黒沼悦郎さんの「金融商品取引法入門」
1.黒沼悦郎さんの「金融商品取引法入門」
平成18年6月に「証券取引法等の一部を改正する法律」が成立、交付され、一度にわーっつと施行されるのではなく、段階的に施行されていきます。
黒沼悦郎さんの「金融商品取引法入門」の一部を読んだのですが、思想というか法律のコンセプトがきちんとかかれているなという印象を受けています。
この著書の中でなるほどと思った部分についてちょっと書いてみます。
2.証券取引法における投資家の保護とは、
黒沼さんは「消費者法による消費者保護とは異なります。消費者法では商品について品質保証が与えられることがあり、欠陥のある商品から消費者が守らなければなりません。それに対し、証券取引の分野では、投資判断の結果を投資家に帰属させる自己責任の原則が妥当し、法は商品の品質(価値)を保証しません。品質を判断するための情報のみを投資家に与えて市場取引により価格を決定することが、資源の効率的配分のために必要だからです。そうでなければ、安易な投資判断により投資決定が行なわれ、市場価格ひいては資源配分が歪められてしまうからです。したがって『国民経済の適切な運営』が資源の効率的配分を意味するならば、それは『市場機能の維持』と同義であり、かつ『投資家の保護』とも方向性が一致することになるでしょう。」
金融商品取引法になって言葉の言い回しは変ってもコンセプトはかわりません。
つまり金商法でいう投資家保護とは、投資家が買うか、売るか、持ち続けるかについて、自分で的確に判断できるような材料を提供することじゃないかと思うのです。その材料が『やばいぞ』と書いているのに投資家が買って、その結果損失が生じてもしょうがない。でもその材料が『問題ないです』と書いてあって、それを信じた投資家が、大損するのは問題だということ。
3.キーワードは『販売圧力』
投資家保護のためのしくみで大事なのはディスクロージャー(開示)。たとえばある会社が株式を大量に市場で発行しようと考えた場合、証券会社に販売を依頼します。証券会社は売れ残りのリスクを抱えて、販売に精を出すのですが、損を出さず、いっぱい儲けようとすると、過度に投資家に販売圧力をかけかねない。頭のいい投資家なら『はったりだな』とわかるようなことも、素人投資家なら営業マンの熱意に圧倒されて、深く考えずに財布の紐をゆるめ、あとで大損害が生じるリスクがあります。だから法律で販売圧力のかけられそうな取引についてはディスクロージャー規制をかけます。
50人以上の投資家に株の販売を勧誘するような場合は、販売圧力がかかるからということでディスクロージャーに関して高いうハードルをかけます。でもプロ相手の場合は、販売者より投資家の方が精通しているような場合もあるから規制をゆるめています。また50人未満の投資家について販売する場合も、販売圧力がかからないと考えて規制は緩めています。
なおみなし有価証券(たとえばLLPの出資)については50人でなく500人以上が取得している場合は規制の対象ということですが、販売圧力がかかるという観点から考えると、500人というラインは妥当ではない、きっと他の理由で決めたんだなと著者は主張しています。
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