2007年9月 5日 (水)

年金基金と不動産信託受益権

今朝、ネタ探しのために「信託」231号 (社団)信託協会をめくっていると、信託資料として平成19510日社会資本整備審議会が「今後の不動産投資市場のあり方に関する第二次答申」が掲載されていました。ここで不動産投資一任のサービスのあり方という項目がありまして、さらっと読んだときに先日出席した早稲田大学の「信託とファイナンス特別講座」の第4回の石橋博氏の講義「不動産投資と信託」を思い出しました。

この講義のレジュメの中で、年金基金の不動産投資の状況というのがあります。企業年金連合会資産運用実態調査 200612.26社会資本整備審議会 不動産部会「不動産投資一任サービスのあり方について」第2次中間整理よりということで、年金基金の資産構成割合は、2005年だったら、 国内債券、国内株式、外国債券、外国株式が81.7%を占め、不動産はたった0.8%です。

で、第二次答申の方を読むと、「不動産投資市場の健全な発展のためには、投資期間の長い安定的な資金が市場に円滑に供給されることが課題である。このため、長期安定資金の代表的な存在である年金基金による不動産投資を促進することが重要となってきている。」

つまり、年金基金に不動産を継続的に買ってもらいましょう。

年金基金は、将来の年金の財源を守り増やすというのが非常に大事な使命ですが、不動産投資のプロではないです。年金資産を外部運用させるのは一任業者に限定されているようです。一任業者っていうのは、顧客から預かった資産の全部または一部を自分の判断で運用することができる業者のことだと思います。

で、証券投資顧問業者というのが証券取引法の時代からあったのですが、この証券投資顧問業者はJリートの投資証券やYKTK(GK)スキームの投資組合出資持分やTMKの優先出資証券の運用はできますが、実物不動産や不動産信託受益権の運用はできません。有価証券じゃないから。

ところが、金融商品取引法が施行されると、証券投資顧問業者は金融商品取引業者となり、信託受益権はみなし有価証券となるので、投資運用業の運用対象資産となります。

またまた、石橋氏のレジュメに記載された数値(資料;国土交通省CRE研究会報告書)からひっぱってきますが、日本の不動産の価値はトータルで約2,300兆円。 このうち法人所有不動産が約490兆円で収益不動産が約68兆円 そのうち証券化された不動産が約25兆円だそうです。

大金持ちの年金基金が信託受益権を利用して不動産投資をすることが予想されるので、収益不動産の証券化が今まで以上に活発化されるのでしょうね♪

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2007年8月21日 (火)

J-REITのリスク要因に関する実証的研究

 昨日、早稲田大学の「信託とファイナンスの特別講座」に出かけました。前半が「債権流動化と信託」、後半が「不動産投資と信託」でした。

この不動産投資と信託の講義の中で 株式会社住信基礎研究所が財産法人トラスト60の委託研究を受けて平成20073月に公表した J-REITのリスク要因に関する実証的研究」報告書 に関して、今朝、はらはらと読んでみましたので、ご紹介します。

ようするにJ-REITのリスクを分析すると、市場ファクター(株式、債券、不動産)の影響度合いは3割程度であり、J-REIT独自リスク(スペシフィックリスク)は7割を占める。

市場ファクターのうち、不動産の影響度合いであるが、調査対象期間である200110月から200410日までは不動産とJRISKは負の相関関係だった。この時期は、不動産価格が下落し、空室率が上昇し、家賃が減少している。しかし、不動産価格の下落が不動産の投資に対する高配当が期待できた等の理由によりJ-REITの株価は上昇した。

20011月から20072月までの期間は、不動産とJ-RIETは正の相関関係であると考えられる。この時期、不動産価格が反転し、空室率が下落し、家賃が上昇している。不動産価格が上昇したことによりJREITの資産価値が増え、また家賃の上昇から高配当が期待できるので、こちらの場合もJ-REITの株価が上昇した。

J-REITのリターンについて不動産の動向は重要な影響を与えるから、実物不動産市場の分析と予測はますます重要である。

J-REIT独自リスク(スペシフィックリスク)は、資産規模、東京都心5区投資比率、機関投資家比率と負の相関、予想配当利回りと正の相関がみられた。

すなわち、資産規模が大きくなるほど、分散投資が進められ、個別不動産ごとのリスク(たとえばテナント退去)の全体にあたえる影響が小さくなるのでリスクは低なり、リターンは安定する。

