« どうして節税のために信託を使うとだめなの? | トップページ | 公益信託の税金のしくみ β版(相続編) »

2006年6月14日 (水)

工作物責任と限定責任信託

先週の土曜日(6/10)、大阪の関西大学で信託法学会があり、信託大好きおばちゃんは500円払ってギャラリーとして参加していました。驚いたのは結構たくさんの人がいたこと。名札を見ると信託銀行系の若い人が多かったです。へーっとおもって眺めたら、顔に『義理と義務』と書いてありましたが、

この学会の発表でみすほ信託銀行の佐々木哲郎氏が『無過失責任に対する受託者の対応(信託財産の土壌汚染問題に関する受託者の無過失責任を題材として』というテーマでお話されていました。これって工作物責任の一種だと思います。

1.工作物責任とは、

工作物責任とは、たとえば土地の上に建物を建てたが、いいかげんな構造だったので、地震によりつぶれて多数の死傷者がでた場合、その損害について誰が賠償するかというものです。その建物を使っている人が一次的には賠償責任を負いますが、損害が発生しないようにするための注意を怠らなかったにもかかわらず事故が起こった場合は、占有者は免責され、損害の補償は所有者に飛んでいきます。そして所有者は、どんな理由を並べても賠償責任を免責されません。

2. 有限責任事業組合(LLP)の場合

有限責任事業組合(LLP)は、組合員の責任が出資限度となる組合です。有限責任となるのは、組合員に悪意や重過失がなくて組合の業務に関して第三者に損害が生じた場合です。

それではLLPが所有する不動産について工作物責任が生じた場合、組合員はLLP財産限度で責任を負えばいいのでしょうか。これについては解釈が分かれるところですが、私は無限責任になると考えます。

LLPは組合だから所有権は組合員の共有(厳密にいえば合有)となります。工作物責任は所有者に対して負わされる責任です。LLPの有限責任はあくまでも組合の業務に関して生じた損害というように限定されているので、所有者であることから生ずる責任は有限責任の範囲外と考えるからです。

3.信託財産について生じた工作物責任はどうなるか

信託財産について生じた工作物責任はどうなるのでしょうか。

(1)     現行信託法

現行信託法では、受託者は信託財産について生じた損失については、原則的には無限責任を負うことになります。信託財産の所有者は受託者ですから工作物責任も無限に負わなければなりません。

ただし受託者が行った信託業務について生じた費用は受益者に原則的には請求できるから、最終的なつけは受益者に回ってきます。受益者側としては受益権を放棄するという方法でつけの支払いを断ることもできますが、受託者側も『ばば』をつかみたくないので先に特約で放棄できないようにすることもできます。

(2) 改正信託法

それでは改正信託法ではどうなるのでしょうか。受益者への付回しは原則としてはできなくなります。もちろん特約をつければ可能になります。でも受託者は自分の利益のために所有しているのではなく受益者のために所有し、自分に責任のない損害を無限に負うのは厳しいと思います。

改正信託法で限定責任信託というものがあり、一定の債権に関しては信託財産が限度とされます。この一定の債権に信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利というのがあります。信託した建物に既に欠陥があることによって生じた損害賠償請求権というのは、信託財産を限度にできるとも読めます。そうすると受託者の工作物責任は限定されるのでしょうか。それでは工作物責任は最終的には誰が負うのでしょうか。

|

« どうして節税のために信託を使うとだめなの? | トップページ | 公益信託の税金のしくみ β版(相続編) »

コメント

onthelawn(芝生の上?)さん おはようございます。信託大好きおばちゃんです。

建物が地震でたおれてたまたま死亡した人が、工作物責任を追及しようとしたら、これは信託財産であり、かつ有限責任だ~責任はとれないよ だって登記に書いてあるじゃないっていわれてもねえ。
登記は調べようという意思をもっている人なら確認できるけど、誰でも通常は知っているはずだというものとは違いますよね。
そうすると工作物責任は、ケースによっては無過失責任になる可能性もあるのかなあ


投稿: 信託大好きおばちゃん | 2006年6月15日 (木) 06時28分

改正信託法案、216条は、限定責任信託においては、全ての信託財産責任負担債務について、受託者が有限責任を負うと定めていますよね。
 ただ、登記をして、取引の相手方に限定責任信託であることを明示することを定めていることから分かるように、取引行為から生ずる責任を念頭においていると思われ、工作物責任については解釈の余地がありますよね。
 工作物責任自体は、信託財産責任負担債務といえるでしょうから、216条の文言からは、受託者は有限責任を負うのではないでしょうか。ただ、その場合、登記を正当な事由によって知らなかったかどうかについて定める、220条の扱いをどうするのか難しいですね。

投稿: onthelawn | 2006年6月14日 (水) 11時11分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/143467/10517970

この記事へのトラックバック一覧です: 工作物責任と限定責任信託:

» 福井総裁の責任とファンドのvehicleの建て付け [isologue]
日銀の福井総裁が村上ファンドに1000万円出資していたことでバッシングを受けてい... [続きを読む]

受信: 2006年6月16日 (金) 05時17分

« どうして節税のために信託を使うとだめなの? | トップページ | 公益信託の税金のしくみ β版(相続編) »