全株取得条項付種類株式の対価として1株未満の株を割り当てられた株主の課税上の取扱
みうらさん:日産ディーゼルの全員端数で現金というのもなんか税金と関係あるんですか
信託大好きおばちゃん:税金と関係あります。
最近はやりの手法ですが、 日産ディーゼル工業(株)(以下「日産ディーゼル」)社の公表資料に基づいて書きます。
日産ディーゼル社は、ボルボグループの傘下に入るための手法として、次のようなことをしました。
① ボルボ社の100% 子会社エヌエー社が日産ディーゼル社にTOBをかけて、日産ディーゼル社は、エヌエー社の子会社となった。
② 日産ディーゼル社は、株主総会を開き、現在発行している普通株式を全株取得条項付種類株式に変更する定款変更を行った。
③ 定款変更後、総会で決議して全株取得条項付種類株式を会社が取得し、その対価として普通株式を株主に割り当てるが、エヌエー社以外は、1株未満の端数になる。
④ 1株未満の端数に関して、裁判所の許可を得て日産ディーゼル社が買い取り、代金は株主に支払われる。
ここから、税金の話になるのですが、全株取得条項付種類株式の対価として、発行法人の株式のみもらえる場合で、取得された株式と交付を受けた株式の額が同じくらいだったら、この時点での課税は繰り延べましょうとなっています。もし、現金が交付された場合だったら、株主サイドにおいて、みなし配当課税+譲渡損益課税が生じることになります。
ところで、本件の場合は、エヌエー社以外の株主は、全株取得条項付種類株式の対価として、新株式の割り当ては受けますが、実際に交付は受けていません。そして、最終的には、株主は株式ではなく現金を受け取ります。このような場合課税の繰り延べはどうなるのでしょうか?
そこで、法人税基本通達が登場します。
2-3-1 取得条項付株式の取得等に際し1株未満の株式の代金を株主等に交付した場合の取扱い法第61条の2第11項第2号《有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入》に規定する取得条項付株式に係る取得事由の発生によりその取得条項付株式を有する株主等に金銭が交付される場合において、その金銭が、その取得の対価として交付すべき当該取得をする法人の株式(出資を含む。以下2-3-1において同じ。)に1株未満の端数が生じたためにその1株未満の株式の合計数に相当する数の株式を譲渡し、又は買い取った代金として交付されたものであるときは、当該株主等に対してその1株未満の株式に相当する株式を交付したこととなることに留意する。
つまり、1株未満の端数を割り当てられた株主が全株取得条項付種類株式を譲渡した時点で、みなし配当課税+譲渡損益課税とはならず課税は繰り延べられます。そして、金銭を受け取る時点で株主に譲渡損益課税が生じることになります。
じゃ、このような事例の場合はいつもみなし配当課税がなく、課税が繰り延べられるのでしょうか。
それに関して、前通達に続きがあります。
ただし、その交付された金銭が、その取得の状況その他の事由を総合的に勘案して実質的に当該株主等に対して支払う当該取得条項付株式の取得の対価であると認められるときは、当該取得の対価として金銭が交付されたものとして取り扱う。
同項第3号又は第5号に規定する全部取得条項付種類株式又は取得条項付新株予約権に係る株式に1株未満の端数が生じた場合についても、同様とする。
というわけで、状況しだいでは、課税の繰り延べがなされないケースもあるとされています。じゃ、それはどういう場合なのでしょうか。この日産ディーゼル社の事案に関してはどうなるのでしょうか。この事案はいたってノーマルで、別に誰かの税金逃れのためにやったというようなものではないようにも思えるのですが♪
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コメント
住民票 抄本 という文字が、金融商品内閣府令に出ちゃいました・・・
正式用語じゃないのですが・・
申請人にかかる住民票の一部の写し
とかにするのが正式です・・
投稿: みうら | 2007年8月23日 (木) 20時21分
現金で取得するのと、同じじゃないんですか・・
現金もらうから課税されるんですよね・・
譲渡所得とみなすというようなのかと・・
信託業法7条5項86条5項に、実費を勘案して・・のような文言がないので白紙委任であり違憲ではないですかね・・
投稿: みうら | 2007年8月23日 (木) 18時12分