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2006年6月 3日 (土)

日米で異なるLLCの税制の問題点

1.   LLCは?

 LLC(Limited Liability Company)は、アメリカの州法により設立された出資者が有限責任の会社のような事業体で、税務上納税者の選択で、事業体で生じた利益について、事業体を納税義務者とすることも(団体課税)、出資者を納税義務者(構成員課税)できます。

 日本の合同会社は、LLCをベースに設計されたといわれますが、合同会社は、法人課税です。そして日本の国税当局は、アメリカのLLCも原則的には法人と取扱うと見解をだしています。

 つまりLLCに対する課税上の取扱いが、日本とアメリカで異なることになります。そのために生ずる問題点を以下において書きます。

2.日米租税条約での問題点

租税条約とは、2国間で生じた所得について、どっちの国が誰からいくら税金をとれるか、二重に税金をとられたり、税金でもめた場合はどうするかを決めているような条約です。日本にも税法がありますが、条約とバッティングする場合は、条約を優先します。でも条約の方が国内法より不利な場合は、原則的には国内法を優先します。

日米租税条約が最近改正されましたが、2国間で税務上の取扱いが異なる事業体についてのルールが定められています。

アメリカの会社(条約の適用がある会社)がLLCに出資し、日本の非上場の会社に投資し、配当を受けた場合を考えます。LLCはパススルー課税を選択しています。この配当に関しては、日米租税条約により、通常の源泉税率(20%)より低い税率(0%、5%,10%)を適用できます。

なぜなら日米租税条約で、アメリカで構成員課税を受けたLLCが日本で取得した所得については、所得が発生した日本での取り扱いにか関わらず、所得を受取るアメリカのルールに基づいて税金をかけましょうとなっているからです。

配当を受取ったのはアメリカのLLCで、アメリカではパススルーだから、アメリカの会社が日本の会社の配当を受取っている。だから条約の適用をしましょうということです。

一方日本の会社(条約の適用がある会社)がLLCに出資し、アメリカの会社に投資し、配当を受けた場合を考えます。この配当に関しては、日米租税条約の適用を受けることはできません。したがってアメリカの通常の源泉税率(30%?で税金が徴収されます。

なぜなら日米租税条約で、日本では団体課税とされているLLCがアメリカで取得した所得は、アメリカの会社がアメリカの会社に配当を支払ったことになるから、この配当は、アメリカの国内取引であり、日米租税条約の適用外となるからです。

2.   外国税額控除は、ファジー

①外国税額控除とは、

日米租税条約以外の問題として外国税額控除の問題があります。外国税額控除とは、日本の居住者や日本の会社が外国で稼いだ所得について税金をかけられたような場合は、その税金については、日本で所得税や法人税を計算する場合に差引くことができる規定です。

なぜこのような規定がおかれたかというと、日本の居住者や日本の会社が納める税金というのは、日本国内で発生した所得だけでなく、外国で発生した所得も含めて計算するので、もし外国で発生した所得に対する税金について控除ができないと、その部分については日本と外国で2重に税金が課されることになるからです。

② 日本の会社が直接LLCに出資したら

日本の会社がLLCに出資し、LLCが大儲けをしてアメリカで税金を払わなければならないとします。LLCが構成員課税を選択した場合は、日本の会社が税金を納付することになります。それではこの税金を日本の会社で外国税額控除をとることができるでしょうか。

日本ではLLCは外国法人であるとされます。そうすると外国法人であるLLCの所得は、日本の会社が稼いだ所得ではないので、その部分の税金を控除することはできないと考えられます。

それではLLCが稼いだ利益の分配した場合には、会社の配当と同じと考えて、この配当の元になる所得としてアメリカで払った法人税部分を外国税額控除できるのでしょうか。これはLLCを外国法人と考えるならば可能ではないかと考えます。でも日本の会社に分配されなかった利益に対する税金は外国税額控除の対象にはなりません。この部分はLLCに対する立替金となり、もしLLCの経済状況にかかわらず、返済不要とすれば、それは国外関連者へ本来受けるべき利益をプレゼントしたものとして、損失部分が税金の計算上、費用とならないと考えます。

③アメリカの子会社がLLCに出資したら

このようにLLCに直接投資すると問題が多いので、現状で使われているのは、日本の会社がアメリカに子会社(株式会社)をつくり、アメリカの子会社がLLCに出資するというスキームがです。

ただここでも問題点が生じます。アメリカの子会社が出資したLLCが大儲けをした場合、アメリカで構成員課税を採用したら、アメリカの子会社がLLCの利益に対する税金を払わなければなりません。

そしてアメリカが日本に配当を払いました。配当に関しては、配当支払い時に配当の金額に対して支払われる源泉税だけでなく、配当のもとになった所得に対して払われた法人税についても外国税額控除できます。でもこの法人税の対象は、あくまでも子会社の所得に限られると考えると、LLCが稼いだ所得に対する税金は、子会社の払った税金として外国税額控除ができなくなります。ただし日本では孫会社の払った税金も外国税額控除の対象になると考えるのでLLCの所得に対する税金も最終的には、日本で控除の対象になるかもしれません。

では、LLCがアメリカの会社に投資したような場合で、その会社から配当を受けた場合のその会社の支払った税金について日本で外国税額控除がとれるのでしょうか。

アメリカの税制で考えると、子会社、LLCでひとくくり、その下に会社がぶら下がっているので2段階です。でも日本では、子会社、LLC、LLCの子会社の3段階であり、日本の会社から見るとLLCの子会社は、ひ孫会社にあたります。孫会社の払った税金に対する外国税額控除は認めても、ひ孫会社の払った税金にまでは認めていません。

3 ファジーなままでは事業ができない

なぜ日本では税務上LLCが外国法人と取扱われたかというと、租税回避行為に利用されるのを防止するためということが大きな原因だと思います。しかし普通の事業会社の対外投資にブレーキがかかるのは望ましくないです。安心して対外投資ができるような合理的な外国税額控除の規定を作って欲しいと考えます。

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