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2010年9月22日 (水)

グループ法人税制完全マニュアル

税務の専門月刊誌である税理の9月臨時増刊号は「グループ法人税制完全マニュアル」です。

グループ税制の本や雑誌が非常に売れているらしいです。

が、この雑誌は、類書と際立つ特徴があります。それは、一般的なグループ法人税制の本が、グループ税制の解説+αであり、立法主旨なんかも、基本的には主税局の提供した資料に掲載されていることをなぞっているだけのようなところも多いです。

しかし、この本は、主税局の公表した主旨を記載し、網羅的に理論的に批判をしています。批判するということは、よほど、自分自身の理屈というか理論に自信がないとできないことです。よいしょは、わけがわからなくてもできますが。

これは、著者代表が、かの朝長英樹さんだからできることだろうと思います。

たとえば、今回、法人を頭とする100%支配関係の法人グループで寄付を行った場合(時下以下で物やサービスを提供した場合)、寄付した側では、寄付金の額(時価と対価の差額)が全額、税務上の費用にならず、寄付を受け入れた額では、受け入れ寄付金の額が全額、税務上の収入になりません。そして、この処理だけでなく、寄付をした法人や受け入れた法人の株式を持っている法人において、その保有する株の帳簿価額を利益積立金という勘定を使って増減させます。

なぜ、このような株式の増減処理をするかというと、たとえば、会社の財産をほとんど別のグループ会社に寄付をして、すってんてんになった会社の株を親会社が売却すると、おそらく株式の帳簿価額よりも譲渡対価の方が低いから譲渡損を計上して、所得を圧縮させるというようなことができるのを防ぐためにやるのだそうです。

でも、この株式の増減というのは、実は連結納税制度で既にあるものであり、連結納税の方は、グループ間で税金の計算を1つのバスケットの中で行うことから、支店の譲渡と子会社株式の譲渡が同一課税方法で行われないとおかしくなることから制度設計されたもの。

利益積立金は課税された利益のうち会社内部に留保されたものというコンセプトにより設けられたものだけど、寄付を受け入れた法人の親会社であったからといって、課税済み利益が増えるとは限りません。なのに、なぜ、利益積立金が増加するの? 単に株式の増減の相手勘定、つまり、仮勘定として利益積立金を採用したってこと? それはおかしいのではないかと。そんなことしたら利益積立金がおかしくなって、結果的に租税回避を生み出しませんか? 

というようなことが、ちりばめられているわけです。Q&Aも非常に意義深いのですが、私としては、最初に延々と続く、朝長さんと阿部さん(経団連)と、掛川さん(税理士)の座談会が非常にわかりやすく、面白い。グループ税制を理解しようと思ったら、一読して損はない一冊です。

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