2010年10月29日 (金)

家族間の裁量信託

 久々に信託ねた。

 信託というと信託銀行がやっているものというイメージが強いのですが、実は、誰でも受託者になって信託をすることができます。 だって、基本は、財産を預かって、決められた方法でその財産を分配する行為ですから。

 で、一つの事例を

 あるお金持ちがいました。その人には子どもが2人(A,B)いるのですが、Aは、重い病気で財産管理をすることが難しい。Bは、浪費という重い病気がある。お金持ちのお父さんは、自分が死んだ後の彼らの生活のことが心配でしかたない。生活できるだけのお金を渡したいが、使い込まれても困る。

 そこで、信用のおける親戚に財産を信託し、その財産を彼らの生活の面倒を見て欲しいというようなことを考えました。いくら分配するのかは、決めず、必要性に応じて。

 これって、家族間の行為としてはおかしくないですよね。いくら払うと決めてしまったら、ほんとうに必要なお金を必要なときに使うことができないから。

 だから、このような信託ってニーズはあると思います。実例があるかもしれない。。。

 でも、いくらあげるか分配率が確定していないような信託って、税金のことを考えると頭がいたい。 たとえば、遺言でこのような信託を設定した場合、遺言の効力が生じたとき、つまりお金持ちのお父さんがなくなったとき、A,Bが財産を遺贈でもらったものと税制上は取り扱われるけど、いくらもらうということで評価するのがいいのか。

 1:1でもらったものとして、取り扱ったけど、結果的に 5:1になることだってある。このような場合、予想よりたくさんもらった方が、少なかった方から贈与によりもらったとして取り扱うのが、税制上の筋かもしれないけど、そんなこといわれたら、家族の金のやりとりなんて何もできなくなってしまうしね。

|

2010年10月 8日 (金)

シニア世代のための資産防衛と資産承継

縁があって、昨日、立川で、シニア世代の方向けのセミナーの講師しました。

 セミナーのタイトルは、シニア世代のための資産防衛・資産承継対策 タイトルは凄いですが。

 いいたいことのポイントは、

l         相続税対策よりも相続対策・資産承継対策(誰に何を渡すか)が大事

l         資産承継対策よりも、ご自身の生活のために必要なお金の確保と防衛が大事。

l         そのためには、まず、ご自身の財産の状況や収入や支出の予定を調べてみましょう。

l         そこからすべてが始まります。

 どこにでもあるようなお話の筋でね。

 でも、相続税対策・事業承継対策を脇役にし、ご自身の生活を守るためにどうすればいいのかを主役にしたのが、今回のテーマの幹。 

介護費用は、いろんな事情で、すぐ高額負担になる話、老人ホームの入居金が高いけど、倒産した場合は大変だという話、認知症になった場合にそなえて任意後見人を外部の専門家に頼んだ場合の報酬はどうなっているのか(意外と安いということ)という話、信託を使って資産を守る方法があるけど、受託者が身内の場合でネコババした場合は、どうすればいいの?というようなもの。

 人数が少なかったのが、幸いしたのか、時々、質問を受けながら、進めることができ、セミナーが終わってからも何人かの方から相談をいただき、私って、価値があるのかもしれない(笑)と思ってうれしかったです。

 シニア世代の方の個人的な問題の解決策を考えようというようなセミナーは、大掛かりなものよりも、少人数で、話しやすいようなタイプのものがいいのかもしれませんね。

|

2010年9月14日 (火)

エンディングノート

週刊東洋経済BOOKSの「相続 事業承継 葬儀・墓 超入門」が、ぱっと目に入ったので昨日、購入しました。

相続対策の本はあるのですが、お墓やあお葬式まで書かれているものはあまりありませんね。自分の死後の資産承継には興味があっても、自分の葬式なんて不吉なこと考えたくないもんね。

で、興味を引いたのが エンディングノート この雛形が末尾にあります。

これは、決して、遺言のかわりになるものではないのですが、

項目として 1.プロフィール 2.医療・介護 3.相続財産・管理 4.葬儀・墓 5.大切な人へのメッセージがあります。

最初のプロフィールで、配偶者との思い出というのがあり、最初の出会いはいつで場所はどこか、第一印象はどうだったかなどを記載するところがあります。最初の出会いの日時まできちっと覚えている人ってどのくらいいらっしゃるだろう? 配偶者との思い出のページが多くて、子どもとの思いでのページが少ないのですが、そんなもんかなあ。

