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2006年8月18日 (金)

会社法の改正と配当

1.会社法の改正

 会社法が改正されて、定時株主総会で配当の支払い等を決めるための利益処分案というものがなくなりました。

 期中においても臨時株主総会を開いて配当を何度も行うことが可能になったからです。

 これは、会社法においては利益処分と決算の確定が、切り離されたということです。それがどのような影響を及ぼすのでしょうか。

2.株主資本等変動計算書と注記

 利益処分案はなくなりましたが、会社法では株主資本等変動計算書を作らなければなりません。これは前期末の資本金や利益剰余金、その他有価証券評価差額金などの残高からスタートし、期中の増減をして期末の残高を導き出すようなものです。

 この株主資本等変動計算書にはいくつかの注記が必要です。その注記の一つとして、次のようなものがあります。

会社計算規則136

◆3 当該事業年度中に行った剰余金の配当に関する事項

◆4 当該事業年度の末日後に行う剰余金の配当(当該事業年度に係る定時株主総会の終結後に法第454条【剰余金の配当に関する事項の決定】第1項各号に掲げる事項を定めるものを除く。)に関する事項

ただしこれは329日付けで合体されたそうです。その条文が今手元にないのでなんともいえませんが、

これは平成193月期の株主資本等変動計算書には、平成193月期中に配当したもの(平成183月期の利益に対応した分)だけでなく、平成19年の5月か6月の株主総会を経て配当するもの(平成193月期の利益に対応した分)も注記をしてねということです。そしてこの注記は法人税の申告をする際も非常に大事になってきます。

3.法人税の申告書で配当が影響してくるところ

 法人税の申告で配当が影響するのは、メインの別表4(税務上の損益計算書のようなもの)、そこからつながる別表5(1)(税務上の貸借対照表のようなもの)と同族会社の留保金課税のところです。

改正前は、別表4に支払う配当の金額を書くのですが、これはその期の株主総会で決まったものを繰り上げて入れます。

ところが改正により、その期に実際に支払った配当の金額を別表4の支払う配当の金額としていれることになります。会社法の改正を踏まえて法人税において配当の流出時期を効力発生日(株主総会の日)としたからです。ですから平成193月期の利益に対する配当を申告書に記載するのは、平成203月期となります。

次に同族会社の留保金課税の方ですが、こちらの方は従来どおり、繰り上げて計算をすることになります。配当を支払えば、会社の内部に留保する利益が減少するので留保金課税も少なくなります。いきなり繰り上げ禁止となると税額が増えるし、改正を理解していない人が間違えるリスクもあるので配慮したのでしょう。

そしてこのような税務上の配当の取り扱いの違いをわかるためにも株主資本等変動計算書の注記が重要になのです。

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