どうして節税のために信託を使うとだめなの?
1.信託検査マニュアル案
信託検査マニュアル案というのがあります。金融庁が信託銀行等を検査する際に検査官が使用するチェックリストのようなものです。
以前このブログ『JPモルガン信託お仕置きだ!』で書いたようなことを信託銀行等が行って、投資家に迷惑をかけていないようにするために金融庁がチェックするのでしょうね。
しかしこのマニュアルをみていると、ようするにチェックリストに書いてあるようなことを信託銀行等がやったら、お仕置きするぞといっているようなものと思うのですが、その範囲が広すぎて、これではせっかく信託法を改正し、信託を広げようとしても結局はがちがちにおさえられて、信託を使って、経済活動を円滑に行うことが難しくなるかもしれません。
2.どうして節税目的のスキームはだめなの?
信託引受審査のところで、『脱税の疑いのあるスキーム又は節税を主たる目的としているスキーム等』かどうかを検証せよと書いています。
脱税は、違法行為でありそれを促すのはだめだからいいと思うのですが、節税を主たる目的としているスキーム等もだめと書いているのはどうかなあと思います。
① 脱税、租税回避、節税
脱税と租税回避と節税というのは、税金を減らすという行為だけど方法が違います。脱税は所得を隠す。租税回避は、取引自体は合法でその結果税金は減るけれど、その取引は節税できるからあえて使うようなもの、お上の意図しない節税かな。節税は、経済的合理性のある取引を行い、その結果税金が減るもの、こっちはお上が意図する節税かな。このマニュアルの文言は租税回避スキームの防止でしょう。
②流動化スキームはだめなのか。
節税を主たる目的にしているスキームというのを真に受けると、流動化スキームで、不動産を直接売却せずに信託受益権を売却することにより、流通税を減らすというのも節税を目的とするからだめとも思われそうですが、こっちは一応、資産の流動化をして、オリジネーターの資産の効率化を図りましょうとかという大義名分が一応あるからOKなのでしょうね。
③主たるねらいは相続対策で信託を使うスキーム
おそらくお上のねらいは信託を使った相続対策で、大幅に相続税や贈与税が減少するようなスキームを未然に防止するのがねらいではないかと私はにらんでいます。
アメリカでは信託が相続対策の王道といわれていますが、これはひとえに節税効果があるからだと思います。当然日本でも信託法が改正されたら、相続対策をにらんでいろんな商品が開発されるのではないかと思います。
以前このブログ(5/15/06)でも書いたように、りそな銀行が自社株承継信託というのを販売しているようですが,この商品程度の節税効果があるような商品はOKということでしょうが、それ以上はという、、、というお上のメッセージがあるのかもしれません。
でもね。節税つまりコストを下げるというのは、経済的合理性のある人なら誰でも考えることで、やりすぎは社会的な問題もあるからだめかもしれませんが、最初から『だめなものはだめ!』というより、ある程度許容範囲を認めてもいいのではないでしょうか。こう書くと、その許容範囲はどれだとなるのでしょうけど♪
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