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2006年7月10日 (月)

組合に土地を現物出資したら

1.組合を作るのに現金以外の出資は可能か?

民法上の組合や有限責任事業組合(LLP)を作るために、通常組合員となる者は、現金を出資します。民法上の組合を出資する場合は、労務出資つまり組合の事業のために体と頭を出すからお金は出さないというのもありえます。

それでは、金銭以外の資産を出資した場合はどうなるのでしょうか。

これは、民法上の組合でもLLPでも可能です。含み損益のある土地を現物出資した場合の会計上と税務上の取り扱いを考えます。

2.会計上の処理は3つ考えられる。

 たとえばX社とY社が50%ずつ出資してLLPを作ります。Aは1億円の時価の土地(簿価3,000万円)、Bは1億円の現金を出資します。会計上のAとLLPのとりうる仕訳は3通りあります。

全部譲渡方式

これは、X社が所有している土地を全部LLPに譲渡したものとして計上します。そのことによりLLPの貸借対照表には土地も現金も1億円ずつ計上されます。LLPの出資比率は50%ずつなので、出資比率に応じて資産が計上されることになります。

X社の仕訳

出資金 1億円   土地 3,000万円

       土地売却益 7,000万円

LLPの仕訳

土地  1億円   出資金 2億円

現金  1億円

部分譲渡方式

これは、X社の出資した土地のうち50%は、LLPに出資したものだけれども自分の持分となるので、自分に出資するとは考えられないので譲渡益は計上しません。残りの50%部分については、共同出資したY社の持分となるので、Yに譲渡 つまりLLPに出資したものとして譲渡益を計上します。このことによりLLPの貸借対照表に計上される土地と現金の比率は50%ずつにはならないのでアンバランスな形で計上されることになります。

X社の仕訳

出資金 1,500万円  土地 1,500万円 X社の持分となる

出資金 5,000万円  土地 1,500万円  Y社の持分となる

         土地売却益3,500万円

LLPの仕訳

 土地  6,500万円  出資金 1億6,500万円

 現金  1億円

繰延利益方式

これは、全部譲渡方式と部分譲渡方式の欠点をカバーするような方式です。X社の土地の含み益のうちY社の持分となる部分についてのみ譲渡益を認識すると、資産の計上がアンバランスになります。でもX社の土地を全部譲渡すると計上すると、X社の持分相当額は自分に譲渡したのに譲渡益を認識することになります。

そこで、X社の譲渡益のうち自分に配賦される部分については、将来土地がLLPから売却されるような時まで、繰延るというものです。

X社の仕訳

 出資金 1億円   土地 3,000万円

         土地売却益3,500万円

         繰延利益 3,500万円

 LLPの仕訳

 土地   6,500万円    出資金  2億円

 繰延利益 3,500万円

 現金     1億円

3.税務上は部分譲渡方式

それでは税務上はどのようになるのでしょうか。税務上は、現物出資した土地の含み益のうち、他者に配賦される部分についてのみ譲渡益として認識されることになります。

したがって税務上は、部分譲渡方式の考え方です。会計上繰延利益方式でも譲渡益としての認識は部分譲渡益と同じですが、会計上全部譲渡方式の場合は、譲渡益が会計上と税務上で異なります。

ですから会計上全部譲渡方式の場合は法人税の申告書上で調整をすることになります。

上記の事例ですと 別表4は次のようになります。

土地譲渡益  3,500万円 減算留保

別表5(1)の期末利益積立金額は次のようになります。

土地譲渡益  △3,500万円

この部分は、土地が譲渡されたような時点で調整されます。

4.税務上適格現物出資の適用は可能か

民法上の組合やLLPを作る時点で行う現物出資に関して、適格組織再編の現物出資の要件に当てはまりそうなケースでは、譲渡益を繰り延べることができるのではないかと思われるかもしれません。しかしこれは適用できません。あくまでも適格現物出資は、別の会社に現物出資するものですが、組合は会社のような人格がなく、他の組合員の所有持分となるからです。

5.含み損のある資産の現物出資は可能か

 今までは含み益のある資産について書きましたが、それでは含み損のある資産を現物出資することは可能でしょうか。

たとえばX社とY社が50%ずつ出資するLLPをつくり X社は土地1億円(簿価2億円)Y社は1億円の現金を出資したとします。

X社の税務上の仕訳は次のようになります。

 出資金     1億円  土地 1億円

 出資金  5,000万円 土地 1億円

 譲渡損  5,000万円

これは原則的には問題ありません。でも現物出資してLLPをつくり、すぐLLPを解散し、土地をX社に戻すことができます

X社のLLP解散時の仕訳は

 土地   1億円   出資金 1億円

 土地   5,000万円 出資金 5,000万円

というようになります。つまり譲渡損をだすことによる節税というスキームができてしまいます。

 これは、お上もかなり神経質になっているので注意しないと否認されるリスクが高いと思います。

参考文献 五枚橋實 『組合事業の所得計算について 平成17年度税制改正を踏まえて』租税研究 2006.5

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コメント

ネット検索したら、ヒットしました。通りすがりです。
例えば、兄と弟で1/2づつの共有持分の土地があり(原価 50,000円、時価1,000,000円)これを現物出資をして、LLPを設立した場合、所得税法上の譲渡益課税はないと考えてよろしいのでしょうか?

 もし、それが可能であれば、組合員を、その子孫に受けついぐことで、相続財産をLLPに全部現物出資し、相続財産をLLPを通して、受け継いでいくのが可能かなと思いまして・・・。

投稿: 木村 | 2009年4月29日 (水) 01時52分

昨日は失礼致しました。Horyです。慣れていないもので、2回もトラックバックしてしまったようで申しわけございません。今後、ブログの作法を学んでまいります。信託のスキーム等に大変造詣の深い方とお見受けしました。わたしはまだ実際にファンドを組成したことがなく、修行中の身でございます。御ブログを逐次拝見して勉強し、いずれは「信託大好きおばちゃん」(女性にこんな申し上げ方をしてよいのでしょうか…)様にもご紹介できるファンドをつくれればと思っております。今後とも宜しくお願い申し上げます。

投稿: Hory | 2006年7月10日 (月) 10時51分

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