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2010年8月 4日 (水)

年金訴訟 最高裁判決と受益権の複層化への影響

 タイトルのように超ニッチかつディープなことをさくっとメモ代わりに書きます。

 先日の年金訴訟の最高裁で、生命保険の年金払いに関して、相続税と所得税の二重課税はおかしいという判決がおりました。

 もし、この結果が信託受益権の複層化に影響を与えるとどうなるのでしょうか。

信託受益権の複層化とは、たとえば、受益権を収益受益権と元本受益権に分割させることです。信託期間中の利益は収益受益者に、残った財産は元本受益者にいくようなもの。

相続税の評価は、収益受益権を評価して、相続時等の財産の価額から収益受益権を控除して元本受益権を評価します。

受益権が複層化された場合、信託財産から生ずる所得の帰属は誰になるのか条文では定かではありませんが、どうも実務では、収益受益者に帰属するようです。収益受益権は、将来の所得を評価したものと考えると、収益受益権については、相続税と所得税のW課税になります。また、収益受益権というのは、時の経過により収益が実現すると価値が減少していきます。他方、元本受益権というのは、当初は、資産の価値よりも低いですが、収益受益権の価額の減少と反対に価値が徐々に増加していきます。でも、信託終了時に元本受益者が財産を取得した時点で評価益に課税されませんねえ。つまり、現行の複層化においては、収益受益者は、所得税と相続税の二重課税、元本受益者は、収益受益権相当部分の価値の増加に対して所得税も相続税も課せられていない部分があるという異常な状況にあるわけです。

そして、最高裁の判決が下りました。もし、この判決に沿って考えると、収益受益者の二重課税はおかしいということで、おそらく、毎年の所得から収益受益権のうち一定部分を控除するというようなしくみになるでしょう。逆に元本受益者は、お金をもらわなくても価値の増加部分を評価益として認識する必要があるでしょう。

そうなるとどうなるのか。信託財産から生ずる所得の帰属は、実質的には、収益受益者から元本受益者に移っていく事になると思うのです。 

さて、いまの相続税法においては受益者連続型信託に関して独特の課税方法が定められています。つまり、受益権が複層化された場合は、収益受益者が財産全部もっているということで、信託財産から生ずる所得は当然に収益受益者のものとなるのです。

もし、今の状況で、最高裁の判決にしたがって、複層化の制度を構築すると、受益者連続型信託以外の信託の所得の帰属者は、実質的に元本受益者、受益者連続型信託の所得の帰属は収益受益者ということになります。

受益者連続型信託に該当するか否か、境界がファジーな現状で、課税関係が全然異なる合理性はないです。そうなると、受益者連続型信託の課税を廃止するか、収益受益者課税をやめて元本受益者課税に変更するしかない。

それは、ちょっと無理というならば、最高裁の判決を無視して、現行の課税実務の前提のもとに制度を設計しないといけない。でも、この場合は、よほど合理的な理屈を作らないと訴訟敗北リスクを負う事になるだろう。

信託協会さんは、今年も受益権の複層化の税制上の整備を要望にだしていらっしゃるけど、この問題、どのように解決されるのだろう♪

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