このうち、特に価値があるなと思ったのは 2.医療・介護のところ 生きているうちに、病気になったり、ぼけてしまったりした場合に、どうしたいのかについて書くところがあります。

重病の告知について、延命措置を希望するか 臓器提供について、寝たきりや認知症になったときの介護は など 自分自身が判断能力を失ったような状況で決めなければならないことを、事前に決めておき、その証拠を残すということはいいことかもしれません。また、次のページに葬儀など、もしものときに知らせて欲しい人の連絡先 これも大切だと思うのです。死というのはいつやってくるかわからないし、家族だって、本人の人間関係を把握しているわけじゃないですから。

このエンディングノートって、人生の総決算を記録に残すようなものですけど、財産がどれだけあるか白状したら、さっさと死ねと脅かされているような圧力を感じてしまいますね。

自分で買ってきた本なのにいやーな感情を抱くということは、相続対策ですからとワーワー専門家などにいわれる方々も心の中では複雑な感情が交錯しているんだろうなって想像できます。もっと事業承継や相続対策を提案する人は、相手がどういう感情を秘めながら対応しているのか考えないといけないなあ。

|

2010年8月 4日 (水)

年金訴訟 最高裁判決と受益権の複層化への影響

 タイトルのように超ニッチかつディープなことをさくっとメモ代わりに書きます。

 先日の年金訴訟の最高裁で、生命保険の年金払いに関して、相続税と所得税の二重課税はおかしいという判決がおりました。

 もし、この結果が信託受益権の複層化に影響を与えるとどうなるのでしょうか。

信託受益権の複層化とは、たとえば、受益権を収益受益権と元本受益権に分割させることです。信託期間中の利益は収益受益者に、残った財産は元本受益者にいくようなもの。

相続税の評価は、収益受益権を評価して、相続時等の財産の価額から収益受益権を控除して元本受益権を評価します。

受益権が複層化された場合、信託財産から生ずる所得の帰属は誰になるのか条文では定かではありませんが、どうも実務では、収益受益者に帰属するようです。収益受益権は、将来の所得を評価したものと考えると、収益受益権については、相続税と所得税のW課税になります。また、収益受益権というのは、時の経過により収益が実現すると価値が減少していきます。他方、元本受益権というのは、当初は、資産の価値よりも低いですが、収益受益権の価額の減少と反対に価値が徐々に増加していきます。でも、信託終了時に元本受益者が財産を取得した時点で評価益に課税されませんねえ。つまり、現行の複層化においては、収益受益者は、所得税と相続税の二重課税、元本受益者は、収益受益権相当部分の価値の増加に対して所得税も相続税も課せられていない部分があるという異常な状況にあるわけです。

そして、最高裁の判決が下りました。もし、この判決に沿って考えると、収益受益者の二重課税はおかしいということで、おそらく、毎年の所得から収益受益権のうち一定部分を控除するというようなしくみになるでしょう。逆に元本受益者は、お金をもらわなくても価値の増加部分を評価益として認識する必要があるでしょう。

そうなるとどうなるのか。信託財産から生ずる所得の帰属は、実質的には、収益受益者から元本受益者に移っていく事になると思うのです。 

さて、いまの相続税法においては受益者連続型信託に関して独特の課税方法が定められています。つまり、受益権が複層化された場合は、収益受益者が財産全部もっているということで、信託財産から生ずる所得は当然に収益受益者のものとなるのです。

もし、今の状況で、最高裁の判決にしたがって、複層化の制度を構築すると、受益者連続型信託以外の信託の所得の帰属者は、実質的に元本受益者、受益者連続型信託の所得の帰属は収益受益者ということになります。

受益者連続型信託に該当するか否か、境界がファジーな現状で、課税関係が全然異なる合理性はないです。そうなると、受益者連続型信託の課税を廃止するか、収益受益者課税をやめて元本受益者課税に変更するしかない。

