いたようなことを信託銀行等が行って、投資家に迷惑をかけていないようにするために金融庁がチェックするのでしょうね。

しかしこのマニュアルをみていると、ようするにチェックリストに書いてあるようなことを信託銀行等がやったら、お仕置きするぞといっているようなものと思うのですが、その範囲が広すぎて、これではせっかく信託法を改正し、信託を広げようとしても結局はがちがちにおさえられて、信託を使って、経済活動を円滑に行うことが難しくなるかもしれません。

2.どうして節税目的のスキームはだめなの?

 信託引受審査のところで、『脱税の疑いのあるスキーム又は節税を主たる目的としているスキーム等』かどうかを検証せよと書いています。

脱税は、違法行為でありそれを促すのはだめだからいいと思うのですが、節税を主たる目的としているスキーム等もだめと書いているのはどうかなあと思います。

 ① 脱税、租税回避、節税

脱税と租税回避と節税というのは、税金を減らすという行為だけど方法が違います。脱税は所得を隠す。租税回避は、取引自体は合法でその結果税金は減るけれど、その取引は節税できるからあえて使うようなもの、お上の意図しない節税かな。節税は、経済的合理性のある取引を行い、その結果税金が減るもの、こっちはお上が意図する節税かな。このマニュアルの文言は租税回避スキームの防止でしょう。

 ②流動化スキームはだめなのか。

節税を主たる目的にしているスキームというのを真に受けると、流動化スキームで、不動産を直接売却せずに信託受益権を売却することにより、流通税を減らすというのも節税を目的とするからだめとも思われそうですが、こっちは一応、資産の流動化をして、オリジネーターの資産の効率化を図りましょうとかという大義名分が一応あるからOKなのでしょうね。

 ③主たるねらいは相続対策で信託を使うスキーム

おそらくお上のねらいは信託を使った相続対策で、大幅に相続税や贈与税が減少するようなスキームを未然に防止するのがねらいではないかと私はにらんでいます。

アメリカでは信託が相続対策の王道といわれていますが、これはひとえに節税効果があるからだと思います。当然日本でも信託法が改正されたら、相続対策をにらんでいろんな商品が開発されるのではないかと思います。

以前このブログ(5/15/06)でも書いたように、りそな銀行が自社株承継信託というのを販売しているようですが,この商品程度の節税効果があるような商品はOKということでしょうが、それ以上はという、、、というお上のメッセージがあるのかもしれません。

 でもね。節税つまりコストを下げるというのは、経済的合理性のある人なら誰でも考えることで、やりすぎは社会的な問題もあるからだめかもしれませんが、最初から『だめなものはだめ!』というより、ある程度許容範囲を認めてもいいのではないでしょうか。こう書くと、その許容範囲はどれだとなるのでしょうけど♪

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2006年6月12日 (月)

事前確定届出給与 リニューアル

おはようございます。信託大好きおばちゃんです。5/13/06に事前確定届出給与の記事を書き、ワード検索で、毎週何百人もの方がお越しになりました。この記事を書いた時点では、あまりにも法律の内容がファジーだったので、ほんとに思いつきを書いたので申し訳なかったなと思っております。

 で、今日は、本日発売の週刊T&A master (2006.6.12号 No166)という専門誌に信託大好きおばちゃんが書いた原稿をロータス21さんのご承認のもと転載させていただきます。

 なお今日現在も事前確定届出給与の実務上の取り扱いについては、あまりにもはっきりしない点が多くあります。ですからここに書いた内容も、8月以降法人税基本通達で公表される内容と異なる場合もあります。 

この原稿を信じて実務上の処理をなされ、その結果、損害が生じましても信託大好きおばちゃんは責任を負いません。

 この責任は、読んだだけではどうすればいいのかさっぱりわからないような代物を作られた方にあると思いますので、

役員の賞与はどうしたら損金になるの?

平成18年の改正

 従来、役員に対する報酬のうち、月額報酬は損金となりましたが、臨時に支払

われる部分に関しては、使用人兼務役員の従業員賞与に対応する部分以外は損金

になりませんでした。これが平成18年の改正により所定の時期に確定額を支給

する旨の定めに基づいて支給する給与で、届出書を提出したものについては、使

用人兼務役員以外の役員でも臨時に支払われる報酬も損金とされることになりま

す。

 ポイントは2つあります。1つは、職務の執行を開始する日までに確定額を支

給することを定めなければなりません。そしてこの定めを文書化して保存してお

くことが重要です。

 もう1つは、届出書の提出期限ですが、これは次のいずれか早い日までです。

●給与にかかる職務の執行を開始する日

●事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日

原則はどうなるのか

 たとえば、3月決算法人で、本年5月25日の定時株主総会で選任された取締

役がいたとします。

 原則的には就任の日が職務開始の日となるので職務執行開始の日が5月25日とな

ります。

そうすると3月を経過する日は6月30日なので、早い方の5月25日までに

届出書を提出しなければなりません。

 しかし実務上、就任日に届出書を提出するのが難しいならば、たとえば6月1

日を就任の日とする旨を定め6月1日までに届出書を提出するのは認められ

ると考えます。

届出書で記載された金額と異なる金額を支払った場合は、1円の誤差であろうと

も全額損金の額とされません。資金繰りの都合で支払えない場合は、差額を未払

金計上すれば損金となります。ただし支払確定日から1年を経過した時点で支払

われなかった場合は、その日に支払ったものとして、源泉税を納付しなければな

りません。

経過措置

 さて本年度に関しては、経過措置によると上記のいずれか早い日が、平成18

年6月30日以前になる場合は、届出期限は平成18年6月30日になります。

 3月決算法人で、非常勤役員に対して年1回まとめて報酬を支払っているよう

な場合は、前期までは、全額損金になりましたが、進行事業年度からは平成18

年6月30日までに届出書を提出しないと損金になりません。

逆に使用人兼務役員以外の役員に賞与を支給していた場合、前期までは全額損金

となりませんでしたが、進行事業年度からは届出書を提出することにより損金と

なります。

 届出の必要性、賞与額を届けるメリット・デメリット等を関与先に伝え、届け

出る場合は、期限までに提出し、報酬額を定めた書類を保存、届出た支給日、支

給額での会計処理が大事です。

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2006年6月11日 (日)