一極集中によって東京都心五区の不動産需要が旺盛であるし、データーも完備されているので投資のミスマッチが起こりにくいので、他の地方都市と比較するとリスクが低くなり、収益が安定する。

機関投資家は、長期保有を目的としている傾向が強く、情報収集分析能力も優れているので、機関投資家が投資しているものは、リスクが低く、安定した収益が見込まれるものが多い。

予想配当利回りであるが、リスクの多い商品へ投資するためには、安定した商品よりも高い利回りが要求されるということ。だからリスクが高まれば、配当利回りも上昇する。

 ということかなあ。

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2007年3月23日 (金)

信託2行、兵庫県を提訴

平成19323日の日本経済新聞の朝刊によると

「三菱UFJ信託銀行と住友信託銀行が兵庫県を相手取り、総額七十八億七千九百万円の支払いを請求する訴訟を起こしたことが二十二日、分かった。二行は兵庫県から土地の信託を受け、スポーツ施設の運営などを受託していた。銀行側は運転資金を外部から手当てしていたが、収益の悪化で生じた損失は県が補償すべき契約だったとして、提訴に踏み切った。」

 これって、信託財産が債務超過になったような場合に、受託者が信託財産を超える部分の借入金を受託者個人の財産でもって支払ったケースにあてはまるんですよね。その部分については、受益者が放棄しない限り、受託者は受益者に請求できる(現信託法36②、③)。たぶん受益者に放棄させないように信託契約書で決めてるのでしょう。だから上記の土地信託で銀行側が負担していた借入金部分に対して兵庫県は、支払わないといけない。でも兵庫県もお金がなかったから(たぶん)ちゃらにしてねと言ってきたのかな。で、契約違反だから訴えるぞとなったのでしょう。

 新信託法では、受益者は、信託財産から費用の支払いをするけど、信託財産を超過する部分について、原則としては、受益者は支払う義務はないけど、契約で支払うと決めた場合はそれに従うというようになったと思う(新信託法48⑤)。たぶん新信託法が施行されても受託者が損するような契約を作るとは思えないから、土地信託で債務超過になった場合は受益者が負担するというような文言をいれるんじゃないのかな♪

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2006年9月 9日 (土)

滞納した固定資産税は、どこからとれるのか?

土曜日だけど通常ネタ

 

最初のQ ある不動産について、信託を原因とする所有権移転登記がなされた後、当該不動産に対して、委託者(元所有者)が先に滞納していた固定資産税(平成18年1月1日現在所有している不動産に対するもの)に係る滞納処分を執行する(課税庁が当該不動産を差し押さえる)ことは可能なのでしょうか。

A.滞納処分を理由として課税が不動産を差し押さえるのは難しいと考えます。

理由の要旨は

固定資産税の納税義務者は1月1日に不動産を所有している人、だからもしその所有者が固定資産税を払っていない場合は、その所有者の不動産や他の財産を差し押さえることはできるし、もし不動産を売却しているなら売却代金を差し押さえることはできる。

でも不動産が売却されて他人の物になった場合、その他人の持ち物にまで差し押さえをすることは原則的には難しい。だって買主は固定資産税が払われていないことなど知らないし、知る義務もないのに、ある日突然差し押さえなんてリスクがあるなら怖くて不動産なんて誰も買えないから。

これは何も売却しているケースには限らない。たとえば信託した場合も、実質的な所有者は自益信託の場合は変わらないけど、形式的には所有者が変わるから。

ただしこの信託が債権逃れであるということが証明されたような場合は、差し押さえは可能でしょう。

で、みうらさんのコメント

信託受益権を差し押さえるしかないでしょうね。

信託大好きおばちゃんのレス

そうですね。信託受益権に含まれている不動産には差し押さえの効力はないけれども、信託受益権をその不動産の所有者が所有し続けている場合には、信託受益権も固定資産税の債務者の財産の一つだから差し押さえは可能でしょうね。

でももし、その信託受益権を第三者に売却したような場合は、そしてその売却が真正売買(TRUE SALE)といわれるようなものであるならば、信託受益権に対して差し押さえはできないでしょう。もちろん信託受益権売却代金を差し押さえることはできると思いますが、

