特許権の相続税評価額は高すぎる!
1.特許権の相続税評価額の算式は?
相続税評価額とは、ある人が亡くなって、その人の残した財産に対して、相続税がいくらかかるか計算をするときや、ある人が別の人に財産を贈与したときにいくら贈与税がかかるかを計算するときの基になる財産の評価額のことです。
これは、財産評価通達で、ルールが決められています。
140 特許権の価額は、145≪権利者が自ら特許発明を実施している場合の特許権及び実施権の評価≫の定めにより評価するものを除き、その権利に基づき将来受ける補償金の額の基準年利率による複利現価の額の合計額によって評価する。(平11課評2-12外改正)
(特許権の評価の算式)
141 前項の「複利現価の額の合計額」は、次の算式によって計算した金額とする。(平11課評2-12外改正)
(1) 第1年目の補償金年額×1年後の基準年利率による複利現価率=A
第2年目の補償金年額×2年後の基準年利率による複利現価率=B
第n年目の補償金年額×n年後の基準年利率による複利現価率=N
(2) A+B+…………+N=特許権の価額
上の算式中の「第1年目」及び「1年後」とは、それぞれ、課税時期の翌日から1年を経過する日まで及びその1年を経過した日の翌日をいう。
------------------------------------------------------------ここでいう基準年利率ですが、平成18年6月では、短期(1~2年)0.75% 中期(3~6年)1.5% 長期(7年以上)2%となります。
これたとえば年間1,000万円のロイヤリティを5年間受取れるような特許権だと評価額は、1,000万円×4.783=4,783万円となります。
2.実際の取引による割引率は?
最近、DCF(ディスカウントキャッシュフロー法)による評価というのが定着しつつあります。これは将来入ってくることが予想される現金収入を現在価値に割引いて評価する方法です。
この算式の重要な要素は、将来入っている収入と割引率の合理性です。収入の予想が大きいほど、割引率が小さいほど評価額が高くなります。
さて知的財産の評価で実際に使われる割引率はいくらくらいなのでしょうか。鈴木公明「知財評価の基本と仕組みがよ~くわかる本」秀和システム2004年 P107では、日本政策投資銀行の知的財産権担保融資の場合、期間は3~5年間 割引率は一般に10%~20%に設定されるということです。
もし上記と同じ年間1,000万円のロイヤリティを5年間受取れる場合
割引率が10%なら 1,000万円×3.791=3,791万円
割引率が20%なら 1,000万円×2.991=2,991万円
というように相続税評価額より低い価額になります。
担保価値だから時価よりも低い評価になるのは当然ですが、相続税評価額というのも時価よりも低い価値で評価するはずです。偶然に生じた不幸に起因して、納税義務が生じるようなものだから、なのに高い。
これは割引率に相当する基準年利率が国債の利率等をベースにして決められているからです。でも国債の利率っていうのは、リスクが全くない状態なのです。
特許権って、訴えられて負けたら、価値が0になる可能性もあるし、支払ってくれる会社がつぶれるリスクもあります。それなのにリスクフリーレートで評価しないといけないってルールおかしいと思うのですが♪
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