トラックバック受け付けます

 信託大好きおばちゃん お知らせです。

 このブログを始めたころ、ヒット数が少ないのにHトラックバックばっかし送られてきてむかついていましたが、最近、ヒット数も増えてきてトラックバックへのニーズもあるみたいなので、受け付けることにしました。ただし当ブログのイメージに合わないようなトラックバックは削除しますからね。

 それからコメントをいろいろいただいているのですが、今後はメールアドレスもご記入いただけますようお願いします。決して今までいただいたメールが問題があったからではなく、今後増加するかもしれないスパムメール対策もかねております。あしからずご了承ください。

                               From 信託大好きおばちゃん

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佐々木俊尚さんの『グーグルGoogle 既存のビジネスを破壊する』

1.Google ニュースは革命的

Google ニュースというのがあります。これは、世界中のさまざまなメディアの記事を集めてきて、Googleのアルゴリズムで自動的に優先順位をつけて表示するサービスです。

原稿を書いている今時点でのGoogle ニュースのトップ画面を読むと、最初にあるのは、『女児水死の捜査継続 畠山容疑者 動機解明に不可欠』秋田の小1男児殺害に関連した東京新聞の記事です。

このサービスが革命的だといわれるのは、マスメディアから与えられた情報の受信者の情報に対する受け止め方を変えることにあります。 今まで信託大好きおばちゃんだったら新聞は日本経済新聞しかとっていないから、その新聞の記事で書かれた内容というか見方が正しいというように自然に刷り込まれて、その刷り込まれた考えに基づいて、世の中でおこる事象を判断していたと思います。

でもGoogle Newというのは、ひとつの事件に対するさまざまなメディアの受け止め方を読めるから、自分が今まで信じていたメディアの考え方が絶対的評価ではなく、あくまで相対的評価であるということがわかるようになります。

秋田の小1殺害事件だったらメディアによりあまり記事の内容に差はないかもしれませんが、国際紛争だったら、国ごとにその紛争に対する見方が異なることがわかると思います。

Googleニュースは、マスコミが流した情報は、材料なので、自分の頭で整理して判断せよということを教えています。これはある意味既存のマスコミに対する考えを破壊するようなものではないでしょうか。

2.Googleが何で巨大な影響力を持とうとしているのか?

Googleは今や巨大な影響力を持とうとしています。それは無料で人々が情報を交換、入手できるGoogle Newsのようなプラットフォームを提供しているからです。無料で優れた情報を提供することにより多くの人をひきつけるから巨大な影響力が持てるということです。

この無料であるという点がマイクロソフトと異なります。マイクロソフトはWindowsというパソコンを動かす基本となるソフトを開発し、世界に広めたことによりIT業界の覇権を握りました。そしてこの基本となるソフトウェアだけでなくオフィスソフト(ワード、エクセル、アクセス、パワーポイント…etc)を高額な料金で販売することにより巨額な利益を獲得したからです。

3・Googleが無料でプラットフォームが提供できる源泉は?

Googleは企業であり慈善団体ではありません。巨大な無料プラットフォームを支える資金を調達しなければなりません。それがキーワード広告収入であり、個人のHPに配信する広告収入です。

キーワード広告収入というのは、Googleの検索ページでキーワードをいれると、そのキーワードの入ったHPをだーっとならべた画面がでてきますが、その画面の上部または右側にあるスポンサーサイドの広告のことです。

たとえば信託で検索をかけるとトップ画面に  『三菱UFJ証券でファンド投資』とでてきます。このことです。キーワードによって広告料は異なり、一定の金額を前払いし、読者がクリックするごとに残高が減るものです。

また個人のHPに配信する広告とは、個人のHPの両サイドなどに広告がのっているもので、この広告を読者がクリックすると、広告収入が発生し、一部が掲載した個人に手数料として支払われるものです。

キーワード広告は、キーワードを絞ることにより、販売したい商品の潜在的な顧客にダイレクトに情報が届くので、売上につながりやすく、かつ広告料も高くないので、今で広告をしたくても値段と効果がマッチしないのでできなかった中小零細な業者でも広告ができ、その結果商売も増えるという関係ができます。

一つ一つの広告料は小額でもそれが積み重ねれば巨大なものになります。そしてその巨大な収入が新たなプラットフォームへの投資を可能にし、ますます多くの人をひきつけ、それがGoogleの広告媒体としての価値を高め、広告収入を増やしていくというビジネスモデルなのではないかと考えます。

4.Googleが物凄い権力を握ったら

このようにしてGoogleは巨大な影響力を今後与えていくことは確実と思います。そして影響力を与えていくということは、物凄い権力をGoogleが握ることになります。

どうして物凄い権力を握れるかというと、Googleの便利なプラットフォームへ入ってきた人たちのさまざまな情報をGoogle側は完全に押さえデータベース化することができるからです。そうするとそれぞれの人は気づかないうちに、いつの間にかGoogleに監視されるような世界になり、Googleに村八分にされた場合は、事業を続けることも難しい状態になるかもしれません。

このようなことを整理され的確にまとめたのが 佐々木俊尚さんの『グーグルGoogle 既存のビジネスを破壊する』です。Google本は多くありますが、その中の光る1冊です。

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2006年6月10日 (土)

関根愛子さんの『企業結合会計の知識』

当期から企業が行う合併、会社分割、株式交換移転に関しては、企業結合会計基準が適用されます。以前は商法で規定する受入資産の時価以下主義の考えに基づいて、上場会社といえども???というような会計処理ができたわけです。

でもこの会計基準ができたことによりルールにのっとった会計処理が求められます。企業結合会計とは、簡単にいうと、取り込んだ企業の資産や負債や資本を時価で計上するか、それまでつけていた帳簿価額で計上するかを決めているものです。

企業結合会計の本は、かなり出版されていますが、関根愛子さんの『企業結合会計の知識』が優れているのは、『なぜ』この基準を採用したのかに対する理由を書いているところです。あまりにも複雑で多岐にわたる基準であるので、多くの本がこのあたりまえの『なぜ』を飛ばし、規定の追っかけに終始していますが、

1.なぜ米国基準や国際財務報告基準はパーチェス法のみを採用し、日本は持分プーリング法も採用したか?

