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2007年11月 7日 (水)

信託型従業員持株制度の課税関係

今日は、非常にマニアックなお話です。

 旬刊経理情報 2007.11.1(No1164)において、筑波大学大学院 弥永真生教授が「信託型従業員持株制度と連結の範囲」という原稿をお書きになられました。

 これは、従業員持株制度の信託型であり、広島ガスが今年の8月に導入されたもののようです。

この信託型従業員持ち株制度とは、

 会社の株式を信託して、受益者(この場合は、残余財産受益者になると思います。)を一定の要件を満たす従業員とします。

 信託側では、信託した株式を、借入により賄った資金により調達します。そして、信託期間、その株式を定期的に時価で持株会に売却します。信託期間終了時に、残余財産(現金)が残れば、その時点で、一定の要件に該当する従業員がこれらの分配を受けることになります。

 一定の要件に該当する従業員が分配金を受けるのは、信託が購入した会社の株式の株価よりも売却時の株価が高い場合のことです。たとえば11万円で100株購入して、売却時の平均売価が1.5万円の場合、信託終了時に残ったお金は、(1.5万円×100株)-(1万円×100株)=50万円となります(借入利息他の諸経費や税金は無視しています)。この50万円を信託終了時点での要件を満たした従業員が山分けすることになるということです。

 反対に、売却時の平均株価が1万円を切るような場合、たとえば平均売価が8,000円の場合は、信託終了時(0.8万円×100株)-(1万円×100株)=△20万円 つまり、20万円分、信託財産は債務超過となりますが、このような場合、当初の借入金のうち20万円は信託財産から支払えなくなるので、その株式の発行会社が責任を持って払うことになるようです。

 この信託は税制上、どのような信託になるのでしょうか。どうやら、この信託においては、株式の委託者である会社は、信託の内容を変更する権利を有していないこととされているようです(上記 弥永教授の原稿 経理情報No1164 26頁)。そうなると委託者は、税制上、「みなし受益者」にはなれない。また、残余財産受益者は存在していますが、最後になるまで、誰が受益者であるか特定されない。つまり、信託設定時に、誰が受益者であるか特定できないことになるから、この信託の設定時には、受益者のいない信託に該当するのではないかと考えられます。

 新信託法の施行を前提とした信託税制によると、受益者のいない信託においては、信託設定時に、委託者側だけでなく、信託財産側(受託者側)においても課税関係が生じます。  

 すなわち、委託者である会社が時価で株式を信託財産という法人に譲渡し、信託財産(受託者側)でも時価で株式を取得したものとみなして受贈益課税がなされるものと考えられます。信託期間中の売却益に関しても法人課税がされます。

 ただ、この課税関係は、委託者が無償で信託を設定した場合ですが、これを時価で受託者に売却し、お金を受け取ったと考えたらどうでしょうか。たとえば売却時の株の時価が100万円で、信託側で100万円調達して対価を支払った場合です。この株は自己株式として所有していたものであり、帳簿価額は60万円でした。税務上の仕訳は次のようになると思うのです。

委託者側  現金 100万円  自己株式(資本金等) 60万円

               資本金等 40万円

受託者側   現金 100万円  借入金 100万円

(信託財産) 株式 100万円  現金  100万円

 信託設定時に時価取引をしている場合は、受託者側に受贈益課税はおこりえないと思います。

そして、信託が終了し、その時点で、受益者が確定され、受益者に残余財産が分配されるということですが、税法的には、信託財産が解散し、清算中に受益者に分配されることから信託財産(受託者)側に清算所得課税、受益者側にみなし配当課税(法人課税信託だから、残余財産受益者=株主)という課税関係になるのではないかと思います。従業員の勤務の対価として受けるから給与所得になるという考えもありますが、どうするかは、お上がお決めになるでしょう。

また、信託終了時に債務超過が50万円生じたため、委託者である会社が50万円支払った場合のこの50万円は、従業員に対する給与ではなく、単純損金になるのではないかと思います。

広島ガスの事例は新信託法施行前の案件ですが、新信託法の施行後は上記のようになるのではないかなと思ったわけです。

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