2010年4月14日 (水)

大杉さんの経済教室

今朝の日経の経済教室は大杉謙一さんの「株主軽視 是正こそ急務」です。

民主党の会社法改正案を結構、コテンパンに批判していらっしゃいます。

あのブログの挨拶からは想像できないなぁ。

民主党が考えている会社法改正案というか公開会社法構想って、これからの日本の将来に本当に価値のあるものなのかなあ。

日本においては、株主と従業員の利益を比較すると従業員の利益に株主の利益が劣後している傾向があり、それが問題なのに、公開会社法はその問題を大きくする可能性があるのではないか。

それは、たとえば、従業員代表監査役。 引用すると「日本企業の業績がなかなか改善しない原因のひとつは、会社経営に特定の従業員集団の利益が強く反映しすぎていること」だからこれを是正しないといけないのに、従業員代表監査役って、従業員の利益代表でしょ。

また、親子会社法制は、親会社が子会社の損害賠償責任を負うことが定められるようですが、この法制度を使っているドイツではあまり効果的ではないとされているようです。それより投資家保護に力をいれている。

 投資家保護というと、日本では友好的TOBが一般投資家に不利なものらしいので、欧米のようなTOBルールを作るべきであり、こちらの方が親子会社法制よりも優先度が高い。

 「冷静な「仕分け」が必要である」で締めくくられています。

わたしは、公開会社法に関してはまったく知識がないのですが、なぜ、唐突にという思いはありますね。

あと、大杉さんは会社経営に問題のある例として西武鉄道やライブドアの不祥事をあげられ、そのの原因は監査人の経営からの独立性が不十分ということですけど、ライブドアはともかく、西武鉄道が問題だったのは、おぼろげな記憶をたどると有価証券報告書の株式数の記載のところであり、そこは、監査人の責任の範囲外ではなかったかなあ。だから監査人は訴えられなかったような気がするけど。

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2009年6月 4日 (木)

資本剰余金からの配当

今朝の日経の投資財務面に「資本剰余金で配当 広がる」という記事があります。

 資本剰余金からの配当って何? 配当っていうのは、一般的には、会社が利益を稼いで税金を差し引いた残りから支払われるもの、つまり利益のおこぼれを株主に支払うものです。

 この資本剰余金の配当というのは、利益からではなく株主が拠出した資本を払い戻すのですが、これを元本の払い戻しとせず、配当だよというようなものです。

 高額の利回り約束するからお金を貸してよといわれ、欲の皮でべっとりしたおやじが会社に貸したら、ほんとうに高額の配当が払われてたので大喜び。ところがしばらくすると、貸した会社が倒産した。蛸配当だったから、

注 蛸配当とは、ウィキペディアによると、株式会社等が本来分配可能なだけの額の剰余金(配当するべき利益)がないにもかかわらず、粉飾決算などによって見かけ上分配可能額(配当可能利益)があるように見せかけるなどして、出資者である株主へ過大な剰余金の配当をする行為をいう。

蛸配当は違法ですけど、蛸配当と本質的には同じようなもの つまり元本の払い戻しを配当だよという行為は会社法でオーソライズされています。ですから、公明正大にできます。コンプライアンスにうるさい一部上場企業だってできます。

インド子会社投資がうまくいってない第一三共は今期、大赤字ですが配当をされるようです。これが資本剰余金からの配当

決算短信の単体の純資産の部の一部(H21.3.31)は次のとおり 

資本剰余金            (単位M円)

資本準備金       179,858

その他資本剰余金    767,903

資本剰余金合計     947,761

利益剰余金

その他利益剰余金

固定資産圧縮積立金    1,862

繰越利益剰余金    △254,232

利益剰余金合計    △252,370

利益剰余金がぼろぼろだから、ここから配当が払えないので、その他資本剰余金から払われるようで、

1株あたり 40.00

配当金総額 28,157M

その他資本剰余金が767,903M円あるから払えるのですが、何もそこまでして払わなくても、

ちなみに資本剰余金からの配当というのは、本質的には元本の払い戻しだから、配当じゃないので源泉税を徴収すべきじゃないと考えそうですが、税法的には、一部は利益からの払い戻しとして源泉税の対象としています。もし、全部元本の払い戻しだぁとしちゃうと、源泉がなされない分だけメリットがあるので、配当じゃなく資本の払い戻しをしようと考える会社がいっぱいでてくるかもしれない。そうなると税収が減るからじゃないのかなあ

