1.利益参加型参加型社債は日本で発行できるか
利益参加型社債というのは、会社の利益に応じて支払われる利子が異なる社債のことです。この利子については確定した利子プラス利益が出たときは追加で利子を支払うタイプのものがスタンダードですが、利子の最低保証がなく、利益が出た場合は支払うようなものや、確定利率にたとえば売上高に一定の指数を乗じた利子をプラスするものもあります(注1)。
この利益参加型社債が日本で発行されるかどうかについては肯定説と否定説があります。争点のひとつとして会社法676条で募集社債の利率を定めなければならないとされているのは、否定説によると利率が確定していることを定めているのだから利益参加型社債を認めないととられますが、肯定説によると通常社債が確定利付であることを予想したからであり、利息とともに剰余金を分配することを妨げるものではないとされています(注2)。
ただ日本では利益参加型社債が発行されたという事例をほとんど聞きません(注3)。なぜ日本では、発行されないかというと、利益参加型社債が会社法(旧商法)で発行できるかどうか明らかでないこと、そして支払われる利息が利子所得なのか配当所得なのかが明確でないことに起因します。
2.利子所得と配当所得で税務上の取り扱いはどう違うのか
それでは、利子所得と配当所得で課税上の取り扱いがどのように違うのでしょうか。
①支払側
支払側では、利子の場合は、支払われた利子は、税金の計算上費用(損金)となります。しかし配当に関しては、損金となりません。なぜ利子は損金となるかというと、事業で利益を得るためにはお金が必要であり、利息は、お金を調達するために必要な費用、つまり利益を得るために必要な費用だからと考えます。一方配当というのは、事業で利益を得るために必要な費用というよりも、結果的に利益が出た場合に、利益の一部を分配するものであると考えるから費用とならないと考えます。
②受取側
受取側では、利子か配当かで、また受取者が法人が個人かで差がでます。
(1)利子の場合
利子の受取者が法人の場合は、源泉税が20%差し引かれますが、利子収入は他の所得と同じように法人税が課税され、源泉税は精算されます。
受取者が個人の場合は、源泉税が20%差し引かれその段階で課税関係は終了します。
(2)配当の場合
配当の受取者が法人である場合は、受取配当の益金不算入という制度があります。これは受取った配当の全部または一部が税金の計算上収入(益金)とならないものです。もし法人段階で受取配当に課税すると、配当支払い法人で法人税が課せられ、受取法人でも同じ配当に法人税が課されるので合理的ではないからです。
受取人が個人の場合は、配当所得として、原則として他の所得と合算され、超過累進税率により課税されますが、配当控除により税金の一部が減額されます。これも、支払い法人の段階で課税された所得に対して個人段階でも課税されるのは合理的でないという考えに基づいています。
なお個人が受取る上場会社の株式の配当に関しては、所有割合が5%未満ならば平成20年3月末までは、配当所得に10%の源泉税を納めるだけで課税関係は終了できます。
3.会社法の施行とハイブリッドな種類株式の登場
社債と株式の違いのメルクマールとして次のようなものがあります。
経営参加の有無、剰余金の配当であるか、利息の支払いであるか、残余財産分配における優劣、償還性の有無(注4)
つまり経営に参加できるのが株式であり、そうでないのが社債である。剰余金の配当をするのが株式であり利息の支払いをするのが社債である。残余財産の分配で株式より優先されるのが社債であり、償還期限があるのが社債であり、ないのが株式であるということです。
しかし会社法の施行により多様な種類株式の発行が可能となりました。議決権の全くない株式も発行できるし、劣後債も発行できるし、取得条項付株式のように償還が予定される株式も発行できます。
つまり社債とほとんどかわらないような株式の発行が可能になったのです。
利益参加型社債と同じような種類株式の発行は可能です。そして利子も配当も資本コストという点では変わりません。にもかかわらず税制上は異なる取り扱いがなされるというのは不合理で、当然この不合理な点をついて租税回避スキームも考えられるわけです。
4.利益参加型社債の利子は利子所得か配当所得か。
利益参加型社債の利子は、現状では、原則的には利子所得になると考えます。あくまでも発行しているのは社債であり、社債の利子は利子所得とされているからです(所得税法23条)。利益参加型社債の利子の利率の変動性に問題があるのならば、公定歩合により変動する利子も問題でしょう。
でも次のような事例でも利益参加型社債の利子を利子所得とできるのでしょうか。
たとえば会社で税引前利益の全部を社債の利子とすると利益参加型社債を個人に発行し、税引前利益が1億円だったとします。
利益参加型社債を発行した場合
会社側は 利益が0だから 法人税は0 個人側は、2,000万円の税金(1億円×20%)となり、合計2,000万円の税金です。
もし配当を支払った場合(実効税率 法人40% 個人 50%の場合、配当控除は5%とする)
会社側は 4,000万円 (1億円×40%)
個人側は 2,700万円(6,000×50%- 6,000万円×5%)
こちらは合計6,700万円の税金です。
このように税金に差がでるので、特に経営のコントロールしやすい同族会社では利益参加型社債を発行したいというニーズがあると思います。ただこのような極端な事例の場合は、同族会社行為計算の否認を使って、取引を否定するのではないかと思います。
同族会社行為計算の否認というのは、あくまでも事実認定に基づいて行うものであるから、頻繁に使えるものではありませんし、使うべきものでもありません。課税関係がはっきりせず、もしかしたら否認されるかもしれないというリスクがあるならば社債の発行は控えられます。これは経済的には望ましい状況とは思えません。
アメリカでは、1990年ごろ、debtとequityの課税関係に関する見直す動き(支払利息の損金不算入)があるようです(注5)。
日本においても今後、種類株式の増加や利益参加型社債の発行が行われ、debtとequityの差のない金融商品が広まるのは予想されます。これは資金の出し手のニーズに応えるためであり、資金の出し手が、躊躇するような課税関係であるならば、資金も出せないから、経済も活性化されません。経済の活性化のためには利子や配当の本質を見極めた合理的な課税関係を速やかに構築することが必要ではないかと考えます。
注1 渡辺裕泰 『ファイナンス課税』有斐閣 P172~P173
注2 藤井俊雄 『利益参加社債の適法性』ジュリスト増刊 『商法の争点1』P196
注3 渡辺裕泰 『ファイナンス課税』有斐閣P174~p175によると、昭和34年 関東電気工事が利益参加型社債を発行を計画したようですが、税務上の取り扱いが明らかでなく、受託銀行による理解が得られないので発行を断念したそうです。また2004年10月に、ある持株会社が利益参加型社債を国内で初めて発行したようですが、私募債なので未確認だそうです。
注4 日本銀行金融研究所『デッドとエクイティに関する法原理についての研究会報告書』(金融研究20巻3号1ページ、2001)
注5 渡辺裕泰 『ファイナンス課税』有斐閣P175