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2006年7月21日 (金)

債権者は信託財産を取り戻せるか?

1.倒産隔離って

 信託が使われる理由のひとつとして倒産隔離ができるからというのがあります。

委託者が倒産した場合、委託者の債権者は、委託者に残された財産を差し押さえて債権の弁済にあてることができますが、信託された財産までは原則としてかかっていけません。でも同じことは、委託者の有する資産を真正に譲渡したような場合も可能です。

 ただ信託に関しては受託者が倒産した場合も、受託者の債権者が信託財産を差し押さえて債権の弁済にあてることはできませんが、譲渡で譲受人が倒産した場合、譲り受け人の債権者は、譲受けた財産にかかっていくことができるのではないかと考えます。

つまり信託すると委託者や受託者の倒産により信託財産が債権者の手にかかるというリスクが避けられるのですが、このようなメリットを悪用する人も現れます。それを信託法(改正案)ではどのように防御しているのでしょうか。今回は、倒産までは至らないけれども、支払いを免れるために、わざと信託した場合どうなっているのかを考えます。

2.信託法案ではどうなってるか

 委託者が債権者への支払いを免れる目的で信託をしたような場合は、債権者は、受託者に対してその財産の信託を取り消せ!と裁判所に訴えることができます(信託法案11①)。また受益者に対して、財産をもらった行為を取り消せ!と裁判所に訴えることもできますし(信託法案11④)、受益者に対して、もらった財産を委託者に渡せと主張することもできます(信託法案11⑤)。

でもこの信託が他益信託(委託者≠受益者)で、受益者となることを知った時点や、自益信託(委託者=受益者)で、当初の受益者から信託受益権を譲受けた時点で、委託者の悪巧みを知らない場合は、債権者は、財産を取り返し弁済にあてることはできません。

自益信託で、当初の受益者のままである場合は、委託者本人が受益者であるから、当然自分の悪巧みを知っているので、信託自体は否定されて債権者は、信託した財産を弁済にあてることができます。

なお委託者が、支払いを免れるために自益信託を設定し、信託受益権を無償または無償に限りなく近い価格で、他の人に譲渡したような場合は、受益者が委託者の悪巧み知らなくても、信託は取り消され、委託者の債権者は、信託した財産を弁済にあてることができます(信託法案11⑦⑧)。

3.本当に取り返せるのか?

でも実際に上記のように詐害行為の取消を行うのは、債権者にとって相当な覚悟が必要かもしれません。裁判で訴えないといけないから時間もコストもかかるからです。

ただ悪意だ!悪巧みだ!ということを証明するのは誰なのかなと考えると、民法的には、まず委託者の悪巧みを証明するのは、債権者だけれども、受益者の善意を立証するのは、受益者のようです。なぜ受益者が立証責任を負うのかというと債権者が受益者の悪意を証明するのは難しいし、債務者が悪巧みをする場合、受益者がグルのケースが多いからのようですが(注)

注 内田貴 民法Ⅲ 債権総論、担保物権 2003年 P285 

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