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2008年10月 3日 (金)

おおすぎせんせいの「会社法の誕生と波紋」

 おおすぎブログでおなじみの大杉謙一教授が、ご自身のブログで日本評論社の法律時報10月号の特集「会社法のいま」の宣伝をなさっていらっしゃったので、はじめて、法律時報なる雑誌を購入しました。

 おおすぎせんせいはこの特集の中で、「会社法と誕生と波紋」というテーマでお書きになっていらっしゃいます。

 時系列に会社法制定までの流れというか、いろんな利害関係者の方とのバトルがあったんだろうなということが淡々とした記述の中から読み取れますねえ。

 日本の会社法はアメリカの会社法の流れを受け継がれているもので、事前規制よりも事後救済を重視しているけど、アメリカの会社法のように包括的な救済規定がなく、個別的で、弱いものが救済されない可能性があるからこれをどうすればいいのかということなども触れていらっしゃいます。

 また、結びに代えてで誰のための会社法かということで、ブルドックソースの敵対的買収を例をあげられて、海外投資家がこの事件の後、日本に嫌気を指し、日本株売りに転じたことに見過ごせない真相が含まれているとお書きです。

日本人は、同じ髪の色をした同じ言語をしゃべる人たちの間だけの利害調整を考え、丸く収まれば一件落着と思っているけど、そんな江戸時代的感覚では、これからはだめでしょう。利害関係者の中には、外国人投資家も当然含まれるわけであり、そんな彼らの利害も考えて対応しないといけない。そのために外国の法律の翻訳輸入だけでなく、自国の法律の翻訳輸出も必要ではないかと。

ちなみに、おおすぎさんも委員として参加されている企業価値研究会の平成20630日に「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策のあり方」においては、ブルドックソース問題の批判等を踏まえて、買収者にお金を払っちゃいけない! 株主総会の決議さえ通ればいいってもんじゃないよ!というような意見を公表していらっしゃいます。

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2008年7月 7日 (月)

消費者にやさしい民法改正

 今日は77日 七夕の日♪ 東京は、今(7時前)現在、雨模様ですね。

 今朝の日経の法務面は「「債権法」改正 消費者保護も配慮へ 法務省参与内田貴氏に焦点を聞く」です。

 民法が110年ぶりに改正されるそうです。といっても、民法は守備範囲がとっても広いので、主として債権法のあたりのようですが。

 内田貴氏といえば、民法の本が有名ですよねえ。信託大好きおばちゃんが大阪から東京へ引越ししたときも、内田本は持ってきました。

 東大教授だった内田さんが法務省の参与になられて民法の改正に実質的に取り組まれていらっしゃるようです。

 この債権法改正のキーは、一般市民が遭遇するかもしれないトラブルの解決に役立つ民法ではないかな。

 記事を読んでへーっと思ったは、現行民法は短期間に完成度の高い法典をつくるという政治的要請のもとで作られたものだったことです。

 原理原則だけ決めて、とっても抽象的。だから、条文だけ読んでも、どうしていいかわからない。

 内田さんが目指しているのは、条文を読んで、すっと理解できて、当事者の力関係や情報の非対称性を考慮して、弱者(消費者)にやさしい民法のようです。

 条文を読んで、そこでわかるというようなものを作ると、条文数が激増するのでしょうね。現在の条文数は1044. 記事によると20世紀に作られたオランダの民法は5,000条ほどなので、相当なボリュームになるのかもしれませんね。

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2007年11月 5日 (月)