 パーチェス法とは、他の企業を取り込んだ時にその資産、負債、資本を時価で計上する方法です。持分プーリング法とは、資産、負債、資本を帳簿価額で計上する方法です。

米国でも以前は持分プーリング法を採用していましたが、今では採用していません。これは持分プーリング法の乱用による弊害を防止するためです。

なぜ企業が持分プーリング法を採用したかというと、含み益のある資産を今、時価で計上するということは、将来の費用を増やすということになるからです。たとえば商品の帳簿価額が100で時価が200とします。将来その資産を250で売却する場合、帳簿価額が100のままだと150の利益が計上されます。でも企業再編時に商品の帳簿価額を200で計上すると、売却益は50となってしまいます。

経営者というのは、将来の利益に責任を持ち、結果をだして評価されるものです。 利益が150であるのと50であるのでは、当然150の方が評価されるわけです。だから150の利益が出せるような会計処理である持分プーリングを乱用するようになったのです。

それはまずいということで米国基準や国際財務表国基準では持分プーリングを廃止しました。

それではなぜ日本では持分プーリングを採用したのでしょうか。事業再編では、必ず一方の企業が他の企業を食うようなものに限りません。口だけでなく実質的に一緒に仲良くやりましょう。力関係もフィフティフィフティーですよというような事業再編もあるかもしれません。

そのような事業再編に対して食われる側の資産、負債、資本を時価で計上するような会計処理は妥当でないから、以前の帳簿価額で資産、負債、帳簿価額で計上しましょうと規定しています。

2.なぜ米国基準や国際財務報告基準はのれんの減損処理を選び、日本では、20年以内の均等償却を選んだのか。

のれんとは、たとえば資産の時価が100である企業を150の株を発行して合併するような場合の差額50部分のことをいいます。実際の資産価値より高い値段をつけたのは、企業が将来生み出す収益を織り込んだ部分と考えるからです。

こののれんの処理も米国基準や国際財務報告基準と日本基準では異なります。

米国基準等では、のれんというのは月日の経過とともに価値が減少する部分と価値が減少しない部分に分かれます。これらを切り分けるのは困難であり、それを一定期間均等に償却するのは合理的でないから、償却をせず、ただし価値がぐっと下がった時点でその減少分をどーんと計上しましょうと規定しています。

一方日本においては、原則としては均等償却を採用し、著しく価値が下がった時点で減損も行います。

たしかにのれんの中には月日の経過とともに価値が減少する部分と価値が減少しない部分があります。価値が減少しない部分というのは、その企業の努力により価値が上がるように努力をした部分があるとも考えられます。つまりその企業自身が作り出したのれんの部分です。

日本ではのれんは他社か受け入れたものの計上は認めていますが、自己創設のれんは認めていません。ですから償却をせず、価値が下がった時点で減損を認めるというのは、自己創設暖簾を認めることになるので認めないとしました。

関根さんは日本の企業結合会計基準は、米国基準や国際財務報告基準と異なるのは、決して遅れているからではなく、それなりに合理的な理由があるからと述べていらっしゃいます。

また他の基準では規定されていないグループ内企業の組織再編やジョイントベンチャーを作る場合の会計処理まで規定されているので、より網羅的であるとも述べていらっしゃいます。

さてこの複雑な基準を使って企業再編を行った日本企業はグローバルな経済競争を勝ち抜けるでしょうか♪

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2006年6月 9日 (金)

税を考える!  疑問者さんへお返事

昨日メンテナンスチェックで別ネタをいれといたのですが、今日は疑問者さんからいただいたコメントへのお返事

『多くの国で、利益配当については源泉税が課され非居住者はそれで最終(本国における外国税額控除は別として)となっているが、投資のキャピタルゲインについては、どうなのだろかと。過去は補足が困難であったことがあるが、IT時代、グローバル化の時代、また税収不足の時代にどのようになっていくのだろうかと思ってしまいます。日本単独の問題ではなく、資金が世界を自由に駆けめぐる以上は世界的な問題なのだろうと思えるのですが。』

1.どうしてキャピタルゲイン課税は譲渡者のいる国だけなの?

キャピタルゲイン課税がどこの国で行われるのがいいのかということですよね。

村上ファンドネタで、でてきたのですが日本の会社の株式を外人が譲渡した場合は、原則として日本で課税されないですね。

日本では、譲渡所得に関しては、原則として譲渡者の居住地国で課税しましょう。源泉地国では課税しませんとなっています。 

 株式のキャピタルゲインの元はその会社の利益です。その会社の利益はどこで発生するかというとその会社のある国です。でも源泉地国で課税しないというのは、疑問者さんのご指摘のように納税の補足が難しいからでしょうね。

なるほど上場会社の株式なら、株式を譲渡した段階で補足が可能だから、源泉徴収をして税金をおさえることは可能です。でも非上場株式なんてわかりにくい。 ある会社の株式を持っていたアメリカ人がその株式をペルー人に売却したという事実をお上が探し出すのは、非常に困難だし、その売却代金がいくらかなんていうのはもーっと難しい。

それだったら源泉地国で課税するなんてルールをやめて居住地国で課税するとする方が効率がいいですよね。

日本の株式を持っている外人のキャピタルゲインに対して税金はとれないけど、外国の株式を持っている日本人のキャピタルゲインに対して税金をとることができるから。

だけど税収不足の時代に、外人がキャピタルゲインで大儲するのを指をくわえて眺めながら、日本の国民に増税だ!とはいえないから、特別の法律の規定を作って、大儲けに関しては、日本にも税金を落としてねとしているのでしょうか。

2.日本だけ税法を改正してもどうにもならない

キャピタルゲイン課税をどうするかというのは、日本だけの問題でなくグローバルの問題ですね。日本だけ変えてもどうにもならない。

同じようにどうにもならないのがネットを使ったビジネスの収益はどこの国に課税権があるか、どうしたらそこから税金をとれるかという問題はあります。

なんか昔、サーバーはPE(恒久的施設)か。なーんて議論があったような気もします。

消費税の問題では、たとえば外国の会社からパッケージソフトを輸入した場合は、輸入消費税はかかるけど、直接ダウンロードした場合は、消費税をとりようがないというのもありますし。

