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2006年6月 5日 (月)

村上ファンドが、阪神株を譲渡したら

なにかと話題の多い村上ファンドですが、このファンドの事業に関して税務的に考えてみると面白い発見がいくつかあります。その一つ、もし村上ファンドが、阪神株を譲渡したら、譲渡益に対する課税はどうなるかを考えます。

2.村上ファンドはどんな事業体?

村上ファンドがどのようなスキームで組成されているのか具体的なことはわからないのですが、おそらく投資事業組合のようなものを組成して、外国の投資家から資金をつのり、日本の株式に出資しているものと考えます。組合員が直接イニシアティブをとって株式の購入、売却をしているのでなく、投資顧問業者に一任し、投資顧問業者がどの株をいつ、いくらで何株買い、いつ、いくらで何株売るのかを判断して決済していると思われます。そしてその結果、生じた経済的効果は、組合がパススルー課税であるから組合員に帰属します。

3.組合が株式を売却したら?

それでは組合が所有する株式を譲渡した場合、譲渡益に対する課税は、どこの国が行うのでしょうか。

日本の居住者や日本法人が日本株を売却した場合の譲渡益は、日本で課税されます。

日本にPE(恒久的施設 たとえば支店)を有しない非居住者や外国法人が所有している株式を売却した場合はどうなるのでしょうか。原則としては、日本では課税されず、非居住者の居住国や外国法人の本店所在地国等のみで課税されます(所法161一、164①四イ)。

しかし大量の株式を保有し、それを譲渡した場合は、日本の事業を譲渡したようなものだから日本でも課税すると決めています。

簡単にいうと譲渡年以前3年間のいずれかの時点で25%以上の株式を所有し、その株式を5%以上譲渡した場合です(所令291①三、法令187①三)。

組合が株式を所有している場合は、個人の組合員ごとに要件にあてはまるか確認をするのではなく、組合が25%以上所有し、組合が5%以上譲渡した場合は、組合はパススルー課税なので、組合自体ではなく、組合員が全員日本でも申告しなければなりません(所令291④、法令187④)。

村上ファンドが阪神株式を譲渡した場合は、おそらくこの要件に該当し、外人は譲渡益に対し15%の所得税を、外国法人は30%の法人税を納税する義務があると思います(措法3712、法法143)。

3.ビルゲイツやアラブの石油王が投資家の場合

それではビルゲイツが村上ファンドの投資家である場合、ビルゲイツは阪神株の譲渡益に対して15%の所得税を納めなければならないでしょうか。ビルゲイツはアメリカの居住者です。この場合は、国内法より租税条約が優先され、ビルゲイツに関しては株式の譲渡益に対して日本での課税関係は生じません(日米租税条約13条7)。

それではアラブの石油王が投資家の場合はどうでしょうか。おそらくその石油王の国と日本の間に租税条約が結ばれていないので、こちらの方は、日本法が適用され阪神株の譲渡益に対して15%の所得税を納めなければならないと思います。

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コメント

taxさん おはようございます。 信託大好きおばちゃんです。
この前は、ごめんなさい。あとで条文指摘漏れに気づきまして、
ファンドの税務の仕事をしているんだったら、国際税務は必須ですよね。これは難しい。でも国際税務といっても日本の税理士がやるのは、あくまでも国内法の国際税務の部分(非居住者、外国法人、国内源泉所得、国外源泉所得)と租税条約であり、外国の税務は本質だけとらまえたらOKですよね。

村上ファンドで味噌をつけたファンドですけど、今後もファンドを使ったビジネスは増えるから、当然税金の仕事も増えると思います。

今でもこの辺の第一人者の方はいらっしゃると思いますが、他の分野よりは人数は少ないので、テクニカルに徹した努力だけでトッププレーヤーになれると思います。

税務の専門家は、あんまり評価されていないけど、経済取引には必ずついて回る重要な部分なので、今よりも評価されることになる時代がやってくるかもしれません。

めざせ 1億円プレーヤー!!!

投稿: 信託大好きおばちゃん | 2006年6月 7日 (水) 06時44分

信託だけでなく、国際税務の知識も詳しいんですね!ほんとにいつも驚かされます。相当勉強を積まれている方なんですね。

私は現在会計事務所で、世界各国の投資家がアジア諸国へ投資するファンドの税務を担当しております。私もいずれ、こういう世界で、第一人者といわれるような専門家を目指しています。

信託大好きおばちゃんさんのように、常にモチベーションを高くもって、がんばりたいと思っています。

毎日の更新大変でしょうけれども、ずっと続けていって下さい。応援しています。

投稿: tax | 2006年6月 6日 (火) 16時51分

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