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2006年6月20日 (火)

流動化案件の検証に対する疑問 信託検査マニュアル案

1.信託検査マニュアル案 流動化案件の検証

金融庁が『信託検査マニュアル(案)』に関してパブリックオピニオンを求めています。そのマニュアル案のp33信託引受審査態勢の確認検査用チェックリスト (6)流動化案件の検証の内容を要約すると次のようになります。

受益者保護の観点から、委託者の財産が委託者から倒産隔離されてないといけない。そのためには委託者から受託者への資産の譲渡が真正売買かどうか、また会計上オフバランスになるのかどうかを下記の観点からチェックする。

      対抗要件の具備

      当事者の意思の明示

      取引価額の適正性

      譲渡対象資産の特定性の程度

      遡及義務、買戻義務等の程度

      被担保債権、取戻権、清算義務の有無

      会計処理

      特定目的会社(SPC)等の独立性の程度

      信用補完、流動性補完措置

2.流動化のスキームでの信託の使われ方

委託者(オリジネーター)が、所有する資産を流動化するスキームというのは、資産をいきなりSPCに売却するのではなく、いったん信託をして信託受益権を受け取り、その信託受益権をSPCに譲渡し、SPCがその資産の価値に基づいて、投資家から資金を調達するというものです。

なぜ信託を使うかというと、倒産隔離が図られることや流通税コストが削減できるからと思います。

信託を使うことにより、信託した財産は、原則として、委託者が倒産しても、委託者の債権者が召し上げることはできません。でも委託者が信託受益権をそのまま手元においていた場合は、信託受益権も委託者のひとつの財産として、債権者に召し上げられる可能性はあると思います。

もしこの信託受益権をSPCに譲渡して、その譲渡が真正売買、すなわち譲渡担保(お金を借りる代わりに、担保として資産を渡しますよ。もしお金を返せなかったら、そのまま好きに使ってねというもの)でないならば、委託者の手元に名実ともに信託受益権はないから、委託者の債権者に召し上げられることはありません。

投資家の立場に立つと、自分が投資したお金の基になる資産が、委託者の債権者に召し上げられるのは困ります。だから委託者からSPCへの信託受益権の譲渡が真正売買であり、譲渡担保であってはならないのです。

そしてこの信託受益権の委託者からSPCへの譲渡が真正売買かどうかを確認するためのチェックポイントが上記①~⑦注1と思います。

3.委託者からの倒産隔離って

委託者からの倒産隔離というのは、上記にも書いたのですが、委託者が倒産した場合、債権者が信託した財産を召し上げることができないことです。

で、いつか改正される信託法の11条によると委託者が債権者を害することを知って信託を行ったような場合は、受託者が知らなくても、原則的には信託設定を取り消せるとなっています。

委託者から受託者への譲渡が倒産隔離なされているかどうかを確認するならば、この辺の確認を受託者はすべきではないかと思います。

他方チェックポイント③の取引価格の妥当性は、不要と思います。信託設定のためには、どのような資産がいくつあるのかは重要ですが、取引価格は信託受益権のSPCへの譲渡の際に重要なことで信託設定の際に大事なこととは思えないからです。

また⑦~⑨も同様に信託受益権の譲渡に際しては重要ですが、倒産隔離とは関係ないと思います。ですからこの辺は倒産隔離のための委託者から受託者への譲渡に関するチェックポイントからはずすべきと考えます。

4.会計上オフバランスにするためには、

会計上、信託受益権をSPCに譲渡する場合で、委託者の貸借対照表上、譲渡した資産を減らすことができるのは、平成12731日に日本公認会計士協会がだした会計制度委員会報告第15

『特別目的会社を活用した不動産の流動化にかかる譲渡人の会計処理に関する実務指針』に基づきます。

この報告には資産をオフバランスできる要件がいくつか列挙されていますが、上記譲渡担保になるかどうかの要件とは別に経済的リスクが移転されているかと言う要件が加わります。たとえば信託受益権を全部SPCに売却しても、SPCが信託受益権に基づいて発行した債券のうちおおむね5%を超えて委託者が購入したような場合は、法律上は譲渡に該当しても、会計上は金融取引であるから資産をオフバランスできないというものです。

だから会計上のオフバランスの可否を①~⑨で確認するのでは妥当ではないと思います。

5.私見

このように、つらつらと書いていきましたが、信託が流動化で果たす役割というのは、あくまでも脇役だと思うのです。委託者の財産が適切に信託されているのが確認されることが重要です。

でも流動化のスキームがどうなっているのか、ましてや委託者の会計上の処理がどうなっているかというのは、受託者の仕事の範囲を超えていると思うのです。にもかかわらず、全体を見渡して、その妥当性を検証しなければならないというのは、すこし責任が重いというよりも、仕事の内容と責任にアンマッチが生じていると思います。

ちょっと金融庁は過敏になりすぎているのではないでしょうか♪

注1                 江川由紀雄著 『実践証券化入門』シグマベイスキャピタル P39 この①から⑨の要件は、どうもこの著書のP38~P44あたりをまとめてひっぱってきたようにも思えるのですが、

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