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2006年6月30日 (金)

武田薬品 移転価格税制で追徴570億円

1.報道によると

 昨日(平成18629日)の報道によると、武田薬品工業株式会社(以下『武田薬品』)が税務調査を受け、海外の関係会社に通常の売値よるも安い値段で製品を販売したことにより海外に利益を移転したということで、570億円追徴課税されたそうです。このような課税を移転価格税制といいます。

 武田薬品としては、到底納得できないということで、今後裁判等でとことん争うというスタンスをとっているようです。

 最近といって10年以上の傾向ですが、大企業が移転価格税制で、ものすごい金額の税金を追徴されるケースが目立ちます。

 武田薬品は、この570億円の税金はいずれ自分の正当性が認められて還付されるものと考えているので、長期仮払税金(資産)として計上するようです(注1)。

 ちなみにここ1年くらいで移転価格税制により追徴課税されたTDKや京セラは、過年度法人税等(費用)として税金を計上しています。

2.移転価格税制とは、

 移転価格税制とは、ようするに国同士の税金の取り合いが本質だと思います。

ある日本の会社が100円で作った製品をアメリカの第三者の会社に250円で販売し、アメリカの会社はこの製品を300円で販売します。この場合、日本では利益が150円、アメリカでは利益が50円となり、各々の利益に対して税金が課せられます。

ところが日本の会社がアメリカに販売子会社を作り、同じ製品を子会社に200円で販売し、子会社は300円で販売します。この場合、日本で利益が100円、アメリカでは利益が100円となり、各々の利益に対して税金が課せられます。

日本サイドからみると、第三者に販売した場合150円の利益に対して税金が課せられるのに、子会社に販売したら100円の利益に対してしか税金が課せられないというのは、会社が50円分アメリカに利益を移転させたからと考えます。そしてこの部分は本来日本で発生すべき利益だから税金をもらいますよということです。

グループ全体でみると100円で作ったものを300円で売っているから利益は200円なのですが、日本とアメリカでこの利益をいくらでわけるかというそれぞれの国がルールづけしたのが移転価格税制であり、その分ける基準は、第三者に販売したらいくらかというような金額をベースに判断することになります。

3.救済方法は?

上記の例でアメリカの子会社に200円で販売したのに日本で250円で販売したものとみなして税金が課されると、50円部分については、日本とアメリカの両国において課税されることになります。

同じ所得に対して2重に税金を課すというのは不合理なので、救済方法としては、日本のお上とアメリカのお上で話し合いをしてもらい、日本で増加した所得部分については、アメリカで所得を減額してもらい、アメリカで納付した税金を還付してもらうという方法はあります。

ただ話し合いは必ず合意に達するとは限りません。だめな場合もあります。

ですから通常、移転価格税制で追徴課税された場合納税者は、アメリカのお上と協議してくださいというお願いをすると同時に、日本国内で、お上の処分は納得いかないということで異議を申し立てることができます。そして納得がいくまで、それこそ最高裁判所の判決がでるまで争うこともできます。

4.事前に対策をとることはできないのか

移転価格税制は、追徴される税額が非常に大きな金額となり企業経営に対するインパクトも大きくなります。課税リスクがいくらぐらいあるか事前に予想できないと、経営判断に狂いも生じかねません。

事前に対策をとる方法として事前確認制度の利用があります。これは、海外の関係会社と取引をする場合の価格の設定方法に関して将来課税リスクがおこらないかどうか事前に確認する方法です。

事前確認制度は日本のお上だけに確認をとる方法と、相手国のお上の方も確認をとる方法の2つあります。日本のお上だけの方が、時間やコストはかからないといっても、かなり時間とコストがかかります。

また事前確認制度の執行件数も2国間協議つきの場合だと2004年で発生件数が63件、処理件数49件、繰越件数143件(注2)というように、世の中で起こっている取引数から考えると非常に少ない件数しか処理がなされていません。

5.さて武田薬品の今後は

さて、武田薬品の移転価格税制の動向はどうなるのでしょうか。武田薬品の場合は、米国に50:50で設立した会社(TAP社)に対する製品の販売価格が低いということで課税されています。

武田薬品側としては、TAP社の株主の半分は第三者であり、第三者に利益を移転させるようなことは、経済的合理性を追求する武田薬品が行うはずがない。

また製品の価格は自社だけでは決められず、第三者である合弁先の意向が働く、つまり利害の対立する会社間で決められた価格だから、移転価格税制の対象にならない。

にもかかわらず課税したのは不当だからとことん争うというように読み取れます。

しかし移転価格税制というのは、50%超の資本関係のある会社との取引ではなく50% 以上の資本関係のある会社も対象会社に含まれます。

また移転価格税制では相手会社に対する利益の移転の意思があるかどうかが問題ではなく、合理的な価格で取引がなされているかという簡単なようで非常に難しい客観的な価格を弾き出し、その価格との乖離がどうなっているかで判断をされるものです。

感情論で裁判にもつれこんでも武田薬品側によい結果はもたらされないと思います。あくまでも勘定論で、武田薬品は法律に基づいて価格を算定し、その価格は合理的である。お上の弾き出した価格は法律に基づくと不合理である、だから課税処分は取り消せというように主張を展開していくのかなあって、信託大好きおばちゃんは思うのですが♪

1 平成18629日 日本経済新聞 朝刊

注2 国税庁『事 況 A P A 2005』

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