私として、どうすればいいのかという疑問者さんからのコメントに対して、こうあるべきとはお返事できないのは、はがゆいですが、

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2006年6月 8日 (木)

細かいことを言うようですが

今日は、こころぐ(私のブログの運営元)のメンテナンス日ですので、早朝に作りこんでおいて、夜にアップです。村上ファンドねたが3つ続いてたのですが、今日は細かい法律のことで、ぜひ「税法作っている系の方」にご覧になっていただけたらなあって思います。

PEのある外国法人が日本企業から配当を受取った場合、配当の源泉税は、所得税額控除できますよねというものです。

1.所得税額控除って制度

 配当や利子の支払を受ける場合、いつも源泉税を差引かれます。上場会社が1,000円の配当を支払った場合、今だったら個人(日本の居住者)が受取るのは900円です。日本の会社の場合は930円です。個人は10%、法人は7%差引かれるからです。会社の場合は、3%の地方税分を差引かれません。

 会社の場合は、70円差引かれて終わりでなく、確定申告の際に精算します。どう計算するかというと 1,000×30%-70230←法人税納税額

30%は法人税率で、源泉税分は法人税の前払と考えるわけです。

2.外国の会社が日本の配当を受取った場合

 日本にPE(支店のようなもの)がない外国の会社が日本の会社から配当を受取った場合も日本の会社が受取った場合と同じで源泉税が差引かれます。支払いを受ける国との間の租税条約(税金に関する条約)で配当の源泉を軽減、免税すると決めている場合は税率がかわります。この場合、日本での納税は源泉だけで終わります。精算しろといっても外国にいてるから無理でしょう。

 それでは日本にPEがある外国の会社の場合はどうなるのか。このような会社が配当を受取る場合も同じように源泉税が差引かれます。でもPEがある外国の会社は日本の会社と同じように確定申告をするから、その際に源泉税を精算することが可能です。

3.法令や通達はどうなっているか

ところで平成10年までの規定によると外国法人は配当に関しては所得税額控除はできませんでした。しかし今の規定を読むとPEがあるような外国法人の場合は、所得税額控除が可能と読めるのです。

法人税法施行令190 所得税額の控除の適用がない配当等

法第144 (所得税額の控除)に規定する政令で定める配当等は、 法第141 1号(外国法人に係る法人税の課税標準)に掲げる外国法人が支払を受ける 所得税法第161 5号(内国源泉所得)に掲げる配当等で、その者の 法第141 1号に規定する事業を行う一定の場所を通じて国内において行う事業に帰せられるもの以外のものとする。

 これって、所得税額控除の適用対象にならないのは、PE(支店等)のない法人が日本の会社から受取った配当ということではないですか。だったらPEがある場合は、通常は、その配当の源泉は所得税額控除の対象になると解釈できると思うのです。

武田昌輔成蹊大学名誉教授が 国際税務Vol18 No6 「外国法人が受け取る内国法人からの配当にかかる源泉所得税に関する留意点」でも同様の趣旨のことをお書きになっていらっしゃいます。

 で、関連の法人税基本通達

20-4-1 配当等に係る所得税額に対する税額控除の不適用

法第141条第1号《外国法人に係る法人税の課税標準》に掲げる外国法人が所得税法 161 5号《内国法人から受ける配当等》に掲げる配当等の支払を受けた場合において、当該配当等のうち令第188条の3《所得税額の控除の適用がない配当等》に規定する配当等につき同法の規定により課される所得税の額については、法 68 《所得税額の控除》の規定の適用がないことに留意する。

すみませーん。 令第188条の3って今ないですけど

ついでにこの法人税基本通達逐条解説3訂版 奥田芳彦編著を読むと

外国法人が内国法人から受ける配当等は国内源泉所得に該当するが、このうち法人税法施行令第188条の3に規定する配当等については、法人税の課税上は受取配当等の益金不算入の規定の適用を受けることができるため、実質的には課税所得を構成しないことになる。そこで、これについては、支払い段階における源泉所得税の課税をもって我が国における課税を完結させることとするため、その受取配当につき課された源泉所得税については、所得税額控除の対象としないほか、国内源泉所得にかかる所得の金額の計算上これを損金の額に算入しないこととされている。

こっちも令188条の3をベースに書いていらっしゃいますが、平成10年前の話をいまだに引きずっているのではないですか?

この辺の通達や本って、税務の世界ではメートル原器みたいなものなのです。でもどう考えてもバグっているように思えるのですが、

それとも私の現行条文の読み方が間違っているのでしょうか?

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2006年6月 7日 (水)

村上ファンドが 阪神電鉄株式を譲渡したら リニューアル

昨日、村上ファンド関連の投資顧問会社の関与会計事務所に家宅捜査が入りました。このミッションは何が目的?もちろんファンドの顧客であるアラブの石油王の譲渡益調べでしょう。なぜってこれを見つければ日本でがばっと税金をとれるはずだから

昨日と一昨日 村上ファンドネタを書いたのですが、他のブログでわかりにくいというご批判を頂いたので(笑)わかりやすさをもっとーに再チャレンジします。どうかな? とっても不安

2.村上ファンドって

ファンドというのは、たくさんの投資家からお金をあつめてきて儲かるもの(例えば株式)に投資して、その儲けを投資家に分配するものです。投資家が望むのは、1円でも多くの利益を還元して欲しいということです。1円でも多い利益をあげるためには、1円でもファンドの利益に対する税金を減らしたいということです。

そのためには投資家から集めたお金をどのような箱(事業体)にいれるのかがまず大事です。箱によって、箱の中で生じた利益に対する課税関係がかわるからです。

村上ファンドは投資事業組合という箱を使っています。これは、箱の中によって生じた利益に対する課税は、箱の段階で課税せず、箱に出資した人の段階だけで課税します。これをパススルー課税とします。

3 日本人が投資事業組合に出資した場合はどうなるか

日本人がパススルー課税である投資事業組合に出資した場合は たとえば日本の会社の株式を2億円で購入し、3億円で売却した場合は、差額の1億円に対して税金がかかります。もし株式が非上場株式なら2,000万円(1億円X20%)です。もし株式が上場株式なら 1,000万円(1億円X10%)です。これらの税金を投資事業組合に出資した日本人は、日本で払わないといけません。

