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2008年3月 3日 (月)

社内預金引当信託の社内預金者の課税関係について

社内預金引当信託における社内預金者の課税関係に関して、社団法人信託協会が国税庁に照会を行い、その回答が国税庁のHPに載っています。

社内預金というのは、会社が従業員の給料から天引している預金ですが、通常、利子の一部を補給しているので、一般的な預金よりも利回りが高くなります。

使用者側からみると、この預金を自分の会社で預かって管理をすることもできるのですが、この場合の利子には、下限があるようです(下限利率は年0.5%(5厘)(平成19101日現在))。

でも、使用者である会社が自らの名義で預金を預かっているような場合で、その会社が倒産してしまったときは、せっかくの社内預金もパーになってしまうリスクがあります。これは、まずいでしょということで、この社内預金を保護するために、社内預金相当額について行う信託があります。この信託のことを社内預金引当信託というようです。

この社内預金引当信託(国税のHPで照会されているもの)では、会社が、社内預金の元金額の全部または一部に相当する有価証券を信託します。有価証券だから株式もあるわけで、この場合の議決権の行使は委託者が指図するようです。

また、受益者には2タイプあります。ひとつは、収益受益者です。配当や利息などをもらう権利があり、委託者である会社がなります。もうひとつは、元本受益者です。有価証券の売却代金や償還金、増資割当新株式などをもらう権利があり、社内預金をした従業員が元本受益者となります。ただし、元本受益者は、会社が倒産するような事情が生じるまでは受益権を有さないことになります。

ここで問題になるのが、新信託法をベースにした信託税制での課税関係はどうなるか?とくに、元本受益者について、設定時や会社が倒産等して信託財産を受け取った場合の課税関係がどうなるかです。

信託税制の改正で、信託については、タイプごとに課税関係がかわりますが、この社内預金信託というのは、受益者等課税信託に該当し、信託財産から生ずる所得については、発生時に受益者等に課税されます。

まず、問題となるのが、信託を設定した時点で、元本受益者は、税制上の受益者等に該当するかということです。もし、該当するならば、設定時点で、元本部分について、委託者から利益を受けたとして課税関係が生ずることが考えられます。

しかし、結論として、設定時点で、元本受益者は、税法でいう受益者等には該当しません。

税法でいう受益者等には、受益者とみなし受益者の2タイプあります。

受益者とは、信託設定時点の受益者としての権利を現に有する者ですが、この元本受益者は、会社が倒産等するまで受益権を有しないから、信託設定時には受益権を有しないことになるので受益者にはなりません。

次に、みなし受益者に該当するかどうかですが、みなし受益者に該当するためには、その者に信託を変更する権利+財産の給付を受ける権利がある必要があります。元本受益者は、条件付で財産の給付を受ける権利がありますが、信託の変更をする権利はありません。信託設定時に受益権もないし、特別の規定もないからです。

したがって、元本受益者は、信託設定時に受益者にもみなし受益者にもならないことから受益者等に該当しないので課税関係は生じないということになります。

つまり、会社が倒産するまでは、収益受益者である会社だけが受益者となり、信託財産を会社が所有し、収益も費用も会社に帰属するものとして税金の計算をすることになります。

さて、会社が倒産して、信託財産の給付を従業員が受けた場合、従業員に税金はかかるのでしょうか。これも、結論から言うと税金はかかりません。

従業員は、会社に対して、社内預金を預けたのだからその分のお金を返してくださいという権利を持っています。会社が倒産すると、会社自体から社内預金を返してもらうことは、通常は、できませんよね。社内預金引当信託は、会社の倒産から隔離されているので、会社の倒産にかかわらず、信託財産はキープされています。ですから、従業員は信託財産から預金相当額の支払いうけることになります。つまりこの信託財産からの支払いは、新たな利益の発生ではなく、従業員が持っている社内預金請求権の弁済として支払われるものです。従業員の立場で、仕訳で表現すると、現金×××/社内預金請求権×××となります。ですから、従業員に課税関係は生じません。

この、国税庁のHPには、社内預金引当信託契約書の雛形も掲載されており、これは新信託法ベースのものであり、税法の問題もクリアされているので非常に使える資料ですね♪

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