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2006年6月19日 (月)

無議決権株式を利用した相続&相続税対策

先週の613日の日本経済新聞の朝刊に『議決権のない株、相続税評価20%低く 経産省要望へ 中小企業承継円滑に』という記事が載っていました。株主の権利(配当収受権、残余財産分配権、議決権)のうち、議決権がないような株式というのは、会社法施行前からありますが、家族が株式を持っているような会社(同族会社)で、後継者以外の人が相続でもらう株の評価はディスカウントしてね だって相続税が高すぎるから事業承継がうまくいかないだもんというものです。

1.相続対策の肝は?

事業を営んでいる人の相続対策の肝というのは、事業を譲りたい人に事業を渡すことです。会社で事業を営んでいるときは、私が死んだら社長をやってねというだけでは事業をコントロールするのは難しいです。株式会社で一番えらいのは、株をたくさん持っている人だからです。だから後継者に自社株をたくさん渡してあげるのが大事です。

この事業承継を円滑に行うための最大のコストは相続税です。とくに利益のでているような非上場の会社の株式の評価額は高いので相続税も高くなります。しかもこの株式は経営者にとっては大事ですが、経営に興味のない人にとっては何の価値もないので、売ってお金にかえるのが難しいです。

そこでどうするかというと相続税を減らそうと努力するのですが、相続税対策のために株式を後継者にならない人に渡すことが多くあります。これは相続税対策としては有効かもしれませんが、相続対策としては、後々問題を起こす原因になります。

2.非上場会社の株式の相続税評価額は2種類ある

 なぜ後継者以外に株式を渡すのかというと、非上場会社の株式の

相続税評価額は、2種類あるからです。

後継者のような会社の経営にかかわる人たちにとっての株式という

のは、経営の対価であるということから、会社の純資産などをベースに計算します。ほかの株主にとって株式というのは、儲かったら配当がもらえる権利であることから、配当の利回りをベースに計算します。

長年儲かっているような会社は、会社の内部に利益もたまっていることから純資産ベースの株価は非常に高額になります。

 儲かっている会社ほど、経営者グループとそれ以外の株価の差が大きくなるので、相続税対策として経営者グループ以外の人たちに株式を渡すことがあります。譲り受けた株主も当初は、経営者の意向を汲んで対応しますが、彼らに相続が発生し、次世代に譲り渡されるうちに経営者一族とも疎遠になり、株主の権利を使って経営者と揉め事を起こす人が現れることもあります。

3.分散した株式を後継者や会社が買い戻すのは大変

 株式が分散されると経営に支障をきたす可能性があるならば、今度は株式を買い戻す必要があります。買戻し先としては、経営者か会社になりますが、いずれが買い戻す場合でも、買取資金が必要になります。会社が買い戻す場合は、会社が内部に蓄積した利益の範囲内でしか株式を買い戻せません。また会社が買い戻す場合には、株主総会の決議が必要なので、株主間で買い戻しに関するコンセンサスが得られないなら買戻しは宙に浮いてしまいます。

4.相続人に対する株式の売渡請求

すでに分散した株式の買い戻しの方法は、会社法の施行により、今まで以上に増えています。たとえば相続により株式を取得した人に対して、会社側がその人に株が渡るとまずいなと判断した場合は、会社に株式を売ってくださいと請求することができます。これができるようにするためには、定款で相続人に対する売渡請求を定めて、株主総会の特別決議(普通の決議より要件がきつい)で承認されることが必要です。

5.無議決権株式を使った事業承継対策

 相続人に対する株式の売渡請求は、すでに分散された株式の買戻しの話ですが、新聞に載っていた話は、これからおこる相続のための対策です。

同族会社の経営者グループに属する人が、相続により株式をもらった場合は、たとえ経営に参加しなくても高い評価額で計算されることがあります。経営に参加しないのに高い評価額となるとコストばっかりで大変だからということで、株式が分散してしまったのです。

解決方法として、提案されているのが、無議決権株式を後継者以外の人が相続した場合は、評価額についてディスカウントを行うことにより相続税を減らし、かつ後継者に議決権を集中させ、より円滑に事業承継をさせましょうというものです。ただ同族会社というのは、すぐに株主総会を開いて無議決権株式を普通株式に変えることができるので、その辺のしばりはいれるそうですが。

でももし実現するなら、どのような形の法律が作られ、実務はどのように動いていくのでしょうか♪

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