4 国際税務のシステム

まず外人とか外国法人がからむ場合の税金のシステムをお話します。日本は数十カ国の国と租税条約といって両国間をまたぐ取引で発生した利益に対して、どっちの国がいくらの税金を払うとか、両国で一つの利益に課税されたらどうするか、もめた場合はどうするかということを決める条約を結んでいます。

外人がからむ場合の税金をどうするかは、日本の税法(国内法)でも決めていますが、租税条約とバッティングする場合は、租税条約のルールが優先されます。

また国際税務の基礎知識として、外人が日本で商売をするときに、日本に拠点(PE permanent establishment)を設けて行っているか、設けずに行っているかで、日本で稼いだ利益に対する課税の方法がかわります。もし日本にPEを設けていない場合は、原則的には日本で税金がかかりません。

5 外人が日本の会社の株式を譲渡した場合の税金のルール

国内法で、PEのない外人が日本の株式を譲渡した場合の譲渡益に対しては、原則的には、日本で課税されません。ですから外人が2億円で買った日本の会社の株式を3億円で譲渡しても、譲渡益1億円については日本で課税されません。

でも大量の株式を外人が購入して、そのうちの一部または全部を譲渡した場合は、例外として日本で譲渡益に対して課税されます。

どんなルールかというと譲渡以前の3年間にその会社の株式を25%以上保有していて、そのうちの5%以上を売却した場合です。

もし組合が株式を保有している場合は、組合が25%以上所有していて、そのうち5%の株式を売却したら、たとえ出資者が1%の株式しか所有していなくても、株式の譲渡益に対する税金を日本で納めないといけません。

でもこのルールはすべての外人の株式の譲渡にもあてはまらないのです。その外人の住んでいる国と日本の間の租税条約が別の規定を設けていたらその規定に沿って課税されるからです。

そこで村上ファンドの出資者がビルゲイツ(アメリカ人)の場合とアラブの石油王(租税条約のない国の人)の場合にわけてお話します。

6.ビルゲイツが、村上ファンドの出資者だったら

もしビルゲイツ(アメリカ人)が村上ファンドに2億円出資して、村上ファンドがその2億円で日本の株式を購入し、3億円で売却した場合の課税関係はどうなるのでしょうか。

ビルゲイツが1億円株式の譲渡益を獲得したと考えますが、ビルゲイツは、日本で1円も納税しません。なぜなら日米租税条約で、たとえ大量に保有している日本株式をアメリカ人が譲渡しても譲渡益に対して日本で課税しないと決めているからです。

7 アラブの石油王が村上ファンドの出資者だったら

もしアラブの石油王(租税条約のない国)が村上ファンドに2億円出資して、村上ファンドがその2億円で日本の株式を購入し、3億円で売却した場合の課税関係はどうなるのでしょうか。

 アラブの石油王が1億円株式の譲渡益を獲得したと考えますが、原則的には、日本で税金がかかりません。でも、上記のように村上ファンドが25% 以上株式を所有していて、5%の株式を譲渡した場合は、譲渡益1億円に対して、アラブの石油は1,500万円の税金を払わなければいけません。

アラブの石油王が、このような譲渡益に対して日本で税金を払っていたかどうかはわかりません。だからお上が会計事務所にやってきて、村上ファンドの顧客はいったい誰で、いくら儲けたのかを調べにきたのではないかと思うのです。

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2006年6月 6日 (火)

村上ファンドは、シンガポールへ行ったけど

 昨日、鮮やかに罪を認めて、だけどセレモニーとして村上さんは逮捕されちゃいました。投資は手仕舞いの時点の見極めが大事といわれていますが、村上さん、そして村上ファンドがどうなるか気になります。

今日も村上ファンドの税金ねたです。村上ファンドは、資料を読んでいると投資事業有限責任組合のようです。これは1人の無限責任組合員と、他の有限責任組合員から構成されています。有限責任組合員から資金を募り、無限責任社員がコントロールして事業を行うというものです。無限責任社員が自分自ら日本で事業を行うならば、彼が事業を行う場所が日本にあるはずです。このような場所をPE(恒久的施設)といいます。

1.PEとはどういうものか

PEは、国内法によると大きくわけて3つあります。

①支店、工場その他事業を行う場所

②建設作業現場のような場所

③代理人等 (所法164①一~三)

そして代理人はまた3つに分かれます

一常習代理人 非居住者等の多様な代理権をいつも有している者

二在庫保有代理人 非居住者等のための入出庫業務をしている者

三注文取得代理人 非居住者等のためにいつも仕事をとってくる人

常習代理人は、また2つに分かれます。

(1)独立的常習代理人 非居住者等から経済的、法律的に独立している代理人。たとえば問屋(商社)

(2)従属的常習代理人 非居住者等から経済的、法律的に独立していない代理人

PEの範囲は、租税条約といって2国間の税金のルールを決めている条約では、範囲が狭まり独立的常習代理人は除かれるところが多いです。

 PEの有無により非居住者等の所得の範囲が異なります。たとえば組合が日本で稼いだ事業所得は、PEがあれば日本で課税されますが、PEがなければ日本で課税されません(所法161一の二).

2.村上ファンドはどうなっているのか

さて村上ファンド(シンガポールに行く前)は、どうなっているかです。投資組合の組合員は、直接株式投資事業を行っていなかったので、日本にPEがないとして税務上処理していたと推測します。

彼らは上場会社の株式の売買をしていたのですが、これを投資顧問業者に一任し、業者の判断により売買を行い、経済的効果だけ組合員に帰属していたのではないでしょうか。

投資顧問業者は、組合とは独立し、自らの判断で売買を行う、つまり商社のような独立的常習代理人に該当すると思います。

そうするとたとえば村上ファンドの投資家がビルゲイツの場合、国内の組合事業の収益は日本では課税されません。なぜなら組合事業を行っているのは投資顧問業者(独立的常習代理人)であり、日米租税条約でこのような代理人はPEからはずれるからです。

もし投資家がアラブの石油王の場合、国内の組合事業の収益は日本で課税されます。なぜならアラブの石油王の国と日本の間で租税条約がないから国内法で処理されるので、組合事業を行っている投資顧問業者はPEとなるからです。

 それでは村上ファンドとセットで投資顧問業者もシンガポールへいったらどうなるのでしょうか。この場合は代理人も非居住者等になるので日本にPEがなくなります。そうすると株式の譲渡益に対する課税の問題は残りますが、基本的にはアラブの石油王は、安心してファンドに投資できるようになるわけです。

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2006年6月 5日 (月)

村上ファンドが、阪神株を譲渡したら

なにかと話題の多い村上ファンドですが、このファンドの事業に関して税務的に考えてみると面白い発見がいくつかあります。その一つ、もし村上ファンドが、阪神株を譲渡したら、譲渡益に対する課税はどうなるかを考えます。

2.村上ファンドはどんな事業体?