それは、ちょっと無理というならば、最高裁の判決を無視して、現行の課税実務の前提のもとに制度を設計しないといけない。でも、この場合は、よほど合理的な理屈を作らないと訴訟敗北リスクを負う事になるだろう。

信託協会さんは、今年も受益権の複層化の税制上の整備を要望にだしていらっしゃるけど、この問題、どのように解決されるのだろう♪

|

2010年6月 8日 (火)

実務解説 遺言執行

 NPO法人 遺言・相続リーガルネットワーク編著の「実務解説 遺言執行」

という本があります。

 相続の本やら相続税の本やらは山のようにあるのですが、遺言執行に特化した本は非常に珍しいようです。ニッチな分野に特化した本が売れているのかなと思って、最後のページをめくったら 平成211118日初版発行で、平成22325日 初版第3刷発行のようです。

 遺言執行者は何をするのかというと、本から引用させていただくと「遺言書に従って遺産を相続する人に実際に財産を移転する作業を行います。」

 遺言執行者が不要なケースも多いのですが、民法で遺言執行者がある場合は、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができないと規定されており、またまた、引用させていただきますと「遺言執行者は、遺言者に成り代わって、遺言者の意思を実現するためにそれを妨げる行為を排除しうる権限を有する者であるから、遺言執行者を指定しておけば、遺言者は安心して自らの意思を遺言に託することができるのである。」だそうです。

 遺言執行者は弁護士や信託銀行だけでなく、税理士だってなることはできます。でも、なってしまえば、責任をもって仕事をしないといけない。何をするのか、どうすればいいのか、どのような問題があるのかということを、豊富な判例等を使って、網羅的に書かれています。

 遺言執行人に就任したら、相続財産を調べあげて相続財産を自分のところで管理する必要があります。たとえば、被相続人の預金の場合、

 

 通帳や届出印鑑等をすべて預かることが重要で、金融機関に対し、遺言執行者の同意がなければ、払い戻し等取引ができないように通知をしておくべきだそうです。

 そして、受遺者に預金債権を引き渡す手続きなのですが、方法としては、預金を解約してお金を渡す方法と、預金の名義変更があり、どちらにするかはケースバイケースです。  

ありがたいなと思うのは、これらの手続きをするために必要な書類が何かが記載されていること、また、遺言執行者の払い戻し請求を銀行に拒否され裁判となった結果、遺言執行者が勝った事例も記載されています。備えあれば憂いなし。

 相続というマーケットは、絶対になくなりはしない。相続関連のビジネスというのは頻繁に生ずるものではないから、実務家にノウハウがたまりにくい。だから、いざビジネスを引き受けるとなると、戸惑いも多いので、このようなニッチな分野に特化した本へのニーズが、概説書よりもあるということなのでしょうね。

| | コメント (0)

2010年1月 5日 (火)

事業承継と信託と税制改正大綱

 平成22年度の税制改正大綱の検討事項として

「非上場株式等の信託を利用した事業承継に係る税制上の措置については、現行の事業承継税制の定着を図る中で、その利用状況や、信託を利用した事業承継の実態及び税制上の措置の必要性等を踏まえ、引き続き検討を行います。」 があります。

 平成21年度の税制改正で一定の非上場株式に係る贈与税や相続税の納税は一定の期間猶予しましょう。また、一定の条件を満たしたら免除しましょう。中小企業が相続税や贈与税の納税のために廃業に追い込まれるのはよくないという考えがあるからだと思います。

この規定は、生の株式を保有しているような場合に限定されていますが、信託を使った場合も使えるようにしましょうというのがこの検討事項の趣旨です。ただ、この辺は平成21年度も議論があったと思うので2年がかり。

条文を何本かポーンと入れたらいいというものではないということはわかります。やっかいな受益者連続型信託の課税の問題、収益、元本という形で分割された場合の課税の問題、議決権指図権の評価の問題などを解決しないと前へ進まないですから。

金融庁の平成22年度の要望で信託受益権の質的分割に係る税制上の所要の措置があったのですが、これは税制改正大綱に盛り込まれませんでした。でも、上記検討事項を解決するためには、受益権の質的分割の税制上の措置も不可欠。

