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2006年6月27日 (火)

議決権の信託とヒルズ黙示録

1.議決権の信託

議決権の信託というのは、株式そのものを信託するのではなく、株主権のうち議決権だけを切り出して信託するということです。

これは認められないと解されています。なぜなら信託できるのはあくまでも財産権であり、議決権というのはその財産権の一部を形成しているものだから、この部分だけを切り出すことはできないと考えられるからです(注1)。

2.ヒルズ黙示録のなぞ

(1)証取法の大量保有報告

『ヒルズ黙示録』の中で、フジサンケイグループの元議長鹿内啓明夫妻が所有するニッポン放送株式を大和SMBCに直接売却せず、この株式を信託しています。そして株式の権利を経済的権利と経営支配的権利(議決権)に切り分けて、まず経済的権利の部分に相当する信託受益権を大和SMBCに売却しています。

議決権は鹿内夫妻が有しているので、証券取引法上は株式の事実上の支配権は鹿内側にあるとされたから証券取引法で大株主(5%以上)の株式の移動があったときに必要な大量保有報告の届出を免れたとされています(注2)。

(2)なぜ信託契約後、鹿内氏は株主総会に参加できたか

それではニッポン放送株の名義変更はどうなっていたのでしょうか。議決権だけを鹿内夫妻に残し、経済的価値部分だけを信託するということは、議決権の信託ができないのと同様できないのではないかと考えます。そうすると株式(株券)が信託銀行に引き渡されます。信託銀行は発行会社に対抗するために名義を変更する必要があります。

名義を変更すると株主が変わるから、株主総会に参加できるのは新たな株主です。信託した株式の議決権を鹿内氏が有しているというのは、鹿内氏の指示にしたがって受託者が議決権を行使するということだと思います。でも鹿内氏が信託受益権の契約締結後、株主総会に出席する旨の連絡をしてきました(注3)。

本来なら信託銀行が株主だから株主総会に出席すべきなのになぜだろうかと考えました。ポイントはこの信託受益権契約が平成16527日に行われたことにあると思います。

株主総会に出席することができる株主は、株主名簿に記載されている株主です。株主は変わることがあるので、いつの株主名簿に載っている株主が総会に出席できるかを決める必要があります。そしてこの日をたとえば3月31日と決めたならば、3月31日時点のニッポン放送の株主であった鹿内氏が株主総会に参加できるのです。総会時点では株主であるかどうかは問題ではありません。

このような手法を採用することにより、議決権を鹿内氏が行使しているからまだニッポン放送株式を所有しているという状況を作りながら、実質的には大和SMBCに譲渡したのでしょうか。

1 四宮和夫 信託法 (新版) 有斐閣 P136

注2      大鹿靖明『ヒルズ黙示録 検証ライブドア』朝日新聞社P33

注3      上掲 大鹿靖明P48

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