上場会社が信託受益権販売業に進出するのは、
1.上場企業、金融事業に進出
平成18年6月22日の日本経済新聞の夕刊のトップに『上場企業、金融事業に進出』というタイトルの記事が掲載されました。
この記事によると上場企業の中には、顧客のニーズや規制緩和を背景に本業と関連のある金融事業に進出し収益の拡大を図ろうとしているところがあります。
その中でNTT都市開発、清水建設は信託受益権の保有、売買および仲介を始めるようです。
たとえばNTT都市開発はプレスリリースで定款の変更を公表しています。事業の目的として新たに次の項目を追加しています。
○ 信託受益権の保有、売買および仲介
清水建設の方は、事業の目的として新たに次の項目を追加しています。
○ 信託業法に基づく信託受益権販売業及び不動産特定共同事業法に基づく事業
2.信託受益権販売業とは、
信託受益権販売業とは、ビジネスとして信託受益権を自分で直接販売したり、受益者から委託を受けて販売の勧誘をすることです。
信託業法の改正により、より多くの業者が販売業に参入することができるようになったのですが、内閣総理大臣の登録(3年で更新)が必要です。また営業保証金として1,000万円必要です。
信託会社が信託業以外の事業を行うのは、事業が失敗した場合、信託業務に支障をきたすリスクがあるので難しいです。これに対して信託受益権販売業の場合は、信託業以外の事業を行うのは認められます。
3. オリジネーターは信託受益権販売業者の登録は必要か
さて、ここで問題となるのが資産の流動化の主役の一人であるオリジネーターの取り扱いです。オリジネーターは、保有する資産を信託して信託受益権を受け取り、これをSPCなどに売却します。
このオリジネーターが保有する信託受益権をSPCに何度も譲渡するようなことを行った場合はオリジネーターは信託受益権販売業者にならなければならないのでしょうか。つまりSPCも投資家の一人だから、信託受益権の内容を説明する必要があると考えるのでしょうか。
SPCは流動化スキームのメンバーの一人だから、SPCに対する説明は不要と思われますが、原則的には信託受益権販売業者の登録が必要です。ただし信託会社等に関する総合的な監督指針10-2-1を読むと、信託受益権の販売の代理を一切、信託受益権販売業者に委ねて、自分は営業をしないような場合は、登録は必要ないようです。業者に委ねとコストがかかるので、頻繁に信託受益権を譲渡する場合は、自分で登録した方が、コストが削減できる場合もあります。
NTT都市開発も清水建設も所有する不動産の証券化を頻繁に行うことが予想されるため、信託受益権販売業者の登録を行う方がメリットがあるから定款を変更したのではないでしょうか。
| 固定リンク
コメント