信託大好きおばちゃんは昨年、ときどきこのブログで上記課税上の問題について思いつきを書いていきましたが、いまのところ、収益受益権と元本受益権に分割された場合の受益者連続型信託の現行規定はやめた方がいいと思うのです。おかしな問題がいっぱいおこるのは合理的じゃない規定だから。だから、収益受益権と元本受益権に分割された場合の課税関係は受益者連続か否かで区別しないのがいい。そして、その規定の上に納税猶予を乗っけたらどうなるかと考えた方がいいように思うのですが♪

| | コメント (0)

2009年11月27日 (金)

受益者連続型信託の悪口

 今日は晴れ、非常にニッチな受益者連続型信託の悪口をまたもや書きます。

受益者連続型信託というのは、なんらかの原因で、受益者が次々と変わるような信託です。

この受益権が収益受益権と元本受益権に分割された場合の取扱いが不思議なのは何度もかいてます。

すなわち、個人が収益受益者であるような場合は、収益受益者が財産全部を取得したものとみなして相続税や贈与税が計算されるのです。

だから、個人Aが収益受益者で、個人Bが元本受益者の場合、元本受益者の個人Bは元本受益権をもらったときの相続税や贈与税の課税価格は0となります。

ところが、法人が収益受益者であるような場合は、個人の元本受益者が元本受益権を個人がから引き受けた場合の相続税や贈与税の課税価格は0とならないのですね。何らかの方法で元本受益権を計算する。なぜ、そうなるのか? なぞです。

じゃ、個人が収益受益者で、法人が元本受益者の場合はどうなるのか、個人の収益受益者はどうも、財産全部をもらったものとみなして相続税や贈与税が課されるみたい。これおかしいよね。だって、法人は元本受益権を受け取った時点で、法人税の世界で税金が課されるから、結局、元本受益権相当額について、個人で相続税か贈与税が課されて、法人税も課される。2重課税の調整がない。

おわびのしるしみたいに、個人が収益受益者で、その個人が元本受益権を持つ法人の株主であり、その法人の株式を純資産で評価する場合は、元本受益権の価値を0とするという規定があるけど、とってつけたみたい。

そんでもって、収益受益者がたとえば、個人→法人→個人と移転し、元本受益者が個人→個人→個人というふうに移転するとなんとも不思議な課税関係がおこるのです。

事例を書くと 伊右門が、遺言信託をしたが受益者は次のように移っていった

当初  5年後 10年後 15年後 20年後 25年後

収益受益者  太郎       鶴亀会社     五郎

元本受益者  次郎   三郎       四郎      六郎

課税関係はどうなるか

当初  太郎 財産全部受け取るとして相続税課税  次郎 相続税課税なし

5年後 三郎 相続税評価なし 収益受益者が太郎だから

10年後 鶴亀会社が太郎から収益受益権をゲット たぶん、収益受益権をただでもらったものとして課税するのではないか。そうすると、太郎に所得税課税(収益受益権を時価で譲渡) 鶴亀会社に法人税課税(収益受益権を時価で受け取る)

15年後 四郎 相続税評価あり 収益益受益者が鶴亀会社だから。 元本受益権を評価して計算するのでしょう。

20年後 五郎が鶴亀会社から収益受益権をゲット たぶん、収益受益権をただでもらったものとして課税するのではないか。そうすると、 鶴亀会社に法人税課税(収益受益権を時価で渡した)五郎に所得税課税(収益受益権を時価でもらった)

25年後 六郎 相続税評価なし 収益受益者が五郎だから。

これ、すごく変なのですね。元本受益権が転々と移転しているだけなのに、収益受益者が法人か個人かで元本受益権を受け取る個人の課税関係が全然変わってしまう。

また、個人→法人→法人間で収益受益権が移転する場合の課税価格というのは、おそらく収益受益権をベースに算定されるのではないか。 他方、個人→個人の場合だったら、収益受益権の移転でも全部の財産が移転するものとして計算される。税金の種類が違うといっても、資産の移転に着目してかかる税金ということではかわらないでしょ。それなのに、なんでこんな変な課税関係をつくったのかなあ♪

| | コメント (0)

2009年10月28日 (水)

