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2006年8月 4日 (金)

江川由紀雄さんの「実践証券化入門」~証券化は、リスクの加工ができるから優れもの~

1.証券化って何?

 証券化とか、資産の流動化という言葉が、ビジネス界において定着してから、10年くらいはたっています。ただ証券化とは何かという問いかけに対して、本質をとらまえた答えをだせる人はいません。江川さんは、証券化の揺籃期から業務に携われ、今では日経人気アナリスト調査、証券化アナリスト部門でトップを取り続けていらっしゃいます。彼が書いた「実践証券化入門」は、簡潔に本質をとらまえた優れものだと思い、時々じっくりと読んでいます。

 ここで証券化とは、キャッシュフローを生み出す資産を用いて、倒産隔離やリスクを加工したうえで、社債などの有価証券に代表されるような流動性のある投資商品に仕上げる過程のことと表現されています。

 ようするに資産単独でみると、換金性に乏しく、投下資本が回収できないリスクもある程度あるものを、誰でも手軽に買えて、投資したお金がほぼ確実にもどってくるような商品に変える過程なのかなあ。

2.リスクの加工って?

 江川さんは、証券化が優れている点として、リスクの加工が施されることといってます。リスクの加工というのは、リスクのある資産でも証券化する過程で工夫をすることにより、限りなくリスクがないような資産にかえる技と思います。この技は分散効果と優先劣後構造の2つで成り立っています。

3.分散効果

 たとえば2%の確率で貸倒になるような1億円の債権を9,000万円で買いますか? 9,800万円の回収が期待値としてある債権を9,000万円で買うのだから非常に魅力的ですが、このような商品を買うのは、ハイリスクハイリターンを好む人に限られるそうです。2%の確率で0になる可能性があるからです。

 それでは2%の確率で貸し倒れになるような債権を1,000個集めてきて1億円の金融商品を作った場合はどうなるのでしょうか。全部の債権が貸倒になる確率は2%の1,000乗だから、99%以上の確率で、この債権の回収率は97%から99%になります。そのような金融商品を9,500万円で買いませんかというと買う人が殺到すると思うかもしれません。しかしこれでもだめみたいです。

多くの投資家は額面金額の100%回収できるような金融商品を求めるようです。そのようなわがままな投資家のニーズに答えるために設計したのが優先劣後構造です。

4.優先劣後構造とは

 優先劣後構造とは、金融商品の基になる資産について生じた損失を誰が負担するのかという順番を決めることです。

 たとえば。債権を1,000集めて組成した1億円の金融商品優先部分と劣後部分にわけます。優先部分の額面を9,500万円と、劣後部分は500万円とし、回収の期待値は9,800万円とします。利子は無視します。

そして金融商品の裏づけである資産の生み出したキャッシュはまず優先部分の返済にあてるという設計をします。そうするとこの案件では優先部分は、ほぼ100%の確率で投下資本が回収できます。ただしそれ以上の回収があっても優先部分の債権者は分配金を享受できません。

また劣後部分については、800万円のリターンが期待できる商品を500万円だして出資するようなものです。でも資金の回収の順番は劣後するので、もしかしたら500万円も回収できないかもしれません。でも運がよかったら800万円、いや1,000万円の回収も夢ではありません。

 このようにリスクをとる順番を決めることにより、投下資本が100%回収して欲しい投資家にはローリスクローリターンの金融商品を、一攫千金系の投資家にはハイリスクハイリターンの金融商品を提供できるようになります。だから証券化は発展したのでしょうね。

 

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コメント

Horyさん おはようございます。信託大好きおばちゃんです。
これは、優先部分が9,000万円で 劣後部分が500万円

で帰ってきたのが9,800万円でした。

このうち9,000万円部分は優先部分の返済にあてる。
そうすると残りが800万円

それを劣後部分に当てる。 結果的に劣後部分は500投資して 800戻ってきた。 つまり利益は300あったということです。


優先部分は、元本の毀損はないが、元本以上の分配もない。列五部分は、元本の毀損もありえるが、元本以上の分配もありえるということです。

まだわからなかったらお知らせくださいませ。

投稿: 信託大好きおばちゃん | 2006年8月 8日 (火) 06時07分

ごぶさたしておりました。愛読者のHoryでございます。ところでお恥ずかしいのですが、本エントリーに関してごく基本的なご質問をさせてください。劣後部分の「800万円のリターン」というのは、期待値9800万円の同商品が優先部分償還に9500万円を費やした後の300万円を出資元本500万円に上乗せしたら800万円になって戻ってきた、という意味でしょうか。実は御ブログを拝読している友人から質問されてしまいましたので。ご多忙かとは存じますが、なんらかの形でご回答いただければ幸いでございます。それでは失礼します。

投稿: Hory | 2006年8月 7日 (月) 12時00分

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