村上ファンドがどのようなスキームで組成されているのか具体的なことはわからないのですが、おそらく投資事業組合のようなものを組成して、外国の投資家から資金をつのり、日本の株式に出資しているものと考えます。組合員が直接イニシアティブをとって株式の購入、売却をしているのでなく、投資顧問業者に一任し、投資顧問業者がどの株をいつ、いくらで何株買い、いつ、いくらで何株売るのかを判断して決済していると思われます。そしてその結果、生じた経済的効果は、組合がパススルー課税であるから組合員に帰属します。

3.組合が株式を売却したら?

それでは組合が所有する株式を譲渡した場合、譲渡益に対する課税は、どこの国が行うのでしょうか。

日本の居住者や日本法人が日本株を売却した場合の譲渡益は、日本で課税されます。

日本にPE(恒久的施設 たとえば支店)を有しない非居住者や外国法人が所有している株式を売却した場合はどうなるのでしょうか。原則としては、日本では課税されず、非居住者の居住国や外国法人の本店所在地国等のみで課税されます(所法161一、164①四イ)。

しかし大量の株式を保有し、それを譲渡した場合は、日本の事業を譲渡したようなものだから日本でも課税すると決めています。

簡単にいうと譲渡年以前3年間のいずれかの時点で25%以上の株式を所有し、その株式を5%以上譲渡した場合です(所令291①三、法令187①三)。

組合が株式を所有している場合は、個人の組合員ごとに要件にあてはまるか確認をするのではなく、組合が25%以上所有し、組合が5%以上譲渡した場合は、組合はパススルー課税なので、組合自体ではなく、組合員が全員日本でも申告しなければなりません(所令291④、法令187④)。

村上ファンドが阪神株式を譲渡した場合は、おそらくこの要件に該当し、外人は譲渡益に対し15%の所得税を、外国法人は30%の法人税を納税する義務があると思います(措法3712、法法143)。

3.ビルゲイツやアラブの石油王が投資家の場合

それではビルゲイツが村上ファンドの投資家である場合、ビルゲイツは阪神株の譲渡益に対して15%の所得税を納めなければならないでしょうか。ビルゲイツはアメリカの居住者です。この場合は、国内法より租税条約が優先され、ビルゲイツに関しては株式の譲渡益に対して日本での課税関係は生じません(日米租税条約13条7)。

それではアラブの石油王が投資家の場合はどうでしょうか。おそらくその石油王の国と日本の間に租税条約が結ばれていないので、こちらの方は、日本法が適用され阪神株の譲渡益に対して15%の所得税を納めなければならないと思います。

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2006年6月 4日 (日)

ダニエルピンク、大前研一さんの「ハイコンセプト 『新しいこと』を考え出す人の時代 富を約束する『6つの感性』の磨き方」

1. 21世紀でまともな給料をとっていい生活をするためには

この本は、21世紀でまともな給料をとっていい生活をするためにはどういう人材になればいいのかということを述べています。

20世紀の世界を牽引してきたのはホワイトカラーという名の知的労働者でした。しかし彼らは21世紀においては、そのポジションを追われようとしています。

なぜなら彼らの行ってきた知的労働のうち、計算業務のようなものは、コンピューターがやるようになったからです。計算能力において、コンピューターに勝てる人材はおそらく無に等しいでしょう。

また彼らの行ってきた知的労働が、よりコストの低い国の人材でこなせるようになってきたのです。

たとえば多くの会計事務所の固定収入は、お客さんの帳簿を作り、決算を締め、申告書を作ることだと思います。このうち決算や申告書はそれなりの知識がいりますが、毎月つくる帳簿というのは、定型化され誰でもできます。そしてそのような仕事は今、中国で行われているのが増えています。

そしてこれからの時代は、コンピューターにとってかわれない、またコスト競争力のある他国の人材にも負けない分野で、付加価値をだせるような人材が勝ち組になれると論じています。

2.勝ち組になるためには6つのセンス(感性)を磨くことが大事

 それでは勝ち組になるためにはどうすればいいでしょうか。本著では、6つのセンスを磨きましょうと論じています。6つのセンスとは

①機能だけでなくデザイン

②議論よりは物語

③個別よりも全体の調和

④論理ではなく共感

⑤まじめだけでなく遊び心

⑥モノよりも生きがい

 これらは、飛びぬけた人間だけが持ちえる特別の才能ではなく、人間なら誰でも持っている感性(センス)に基因しているので、これらが磨かれるように毎日努めていれば、誰でも勝ち組になれますよということなのでしょう。

3.専門能力ではない総合力の時代

本著で特に納得したのは、これからはマルチな人材が勝ち組になれるということです。マルチな人材とは、ある分野で専門知識を磨き、その分野で成功が保障された人材が、他の分野へ進出して、すでに確立した知識を生かして、その分野でも成功するということです。本著でいう「境界」を自分で超えていく人です。

昨夜お話していた方がここでいう人材を絵に描いたような方でした。今、中国に企業が進出し、現地の会計を現地の会計事務所で、日本語でサービスができるところに集中して依頼しているようです。でもそこの会計事務所は、日本語対応のサービスはできても会計の質はあまりよくないそうです。だから日本の、特に上場会社等が連結子会社に求めるような会計の質には耐えられないそうです。

そこで、彼がどういうサービスをするかというと現地で作った帳簿、決算書に基づいて、日本基準の決算書への組替えをするというものです。

現地の会計事務所では、コストはかかるけど、優良な日本の顧客をつなぎとめ続けるためには必要と考えるでしょう。また日本の企業も日本基準での子会社の決算書を作る必要があるし、自分のところで行うよりもコストがかかっても外部に委託する方が安いからメリットがあるのでしょう。