またまた、日興△株式交換のなぞ 

どういうお話かというと、日興とシティが三角株式交換をするのですが、日興コーディアル証券の株主が受け取るシティ株式に端数が生じた場合に日興の株主は現金をもらうことになるのです。

このように現金の授受があるような場合、原則的には、日興コーディアル社においては株主が変わるだけなのに、会社が所有している資産などを時価評価して評価益がある場合はその部分に税金を課されるリスクがあります。でも、例外に該当する場合は、このようなリスクが生じないのです。

今回の日興とシティの三角株式交換において、日興株主が端数株式の替わりにお金をもらう場合は、税金のリスクがあるかどうかということが論点です。

KRPさん:

「T&Amaster」10月22日号にも記事がありますね。法人税基本通達1-4-2には、「株式交換完全親法人」等の三角株式交換や三角合併を想定した文言がないことから、一部の方が懸念されているみたいですし、実際に契約書の文言によってはまずいようだとあります。

為ご参考。

信託大好きおばちゃん 

KRPさん。ありがとうございます。 で、うーんとうなって、商事法務No1812を持って美容院に出かけていき、髪をいじってもらっている間、太田洋弁護士の「三角合併等対応税制とM&A実務への影響」を読んでいました。2時間くらいぼーっとするのもなんでしたので。

株式交換により、完全子法人となる予定の会社の旧株主は、完全親法人となる会社の株式を受け取ることになります。株式交換時に端数が生ずる場合は、その端数部分をまとめて競売して、代金を旧株主に支払わなければならないという規定が会社法にあります。でも、三角株式交換により完全親法人の親法人である外国会社の株式の交付を受ける際に生ずる端数に関しては、この会社法の規定の適用がないのです。

法人税法の解釈通達である1-4-2は、株式交換により端数が生じたことにより現金を受け取っても、原則的には、上記課税リスクはないといっています。でも、この通達は会社法の規定による端数の処理を前提に作っており、三角株式交換で外国会社の株に端数が生ずる場合なんて書かれていない。だから、三角株式交換の場合は駄目じゃないかと考える人もいたということでしょう。

この問題に対する回答のようなものが、上記太田論文(商事法務No1812 56頁)に記載されており、引用させていただくと

「課税当局は、合併契約書に交付される現金が端数調整分であることが明記されることなど一定の要件が充足されることを前提として、その部分について現金その他の財産が交付されることの一事をもっては税制適格該当性を否定しないとの柔軟な運用で望む方針のようである。」

ということだそうです。

ところで、113日の日経新聞に「シティ株低迷 三角合併に影」という記事があります。サブプライム問題でシティは大損失を計上し、プリンスとかいうエライさんがやめるみたいですが、株価も下がり気味。もしシティの株価が一定以下になると、日興コーディアルの株主がもらえるシティ株が目減りするようですし、平均株価が26ドルを下回ると、日興側に株式交換契約を解除できる権利が発生し、三角株式交換が破談になる可能性があるようです。

税制の問題より、こっちの方が気になります。さて、どうなりますか♪

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2007年11月 1日 (木)

ごめんなさい。GCAは、株式交換ではなく、株式移転です!

 プレスリリースがでました。 私の記事の読み間違いですね。あいかわらず馬鹿ぶりを発揮しております。

   (一部、11/1 11時過ぎに修正を加え、削除をしております。)                                  

プレスリリースのパワーポイントから推定して書きますと、

(1)       現在、GCAホールディングスはマザーズに上場していて、GCA役職員と個人、機関投資家が株主となっている。 アメリカにGCAと同じようなM&Aの助言をしているサヴィアンLLCでありこちらにも出資者がいる。

