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2008年4月18日 (金)

外国税額控除の見直しはどうなるのだろう。

平成20年の税制改正大綱で次のようなことが記載されていました。

「外国税額控除制度については、近年のグローバル化に伴い、わが国企業の海外での利益が増加しその多くが海外に留保されわが国に還流されていない状況を勘案し、国際競争力の強化、経済の活性化、適正な二重課税排除、制度の簡素化等の観点から、英米等諸外国の動向も注視しつつ、そのあり方を総合的に検討する。」

 これって、海外で稼いだ利益に対する税金のかけかたを根っこから変えるかどうか考えましょうということで非常に大きな問題なのです。

 日本の会社が稼いだ所得については、いまのところ、日本で稼いだものであれ、外国で稼いだものであれ、全部一つのバスケットに放り込んで、日本で法人税をかけています。

 ただ、外国で稼いだ所得について、その外国でも税金がかけられる場合があります。一つの所得について、2カ国で税金をかけるのは合理的ではないということで、今の課税のシステムでは、外国で払った税金については、日本の法人税を計算する場合に控除しましょうとなっています。

 たとえば、日本の会社がアメリカに支店を持っているとします。そして、その支店で100稼ぎ、アメリカで30法人税が課されたとします。日本の会社だから、この100の所得について日本の法人税が40と計算されますが、アメリカで払った法人税30を控除できるので、支払うのは10となります。

 それでは、日本の会社がアメリカに100%子会社をもらった場合はどうなるのでしょうか。子会社は、日本の会社と別のアメリカの法人だから、子会社で稼いだ所得については、アメリカで法人税は課税されますが、日本では税金はその段階ではかかりません。

それでは、その儲けを配当として日本の親会社に還流した場合はどうなるのか。配当を払う際に、配当に対して源泉税が課税されるケースが多くありますが、アメリカの子会社が日本の親会社に配当を支払った場合は、租税条約で免税されます。

 でも、この配当というのは、アメリカで稼いだ利益からアメリカの法人税を差し引いた残りなんですね。子会社で100の利益が生じ、アメリカで法人税30差し引かれ、70   配当したとします。もし、何も規定がないのなら、この70に日本の法人税等が28課されます。

 支店形態では、日本の法人税は10なのに子会社となると28も法人税がかかるなら、子会社で海外に進出する気がなくなってしまいますよね。

 それではまずいということで、今の日本では、子会社から配当を受け取ったような場合は、外国で払った法人税のうち、配当部分を控除してあげますよというシステムをつくっています。

 上記の例によると、70の配当を受け取った日本法人で、 70の配当にアメリカの法人税30を足して100の所得があるものとして法人税40を算出し、ここからアメリカで払った法人税30を差し引きます。結果として、日本で納める法人税は10となり、支店で進出した場合と同じ法人税の負担となります。

 ところで、この間接税額控除というのは、この例では簡単なのですが、実際には非常にヤヤコシイ。まあ、一度でも経験なさった方ならおわかりになるとおもいますが。

 実は、外国で生じた所得に対する税金の課され方については、この外国税額控除方式だけでなく、国外所得免除方式というのがあります。これを採用しているのは、フランス、スイス、イタリア、ベルギー、オランダ、香港等です。

 どういうものかというと、外国で生じた所得については、その国だけで課税して、自国では課税しませんよというものです。

 たとえば、外国子会社から配当を受け取った場合は、その受け取った配当について、親会社のある国では税金をかけませんよというようなものです。

 で、世界を見渡すと、日本と同じように全世界所得に自国の法人税を課し、外国で払った税金を控除するシステムを採用しているアメリカとイギリスが、この方式をやめて配当免除方式にしようといいだしました。どうやら、ヨーロッパ大陸の国々が国外所得免除方式を使うことによって自国のグローバル企業の競争力を高めているようなので、このままの全世界所得方式を採用すると、競争に負けちゃうかもしれない。それはまずいと思ったからのようです。

 アメリカが何かやりだすと、一生懸命ついていく国 日本です。それならうちもということで、検討をはじめ、それが平成20年の税制改正大綱にあらわれたのではないでしょうか。

 しかし、言うは簡単なのですが、この改正はそう簡単ではない。すでに、国際税務に関しては、タックスヘイブン税制やら移転価格税制やら、税金逃れをする連中を封じ込める規定が精緻に構築されています。これを根っこから見直さないといけない。おまけに、国際税務というのは、日本だけ唯我独尊的に決めることもできない。たとえば、外国との間の租税条約も、外国税額控除を前提に作っているので、これも全部変えないといけない。気が狂うような膨大な作業とごたごたが待ち構えているのです。

 でも、世界がそのトレンドなら日本はやらざるを得ない。さて、アメリカ、イギリスがどうでるか。それで日本の国際税務の未来も確実に決まっていくのでしょう。

 

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コメント

初めまして、毎日とはいかないまでも、定期的に拝見させていただいております。
某大学院と某会計事務所を掛け持ちしているおっさんです。
信託専門とお見受けしておりましたが、外国税額控除にもテリトリーを広げていらっしゃったんですね。
国外所得免税制度の導入は一筋縄でいかないようですね。現行の全世界課税をどう修正していくか、私も注意を払って見守りたいです。

投稿: F&Y | 2008年5月 1日 (木) 15時59分

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