だから彼にビジネスチャンスがある。

両方の会計知識を有し、語学ができ、その間をつなげられる人材だから。こういう人材は、いてるようで世の中にはほとんどいてません。そんなニーズのあるマーケットを探し、そこで耐えうる人材になれば勝ち組になれるという結論を補強させたような一冊ですね、この本は♪

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2006年6月 3日 (土)

日米で異なるLLCの税制の問題点

1.   LLCは?

 LLC(Limited Liability Company)は、アメリカの州法により設立された出資者が有限責任の会社のような事業体で、税務上納税者の選択で、事業体で生じた利益について、事業体を納税義務者とすることも(団体課税)、出資者を納税義務者(構成員課税)できます。

 日本の合同会社は、LLCをベースに設計されたといわれますが、合同会社は、法人課税です。そして日本の国税当局は、アメリカのLLCも原則的には法人と取扱うと見解をだしています。

 つまりLLCに対する課税上の取扱いが、日本とアメリカで異なることになります。そのために生ずる問題点を以下において書きます。

2.日米租税条約での問題点

租税条約とは、2国間で生じた所得について、どっちの国が誰からいくら税金をとれるか、二重に税金をとられたり、税金でもめた場合はどうするかを決めているような条約です。日本にも税法がありますが、条約とバッティングする場合は、条約を優先します。でも条約の方が国内法より不利な場合は、原則的には国内法を優先します。

日米租税条約が最近改正されましたが、2国間で税務上の取扱いが異なる事業体についてのルールが定められています。

アメリカの会社(条約の適用がある会社)がLLCに出資し、日本の非上場の会社に投資し、配当を受けた場合を考えます。LLCはパススルー課税を選択しています。この配当に関しては、日米租税条約により、通常の源泉税率(20%)より低い税率(0%、5%,10%)を適用できます。

なぜなら日米租税条約で、アメリカで構成員課税を受けたLLCが日本で取得した所得については、所得が発生した日本での取り扱いにか関わらず、所得を受取るアメリカのルールに基づいて税金をかけましょうとなっているからです。

配当を受取ったのはアメリカのLLCで、アメリカではパススルーだから、アメリカの会社が日本の会社の配当を受取っている。だから条約の適用をしましょうということです。

一方日本の会社(条約の適用がある会社)がLLCに出資し、アメリカの会社に投資し、配当を受けた場合を考えます。この配当に関しては、日米租税条約の適用を受けることはできません。したがってアメリカの通常の源泉税率(30%?で税金が徴収されます。

なぜなら日米租税条約で、日本では団体課税とされているLLCがアメリカで取得した所得は、アメリカの会社がアメリカの会社に配当を支払ったことになるから、この配当は、アメリカの国内取引であり、日米租税条約の適用外となるからです。

2.   外国税額控除は、ファジー

①外国税額控除とは、

日米租税条約以外の問題として外国税額控除の問題があります。外国税額控除とは、日本の居住者や日本の会社が外国で稼いだ所得について税金をかけられたような場合は、その税金については、日本で所得税や法人税を計算する場合に差引くことができる規定です。

なぜこのような規定がおかれたかというと、日本の居住者や日本の会社が納める税金というのは、日本国内で発生した所得だけでなく、外国で発生した所得も含めて計算するので、もし外国で発生した所得に対する税金について控除ができないと、その部分については日本と外国で2重に税金が課されることになるからです。

② 日本の会社が直接LLCに出資したら

日本の会社がLLCに出資し、LLCが大儲けをしてアメリカで税金を払わなければならないとします。LLCが構成員課税を選択した場合は、日本の会社が税金を納付することになります。それではこの税金を日本の会社で外国税額控除をとることができるでしょうか。

日本ではLLCは外国法人であるとされます。そうすると外国法人であるLLCの所得は、日本の会社が稼いだ所得ではないので、その部分の税金を控除することはできないと考えられます。

それではLLCが稼いだ利益の分配した場合には、会社の配当と同じと考えて、この配当の元になる所得としてアメリカで払った法人税部分を外国税額控除できるのでしょうか。これはLLCを外国法人と考えるならば可能ではないかと考えます。でも日本の会社に分配されなかった利益に対する税金は外国税額控除の対象にはなりません。この部分はLLCに対する立替金となり、もしLLCの経済状況にかかわらず、返済不要とすれば、それは国外関連者へ本来受けるべき利益をプレゼントしたものとして、損失部分が税金の計算上、費用とならないと考えます。

③アメリカの子会社がLLCに出資したら

このようにLLCに直接投資すると問題が多いので、現状で使われているのは、日本の会社がアメリカに子会社(株式会社)をつくり、アメリカの子会社がLLCに出資するというスキームがです。

ただここでも問題点が生じます。アメリカの子会社が出資したLLCが大儲けをした場合、アメリカで構成員課税を採用したら、アメリカの子会社がLLCの利益に対する税金を払わなければなりません。

そしてアメリカが日本に配当を払いました。配当に関しては、配当支払い時に配当の金額に対して支払われる源泉税だけでなく、配当のもとになった所得に対して払われた法人税についても外国税額控除できます。でもこの法人税の対象は、あくまでも子会社の所得に限られると考えると、LLCが稼いだ所得に対する税金は、子会社の払った税金として外国税額控除ができなくなります。ただし日本では孫会社の払った税金も外国税額控除の対象になると考えるのでLLCの所得に対する税金も最終的には、日本で控除の対象になるかもしれません。

では、LLCがアメリカの会社に投資したような場合で、その会社から配当を受けた場合のその会社の支払った税金について日本で外国税額控除がとれるのでしょうか。

アメリカの税制で考えると、子会社、LLCでひとくくり、その下に会社がぶら下がっているので2段階です。でも日本では、子会社、LLC、LLCの子会社の3段階であり、日本の会社から見るとLLCの子会社は、ひ孫会社にあたります。孫会社の払った税金に対する外国税額控除は認めても、ひ孫会社の払った税金にまでは認めていません。

3 ファジーなままでは事業ができない

なぜ日本では税務上LLCが外国法人と取扱われたかというと、租税回避行為に利用されるのを防止するためということが大きな原因だと思います。しかし普通の事業会社の対外投資にブレーキがかかるのは望ましくないです。安心して対外投資ができるような合理的な外国税額控除の規定を作って欲しいと考えます。