(2)       サヴィアン出資者が現物出資してサヴィアンINCをつくり、サヴィアンINCの持分を現物出資して日本に株式会社を作る。これがサヴィアン株式会社。

(3)       GCAホールディングスとサヴィアン株式会社の株式を共同で株式移転して、GCAサヴィアングループという株式会社を作る。

(4)       この会社を東証マザーズへ上場させる。 そして、GCAホールディングスの株主、サヴィアン株式会社の株主にGCAサヴィアングループの株式を渡す。

 株式交換は、既存の会社の株式を100%子会社となる会社の株主に渡すものですが、株式移転は、新たに作った会社の株式を渡すものです。

アメリカの会社の持分と日本のGCAホールディングスの株を使って株式移転は会社法上無理だと思います。

 この再編に関して税務上の論点は 日本とアメリカの2つありますが、

日本の株式移転は、組織再編税制の枠組みに入り、共同再編に該当するかどうかということになると思います。この辺の論点は、機会があったら書きますが、適格再編OKと判断していらっしゃるようです。ただ、プレスリリースでは、GCAホールディングスとサヴィアンは規模が同じといういことですが、株式移転するのは、あくまでもサヴィアンの突然新設された日本の親会社ですので、この親会社とGCAを比較してOKとなるということでしょうか? 

あと気になるのがアメリカの方です。 アメリカのサヴィアン出資者は、まず第一ステップで、LLCの出資がINCの出資になり、それが日本のサヴィアン株式会社の株式に変わる。次にサヴィアン株式会社の株式がGCAサヴィアングループ株式に変わる。

これらの過程での出資持分の譲渡益課税がどうなるのかなということですが、資料によりますと「米国内国歳入庁に対し、本株式移転を含む一連の取引の結果、サヴィアン出資者に対し課税がなされないことを確認する回答書が得られない場合」とあるので、課税の繰り延べが原則のようですね。

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GCAホールディングスが米投資銀行の日本親会社を株式交換!

今朝の日経の第1面、「M&A助言のGCA 米投資銀を「三角合併」」 というセンセーショナルなタイトルが目に入ります。

ぎょっとしましたが、正確には、日本のマザーズ上場会社であるGCAホールディングスが、米投資銀行であるサヴィアンの日本親会社 サヴィアン株式会社を株式交換するということです。サヴィアン株式会社は、今後設立され、現在、アメリカのサヴィアンの株主は、日本のサヴィアン株式会社の株主となり、株式交換後、GCAホールディングスの株主となることだと思います。

GCAホールディングスのHPでこの情報が、まだ、リリースされていないので、今はここまで、

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2007年10月 3日 (水)

日興の△株式交換!

今朝の日経の第一面は、「米シティ日興を完全子会社化」です。 今年の51日から可能となった三角合併方式、本件は株式交換ベースだからここでは三角株式交換方式といいますが、による初の事例だそうです。

株式交換って何だ?

株式交換って、既存の会社が他の会社の株を100%手に入れるために、代価として、自分の会社の株を他の会社の株主に渡すようなもの

じゃ、三角株式交換って何だ?

株式交換っていうのは、欲しい!と思った会社の株を代価として支払うものだけど、自分の会社のかわりに自分の会社の親会社の株を渡すもの。

どんな場合に使えるの?

他の会社が上場していて、欲しい!と思ってる方の会社が非上場の場合、通常の株式交換をやると他の会社の株主が持ってる株というのは上場株から非上場株に変わるでしょ。いつでも売れる株からいつでも売れない株に変わるということは、株主にとっては大変な問題です。そんな大変な問題がおこるような株式交換なんて、その株主たちが賛成するわけないですよね。でもそれじゃ、株式交換は絵に描いた餅になっちゃう。

実は、その非上場の会社は、実は別の上場会社の100% 子会社だった。もし、株式交換の対価として、非上場の株じゃなくて、その親会社の上場株をもらうとなった場合、他の会社の株主にとっては、上場株が上場株に代わるだけだから、大変な問題になる可能性も低くなり、結果として、株式交換に賛成して、株式交換が実現できる。

――――というような場合に使えるわけです。

日興のスキームはどんなもの?