受益者連続改造計画 メビウス

 やー 昨日の日経の夕刊のタイトル「住友信託・中央三井が統合 11年春めど、信託トップに」をみて へーっと思った一人です。コメントといっても。。。。。。

昨日のブログのタイトル「ビールが値上がりしたら発泡酒を飲むか」を住友信託と中央三井の統合にあてはめるとどのようになるのかと10分ぐらい考えましたが、まったく答えが浮かびませんでした。そんな信託大好きおばちゃんはあほか否か。

というわけで、久しぶりの受益者連続改造計画という、非常にニッチなネタを書きます。

 信託のいいところは、資産を信託すると受益権という形に化け、この受益権はいろんな形で切り分けることができます。切り分け方のうち、信託独特といわれるのが、収益受益権と元本受益権に切り分ける方法です。

収益受益権と元本受益権に分けた信託に対する相続税・贈与税の課税のされ方は2タイプあって、ひとつは、信託発生時に、収益受益権も元本受益権ももらったとして課税するタイプ、もうひとつは、受益者が次々かわるようなタイプすなわち受益者連続型信託といわれるようなものなのですが、これは、個人が収益受益者の場合は収益受益者がみんなもっている、つまり、元本受益者は信託期間においては0として課税するタイプです。ちなみに、法人が収益受益者で個人が元本受益者の場合は、個人は0とならない。なぜか、それはなぞです。

さて、信託する財産に制限はありません。なんだってできます。取引所の相場のない株式だって信託できます。ただ、収益受益権と元本受益権に分けた場合はいろいろとおかしな問題が生ずるようですね。それはなぜか? 大きな原因は2つあると思います。

ひとつは、資産の価値というのは、一物一価であるはずなのに、取引所の相場のない株式に関しては、取得者がオーナー一族の一定のメンバーか否かで全然違うこと。もうひとつは株式独特のパワーである議決権というものの価値が0であるということです。一般的な株の場合は、議決権や配当請求権や残余財産請求権がワンパックだから議決権がどうだろうとあんまし重要でないかもしれませんが、信託の場合は議決権を誰が持つか自由に決めれるからね。

この辺の問題を理解した上で、収益受益権と元本受益権に分割された信託の問題をどう解決すればいいのかを、思いつきベースで考えました。

Ⅰ 信託受益権の財産評価方法を変える。

収益受益権と元本受益権に分けた場合の財産評価の方法は簡単に書くと次にようになっています。

収益受益権  将来、信託から生ずるであろう利益を予想して現在価値に割り戻した金額

元本受益権  課税時期での資産の価額 ― 収益受益権の額

この課税時期での資産の価額ですが、取引所の相場のない株式を信託し、収益受益権と元本受益権に分割された場合は、原則的評価方法(純資産とか類似業種比準)で統一する。その方が、合理的なんですよね。算式から考えても。

Ⅱ 受益者連続型信託以外の信託の場合、元本受益者に関しては、一定の要件のもと財産をもらう時期まで相続税・贈与税を納税猶予する。

元本受益権の評価は、昔は、財産をもらう時期の価額を現在価値で割り戻すという方法だったけど、この場合には大きな節税ができるということで、いまのような形になりました。

でも、元本受益者にとって、財産をもらうのは将来なのに課税だけ先というのは、担税力から考えても合理的じゃない。そこで、一定の要件のもとに、納税猶予制度を作っていれる。この一定の要件をどうするかは、深く考えていません。

Ⅲ 受益者連続型信託の場合、 収益受益者に関して、一定の要件のもとに一定の部分に対応する相続税・贈与税を納税猶予する。

 いまの税制というのは、受益者連続になってしまうと、信託期間中は収益受益者が財産全部をもっているものとして課税されるシステムになっています。たとえ、もらう財産がちょっぴりでもね。これは不合理。また、株式を信託し、議決権は元本受益者が握っているのに、収益受益者が財産をもっているとして課税するのも不合理。

今回考えたのは、とりあえず収益受益者が全部持っているものとする。たとえ、その者が会社にとってプチ株主であっても原則的評価方法で評価する。ただし、一定の要件を満たす場合は、一定の部分を納税猶予する。

ただ、この方法だと、議決権を元本所有者が持っているような場合、元本所有者の変更時に課税されないのですね。実質的には、信託された株は元本所有者が持っているようなものなのにね。だったら、収益受益者の納税猶予部分を元本所有者が議決権をもっている様な場合は徴収するということも考えられないか。