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2006年6月 2日 (金)

コンテンツ開発段階で信託できるか

1. コンテンツ開発段階で信託できるか

アニメ番組や映画を製作する過程では、資金需要が発生します。しかもこの段階では、資金が果たして回収できるか、つまり完成したコンテンツがヒットするかどうかは、非常に不透明です。

投資家としても興味はあるけれども、リスクが読めないので、財布の紐を緩めにくいのです。ですから製作委員会方式といわれるようにコンテンツビジネスにかかわる企業が集まって出資するというのがよく行われました。

この製作段階で信託を利用したスキームが作れるかということですが、この段階ではあくまでも仕掛品であり、著作権としての権利が生まれていません。当事者間では、将来完成する信託財産を信託することは有効と解されますが、第三者に対して、こんなお金を生む権利が信託されていますよとは言えません。なぜなら著作権の信託を第三者に主張するのには登録が必要であり、著作権が成立していない段階では、著作権の信託譲渡登録を文化庁が受理しないと思われるからです。

2.実際の事例ではどのようなものがあるか

信託が絡んだ事例として、ジャパンデジタルコンテンツ信託株式会社(JDC)が組成した開発型ファイナンススキーム「シネマ信託 TM~蟲師」があります。

このスキームでは、映画の著作権信託は完成していないとできないので、最初の段階では金融機関の借入を利用しています。

これは、映画の制作に関しては、製作委員会方式を採用しています。この委員の1人である映画制作会社の小椋事務所が制作資金を東京三菱UFJ銀行から調達します。完成した著作権の一部に信託権を設定し、小椋事務所は信託受益権を受取ります。そしてこの受益権の一部を投資家に販売し、販売代金を借入金の返済に充てるというものです。

2.本当に製作段階で信託を用いたスキームは使えないのか。

それでは、本当に製作段階で信託を用いたスキームは使えないのでしょうか。松田政行「コンテンツ.ファイナンス」日刊工業新聞社において、面白いアイディアが提案されています。

それは、映画の制作、完成の2段階にわけて信託を設定する方法です。まず映画の製作段階で、映画の著作権は存在していませんが、映画製作の元になる原作の小説や漫画や脚本など、映画とは別に著作権として存在するので、これらに対して信託を設定し、信託受益権を受取り、その信託受益権を販売します。

この信託受益権だけでは製作資金は賄えないので、ノンリコースローン等も入れて資金調達をし、完成時点で映画の著作権を信託して、投資家に販売し、製作者等は投下資本を回収します。

一次信託受益権を購入した人は、二次段階よりもリスクが高いので、次の信託受益権を優先的に購入できる権利をあげるというような特典を与えたりします。

さてこのような手法を使った信託が行われるようになるでしょうか。

参考文献: 松田政行 コンテンツファイナンス 日刊工業社

JDCプレスリリース「JDC信託、東京三菱銀行と開発型ファイナンススキームを組成」平成171028

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2006年6月 1日 (木)

ごめんなさい ストリップス債でした

信託大好きおばちゃん 号外です。

先ほど 証券税制の第一人者の方からシビアなご指摘を受けまして、

ストリップ債と連呼していましたが、これは正確にはストリップス債です。STRIPS(Separate Trading of Registered Interest and Principal of Securities)

ごめんなさい。 原稿は大変だから訂正しませんが、

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契約型外国公社債投資信託の譲渡益に対する課税リスクは? お返事

1. 質問

munerin52さんからの質問です。「契約型の外国公社債投資信託を譲渡した場合の譲渡益に対して所得税は非課税とされます(措法3715)。」について、全く課税は発生しないのでしょうか?別の税金が間接的に掛かるのでしょうか?

譲渡益に関しては、原則的には、日本では課税されないですが、他の課税リスクはあります。

2.投資信託を組成した国で課税される場合

株式を譲渡したら、譲渡益については、譲渡人のいる国についてのみ税金が課されるものですが、その会社のある国でも税金が課される場合があります。

日本でも、日本の不動産のかたまりのような会社の株式を外人が外国で売却した場合、日本でも課税するというように税法は設計されています。ただし租税条約(日本と外国の2国間の税金の条約)で、課税しないと決めている場合は、日本で課税されません。

投資信託についても同様のルールがある国もあると思います。でもそんなルールの国で投資信託を組成することはまずないとも思います。

2.ストリップ債100%の投資信託を売却した場合

 理論的には非課税ですが、最初からストリップ債100%に投資するような投資信託だったら、租税回避行為として否認される可能性は非常に高いです。たまたまある時期ストリップ債100%でも否認される可能性はあります。税務調査で否認され裁判までもつれこむと勝敗はわかりませんが、結論がでるまで膨大な時間とコストがかかります。

3.タックスヘイブン税制が課税される場合

タックスヘイブン税制は、税率が0であったり、税率が低い国で組成した投資信託の利益のうち、日本の投資家に分配されなかった部分も、投資家の所得として日本で課税する制度です。

たとえば日本の個人投資家が1億円ケイマンの公社債投資信託に、日本の金融機関を経由して投資しました。1年で大儲けをして信託財産の残高が2億円になり、その投資家に2,000万円の利益を分配しました。その後、その投資家は投資信託を18,000万円で譲渡しました。

日本での投資家に対する課税は、原則的には2,000万円X20%=400万円です。1億円で買ったものを18,000万円で売却した場合、8,000万円に対して課税されません。でもタックスヘイブン税制にあてはまるとこの8,000万の利益は、日本の投資家に分配できるのに日本での課税を逃れるために外国でためこんだやつだから、その分は日本の投資家の所得(雑所得)として課税されてしまいます。

ただしタックスヘイブンで組成した投資信託の投資家が日本人だったらなんでも課税されるわけではありません。出資比率が5%未満(1人基準ではなく、一族郎党関係会社も保有している場合はこれらをまとめて1人)の場合は課税されません。お上も探し出して課税するのが大変だからでしょう。

だからケイマンで組成された投資信託でも公募されたものは、原則的にはタックスヘイブン税制に該当しないと思いますが、私募に関しては、該当する可能性が高いのでチェックが必要ですね♪

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