現在の資本関係は、米国のシティグループ・インク(シティグループ)が 日本に100%子会社シティグループ・ジャパン・ホールディングス(CJH)を持っていて、この会社が、現在、日本で上場している日興コーディアルグループの株を67.2%(議決権割合約68%)所有しています。

このCJHと日興コーディアルが株式交換するわけです。シティグループと日興コーディアルグループが直接株式交換をすることはできません。別の国の会社同士だから。でも、CJHと日興コーディアルグループが株式交換するけれども、その代価として、CJHの株ではなく、シティグループの株を渡すことは、会社法の改正で可能になり、株式交換のために親会社の株を持つことも会社法では認められてます。

シティグループは現在、日本での上場を準備中であり、もし、上場すれば、日興コーディアルの株主にとっては、株式交換後も、おそらく今まで通りの方法で換金をすることが可能になると思います。

ちなみに交換株式数は 1,700/(シティグループの普通株式の平均株価×為替相場)

税務上の問題点は?

この案件に関しては、日本を代表するような法律事務所と会計事務所がアドバイザーのような形で入っています。物凄いフィーなんだろうなぁ。

朝っぱらから、だらだら税務上の取扱いの説明をしても疲れるだけなのではしょりますが、おそらく、株式交換時点で、日興コーディアルグループの株主にも、日興コーディアルにも税金が発生しないような要件を満たすものになっているのだろうと思います。

でも、プレスリリースを拝見しますと、「本基本契約の締結・公表後に税務上・株式実務上の問題について確認した上で株式交換契約を締結するというストラクチャーは適切である旨の答申を提出しました。」とあるから、税務上のリスクがあるかもしれないと思うようものがあるようですね。そう書かれると、物凄く興味がわきますが♪

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2007年8月23日 (木)

全株取得条項付種類株式の対価として1株未満の株を割り当てられた株主の課税上の取扱

みうらさん:日産ディーゼルの全員端数で現金というのもなんか税金と関係あるんですか

信託大好きおばちゃん:税金と関係あります。

最近はやりの手法ですが、 日産ディーゼル工業(株)(以下「日産ディーゼル」)社の公表資料に基づいて書きます。

       日産ディーゼル社は、ボルボグループの傘下に入るための手法として、次のようなことをしました。

     ボルボ社の100 子会社エヌエー社が日産ディーゼル社にTOBをかけて、日産ディーゼル社は、エヌエー社の子会社となった。

     日産ディーゼル社は、株主総会を開き、現在発行している普通株式を全株取得条項付種類株式に変更する定款変更を行った。

     定款変更後、総会で決議して全株取得条項付種類株式を会社が取得し、その対価として普通株式を株主に割り当てるが、エヌエー社以外は、1株未満の端数になる。

     1株未満の端数に関して、裁判所の許可を得て日産ディーゼル社が買い取り、代金は株主に支払われる。

ここから、税金の話になるのですが、全株取得条項付種類株式の対価として、発行法人の株式のみもらえる場合で、取得された株式と交付を受けた株式の額が同じくらいだったら、この時点での課税は繰り延べましょうとなっています。もし、現金が交付された場合だったら、株主サイドにおいて、みなし配当課税+譲渡損益課税が生じることになります。

ところで、本件の場合は、エヌエー社以外の株主は、全株取得条項付種類株式の対価として、新株式の割り当ては受けますが、実際に交付は受けていません。そして、最終的には、株主は株式ではなく現金を受け取ります。このような場合課税の繰り延べはどうなるのでしょうか?