P.S そろそろ、寒い季節が近づいてきましたぁ。こんな季節には、ウィンドブレーカーがいいのですけどねぇ ○○さん♪

| | コメント (0)

2009年10月14日 (水)

事業承継における信託の利用

 「東京税理士界」という税理士のうち東京税理士会に所属している方たちに毎月送られる機関誌の10月1日号VolN0633で 大崎史雄税理士が「事業承継における信託の活用」をお書きになられていらっしゃいます。

 これは、今年の4月の日本税務会計学会月次研究会の発表を文書化されたものであり、この発表は私も拝聴させていただきました。

 ここで書かれているのは、事業承継において信託がどのように利用できるかということと活用へ向けての課題のようなものですが、ベースとなるのは、昨年公表された、中小企業庁の信託を活用した中小企業の事業承継円滑化に関する研究会の報告書です。

 今年の税制改正で自社株の贈与税・相続税の納税猶予が可能となりましたが、これに信託した自社株も含められるかどうかは、改正には盛り込まれませんでした。

 それは、信託とツールが非常に柔軟であることから、きちっとした枠組みをつくらないとおかしなことがおこるかもしれないと思っていたからでしょうね。

 大崎さんは自社株納税猶予の要件として、

 信託を活用した場合、納税猶予制度の要件をどのように判定するのかについては、株主名簿に加えて受託者側に証明義務を課すことになると考える。

 信託の計算書の納税猶予バージョンを作るということかな。

 議決権行使の問題

 信託の場合、議決権行使を誰がするか、自由に決めることができます。非上場会社を信託財産とする受益権を複数の受益者が有し、議決権が差別的に配分されても、会社法上109条2項により問題がないとされています。でも、この条文をもとに、なぜ、受益者ではない委託者が議決権を保持し続けるのがOKなのかということは、つながらないのではないかなと思います。持株解消信託のようなものがでてきているので、会社法上もOKと考えられているのでしょうけど、その根拠がいまいちわかりません。

信託受益権の評価

 これは、私自身の考えを述べさせていただきますが、将来受けるべき利益の額の合理性ってどうやってはじきだせばいいのかなという問題点があります。配当還元のように過去の実績で評価するというように収益受益権の評価は、財産評価通達において定められていませんよね。

それから、この利益の額は税前の数値か、税引き後の数値かという問題点もあります。というのも収益受益権と元本受益権に受益権が分割され場合、信託期間の所得の帰属が収益受益者なのか元本受益者なのかわからないから。収益受益者なら税前でしょうね。元本受益者なら、収益受益者が受けるのは課税済み所得だから税引き後で評価しないとおかしいのではないかと。

租税回避を払拭するための要件整備

これは、大崎さんのご意見を引用

法定相続人間の付与等一定数の受益権発行に留め、目的を超えた受益権の細分化、あるいは受益者が特定できない信託とならないよう設計する

なるほどね。

種類株式の脱法的な手段とならないように手続きの透明性等を図るといった手続きが必要

この手続きとは、具体的には何をイメージしていらっしゃるのだろう?

というようなことを思いながら読ませていただきました♪

| | コメント (0)

2009年8月25日 (火)

非上場会社の株式の本質は、受益者連続型信託の問題

株式会社は誰のものと考えると、それは、株主のものです。社長はえらいといっても、株式会社で営むお金儲けの責任者のようなものですが、社長が誰かを選ぶのは、取締役会があるならば、取締役会であり、取締役会のメンバーを誰が選ぶのかというと、株主です。

株主は、どういう人たちかというと、会社にお金を出資している人たちです。この人たちは 事業がうまくいって、投資したお金が太ってくれることを望んでます。お金を貸したら、お約束で、相手が赤字だろうが利息はもらえます。でも株式を投資した人の場合は、赤字の場合はもらえません。 会社が解散した場合、残った財産を、お金を貸した人と、お金を出資した人で、わけわけしますが、優先順位は、まずお金を貸した人であり、出資した人は後回しです。 こんな感じで、株主は、お金を出資してもあんまり経済的メリットはないことが多い。でも、お金を貸した人と決定的に違うことがあるのです。それは、お金を出資した人は、通常は、会社の経営にいちゃもんをつける権利です。このいちゃもんの種類はいろいろありますが、一番大きなパワーは、取締役を選んだり、首にしたりする権利でしょうね。人間の集団の世界で一番のパワーは人事権ですから。

