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2009年12月11日 (金)

日本版ESOP 会計と税務の差異

ASBJにいらっしゃった秋葉賢一さんが早稲田大学大学院の教授に華麗に転身され、信託協会の第2回の信託オープンセミナーで「信託と企業会計」についてお話されました。信託240号でその講演録のようなものが掲載されています。

 この中で日本版ESOPの会計上の取扱いについて書かれていらっしゃいます。日本版ESOPとは、最近使われ始めた従業員持株推進制度のひとつです。従業員持株会制度の場合は、持株会がこつこつ自社株を買うのですが、ESOPの場合は、ひとまずまとめて信託なんかに自社株を移転して、それをちまちま持株会に譲渡します。自社株の信託への移転並びに持株会への移転はいずれも時価で行われ、もし信託移転の時価<持株会移転への時価だったら、差額が信託に残り、それは一定の従業員が山分けする。もし信託移転への時価>持株会移転への時価だったら、差額の不足分は、会社が負担するというようなもの。

 このESOPの面白いところは、会社法上の取扱いと会計・税務上の取扱いが基本的には異なる。会社法上、信託がもってる自社株は自己株式ではないけど、会計・税務の世界では、一定の要件を満たす場合は自己株式みたいなものだと解される。

 だったら、会計と税務の処理は同一かなあと思って、この講義録をつらつらつらと読んでいったのですが、どーも差異があるようですね。

 秋葉さんの考える会計処理によると、会社法の世界の自己株式ではないという取扱いと会計の世界でいう自己株式であるという取扱いの中をどちらの顔も立てる形で進めていっているような気がします。

 例をあげると、 A社の自己株式100株(会計上、税務上の簿価200円)を信託に250円で譲渡。信託がこの自己株式のうち50株を160円で譲渡。そして期末がくる。

 会計上は、まず、A社から信託に自己株が移った時点で次の仕訳

  現金 250  自己株 200円

        その他資本剰余金 50円

 この取引は会社法上自己株式の処分だから。

  次に自己株式を持株会に売る処理は、会社とは関係ないから処理はしない。

 期末になると、実は会計上は、A社株式を自分がもっていたものとして取り込むのです。

 たとえば、当初の自己株式の購入資金250を借入金でまかなっていたような場合は

    現金  160  借入金 250

  A社株式  125*  A社株式売却益 35**

  * 250×50/100= 125

**160-250×50%=35

つまり、信託から持株会への売却益は損益として認識するのです。そして、秋葉氏のコメントを引用させていただくと

 決算時、A社株式の売却益について、自分のところで計上するとしても、会社法上は、別に自己株式の処分が生じているわけではありませんから、「その他資本剰余金」は出てこないことになります。実務上誤解している方もいるのですが、会社計算規則上、自分が自己株式を処分していないのにその他資本剰余金が増えることはないということです。これは考えれば当たり前ですが、注意していただく部分と思います。

 それでは税務上はどうなるのか。税務上、A社がESOPの信託スキームで信託を変更する権利を有し、何らかの条件下で信託から財産がもらえるお約束をしていた場合は、A社が受益者とみなして、課税関係を考えよという定めがあります。そして、A社がみなし受益者の要件を満たしている場合は、A社が、信託財産を自分であたかももっているものとみなすのです。

 信託財産自体はA社と別なのだけど、税務上はそう考えない。A社がA社株を持ち続けている、つまり自己株式のまんまだと思うのです。だから、A社株を譲渡して現金が250円入ってきても本支店間取引みたいなものと考えるから税務上仕訳が生じない。A社株式が信託から従業員持株会に移転した時点で自己株式であるA社株式が、A社の手元から第三者に渡される、つまり、この時点で自己株式の処分とされ、この時点で税務上の仕訳は次のようになるのではないか。

信託から持株会にA株式が譲渡された時点での仕訳

 現金 160  自己株式 100

       その他資本剰余金(資本積立金)60

 会計のように、会社法の顔をたて、決めた会計処理の顔をたてというようなものではなく、税務上は、会社法がどうだろうと会計がどうだろうとわが道をいくというふうになっているのではないかなあ。

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