そこで、法人税基本通達が登場します。

2-3-1       取得条項付株式の取得等に際し1株未満の株式の代金を株主等に交付した場合の取扱い法第61条の211項第2号《有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入》に規定する取得条項付株式に係る取得事由の発生によりその取得条項付株式を有する株主等に金銭が交付される場合において、その金銭が、その取得の対価として交付すべき当該取得をする法人の株式(出資を含む。以下2-3-1において同じ。)に1株未満の端数が生じたためにその1株未満の株式の合計数に相当する数の株式を譲渡し、又は買い取った代金として交付されたものであるときは、当該株主等に対してその1株未満の株式に相当する株式を交付したこととなることに留意する。

つまり、1株未満の端数を割り当てられた株主が全株取得条項付種類株式を譲渡した時点で、みなし配当課税+譲渡損益課税とはならず課税は繰り延べられます。そして、金銭を受け取る時点で株主に譲渡損益課税が生じることになります。

じゃ、このような事例の場合はいつもみなし配当課税がなく、課税が繰り延べられるのでしょうか。

それに関して、前通達に続きがあります。

ただし、その交付された金銭が、その取得の状況その他の事由を総合的に勘案して実質的に当該株主等に対して支払う当該取得条項付株式の取得の対価であると認められるときは、当該取得の対価として金銭が交付されたものとして取り扱う。

          同項第3号又は第5号に規定する全部取得条項付種類株式又は取得条項付新株予約権に係る株式に1株未満の端数が生じた場合についても、同様とする。

            というわけで、状況しだいでは、課税の繰り延べがなされないケースもあるとされています。じゃ、それはどういう場合なのでしょうか。この日産ディーゼル社の事案に関してはどうなるのでしょうか。この事案はいたってノーマルで、別に誰かの税金逃れのためにやったというようなものではないようにも思えるのですが♪

            

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2007年7月31日 (火)

ブルドックソースの23億円の支払いは損金か否か?

いろんなメディアで最近ブルドックソースのことが話題になっていますが。今日は、そのうちブルドックソースのスティールパートナーズ等への23億円の支払いが損金になるかどうかについて、

 これは以前、このブログで書いたねたの応用だと思います。すなわち、新株予約権を時下よりも安い値段で発行して、時価で買い取り消却したケースです。

 新株予約権というのは、会社法上では負債じゃないけど、税法上は負債です。しかし、この新株予約権の発行時の価格というのは、別に時価で行わなくてもいいという規定があります。

第54条(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)

 5 内国法人が新株予約権を発行する場合において、その新株予約権と引換えに払い込まれる金銭の額(金銭の払込みに代えて給付される金銭以外の資産の価額及び相殺される債権の額を含む。以下この項において同じ。)がその新株予約権のその発行の時の価額に満たないとき(その新株予約権を無償で発行したときを含む。)又はその新株予約権と引換えに払い込まれる金銭の額がその新株予約権のその発行の時の価額を超えるときは、その満たない部分の金額(その新株予約権を無償で発行した場合には、その発行の時の価額)又はその超える部分の金額に相当する金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入しない。

 だから価値のある新株予約権を0円でも発行して問題はありません。受け取った法人も0円で受け取ったならば、それが取得価額となります。

第119条(有価証券の取得価額)

3 株式等無償交付(法人がその株主等に対して新たに金銭の払込み又は金銭以外の資産の給付をさせないで当該法人の株式(出資を含む。以下第8号までにおいて同じ。)又は新株予約権を交付することをいう。次号において同じ。)により取得をした株式又は新株予約権(次号に掲げる有価証券に該当するもの及び新株予約権付社債に付された新株予約権を除く。) 零

 ところが、実はこの新株予約権は0円どころか、非常に価値のあるもので、実際のお値段はどうして計算したらそうなるのかわからないけど23億円!だったのです。そして、この新株予約権を会社は株主から買取り消却しようと考えました。新株予約権って負債。 負債や資産を法人が取引する場合は、時価で取引しないといけません。 だから、会社は時価23億円で株主から新株予約権を買い取りました。 仕訳を考えると 貸方現金 23億円はわかるけど、借方は? 新株予約権時価で取得してますよね。これって、社債を割引発行して、額面で償還しているようなものですよね。払い込み価額と額面の差額というのは損金処理されますよね。だったら本件のような差額の23億円も損金になるんじゃないかということでございます。

第22条(各事業年度の所得の金額の計算)

2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。

3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。

 ◆1 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額

 ◆2 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額

      3 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

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