さて、非上場会社です。出資した人にとって、投資したお金をどのようにして回収するのかが重要です。上場会社なら、市場で売却することによりいつでも回収できます。しかし、非上場会社というのは、市場で売買できないことから、投下資本の回収が難しい。だから、お金儲けの手段として非上場会社に投資するのはちょっとねです。じゃなんで非上場会社の株式を持ってるの? それは、その会社を経営するために必要だからであり、経営はしたくないけど義理か義務で持たされているというのもありますね。

このような非上場会社の株式の評価はどう考えるのでしょうか。市場では取引されませんが、欲しい人もいれば、売りたい人もいる。専門書を読めば、いろんな手法が紹介されています。それでは、税法上、というより相続税の世界ではどう考えるか。これは、もっている人が、その会社にとって、オーナー一族のメンバーか否かで異なります。オーナー一族のメンバーの場合、通常は、その会社の株式は、純資産価値や、その会社と同種の上場会社の利益、配当、純資産をベースにした価値などで計算します。オーナー一族以外のメンバーは、配当利回りをベースにした価値で計算します。

なぜ、一物二価なの? というと、オーナー一族が株を持っているのは、株主権を行使して会社を支配できるため、つまり、経営支配の対価であり、これは会社の資産をもっているようなものと考えるから、オーナー一族以外は、経営をコントロールなんてできず、株を持っているメリットは配当をくれるからだと思います。

株式の価値というのは、上記にも書いているのですが、3つあり、配当をもらえる権利、残余財産をもらえる権利、経営を支配できる権利です。 非上場会社のオーナーが株式を持つのは、配当をもらうためでもなく、継続前提なら売却も考えられず、残余財産をもらうためでもなく、経営支配できる権利があるからです。経営支配できる権利というのは株主総会の議決権です。つまり、非上場会社のオーナー一族の評価額(純資産など)は、議決権の対価と考えられるのです。

さて、信託の方にうつりますが、株式を信託した場合、株式の名義は受託者となりますが、議決権指図権は信託契約で誰にするかを決めることができます。受益者連続型信託といって、次々の何らかの要因で受益者が移転するような信託で、受益権が元本受益権と収益受益権に分割されている場合は、信託期間中は収益受益権者が株式を全部持っているとして評価し、元本受益者の評価は0とするとされています。たとえ、元本受益者が議決権指図権を持っていてもです。これって、非上場会社の株式のように目にみえる経済的価値よりも目に見えない経営支配価値がすべてのようなものにフォーカスあてると異常ですよね。

本質的に資産の持つ価値を有している人が財産をもっているものとして課税するのが合理的だと思うので、少なくとも相続税法上純資産価値等で評価される人が議決権も有しているならば、その人が財産を持っているとした方がいいのではないかなぁ。

では、議決権の内容をわけわけして、複数の者が別々の議決権を持っている場合はどう考えるのか。その場合は、議決権をもっている人が均等に株式をもっているという考えもありますが、議決権の中の議決権が取締役の選解任権であるならば、その権利をもっている人が株式をもっているというように整理するというほうが本質をついているのではないかなあ。

また、議決権指図権を受益者以外の者が持っているというケースも必ずあると思うのです。このような異常な行為をするのは、節税目的が多いので、この場合は、議決権指図権を持っている人が受益権をもっていなくても株式は持っているものとして課税する。

ただ、このようにがちがちに設計していくと、誰も信託を使わなくなり、望ましいものではない。また、がちがちにしても、信託はやわらかい仕組みだから、すぐ穴を見つけられてしまう。

そこで、払いすぎた税金を還付する制度を取り入れ、もらう人にもらえる分だけ税金を払ってもらうあたりまえの形にもっていくというのがあるべき姿なのではないかと。そうすることにより、使い勝手が向上し、おかしなことを考える人が減るのではないかと思うのですけど。

| | コメント (0)

より以前の記事一覧