固定資産税だからイメージしにくいですが、この第三者をSPCと置き換えたら、なぜ流動化スキームでSPCをかますか理解できると思います。すなわちオリジネーターの倒産リスクから信託受益権を隔離させるためです。

なおアメリカでは浪費者信託というのがあって、信託受益権を所有している受益者が破産しても、債権者が受益者の持つ信託受益権に差し押さえができないというようなものすごいパワーをもつ信託があるようですが、日本では、さすがに制度として設けていませんね。

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2006年9月 6日 (水)

委託者が固定資産税を滞納している不動産を信託した場合

Q ある不動産について、信託を原因とする所有権移転登記がなされた後、当該不動産に対して、委託者(元所有者)が先に滞納していた固定資産税(平成18年1月1日現在所有している不動産に対するもの)に係る滞納処分を執行する(課税庁が当該不動産を差し押さえる)ことは可能なのでしょうか。

A.滞納処分を理由として課税が不動産を差し押さえるのは難しいと考えます。

解説: 固定資産税というのは、1月1日に不動産を所有している人が納付しなければならない税金です。もしこの不動産を5月1日に売却した場合でも、その年の固定資産税を全部支払わなければならないのは、買主ではなく、1月1日に所有していた売主の方になります。

固定資産を売買した場合、よく固定資産税を期間按分して、買主所有している期間に対応する固定資産税部分も譲渡代金に上乗せして支払うこともありますが、これはあくまでも取引の当事者間の決め事であり、このことにより固定資産税の納税義務の継承とはなりません。

もし所有権者が変わらない状態で固定資産税が滞納状態になっている場合、課税庁はその固定資産税の支払いにあてるために不動産を差し押さえることはできます。もしその不動産を売却して、売却代金に化けた場合、その売却代金を差し押さえることもできます。

でも売主の手元から離れて、買主(滞納を知らない)の手元にある不動産それ自体に差し押さえをできるかというとそれは難しいです。だって買主にとって別に払う必要のない債務が実はあったから差し押さえますよなんて突然いわれたらびっくりしますよね。それなら先にそのような状態であることを教えて欲しい。そうじゃないなら怖くて不動産なんて買えないです。

上記の事例は不動産を売却した場合ですが、信託をした場合はどうなるのでしょうか。信託をした場合も同様だと思います。経済的な実態は、自益信託(委託者=受益者)なら信託の前後で変わりませんが、法形式上は、所有者が委託者から受託者にかわるので、不動産を売却した場合と同様に、受託者に対して委託者の固定資産税の滞納部分を払えとはいえないのではないでしょうか。

いちおう能見善久「現代信託法」有斐閣 P37によると、信託法の条文からは明確ではないが、信託設定当時の債権者は、信託財産にはかかっていけないのが原則である。委託者の債権者からすれば、信託設定によって債務者(委託者)の責任財産が減少する。しかし、これは信託に限ったことではなく、債務者の財産が他人に譲渡されれば当然に生じることである。したがってそれが委託者の債権者を害する目的でなされた場合は別として(信託法12条の詐害信託)、信託の設定によって委託者から特定の財産が流出すること自体には問題がない。

詐害信託の場合や、固定資産税の差し押さえの仮登記をすでにした場合でもない限り、受託者の手元にある不動産を差し押さえるのは難しいのでしょうね。

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2006年8月16日 (水)

REITの利回りを高めるためには

1.REITアナリストのお仕事は

 昨日(平成18年8月15日)の夕刊に「拝啓個人マネー様『貯蓄から投資』の担い手たちか不動産を商品に㊦REIT分析者」という記事が載っています。

 ここではUBS証券の沖野登史彦シニアアナリストの仕事振りが書かれています。彼はREITのアナリストの第一人者でありREITに組み込まれた不動産について評価ができる人だそうです。

 REITをなぜ投資家が購入するかというと、利回りがよく、市場で売却して換金できるところです。その利益の源泉は不動産の賃料収入であり、将来の売却収入であるので、より多くの賃料収入を継続して受取れるようなものか、将来高額な値段で売れるかが重要なポイントになります。そのため物件の形状、テナントの稼動状況、隣地に様子などを確認するため、毎週全国を飛び回っているそうです。

 たとえば彼は物件を見にいくときは、自家用車で行くそうです。運転が上手くないドライバーでも入りやすいかチェックするためだそうです。「駐車場に入るのに2回右折が必要なところはマイナス」など、つかいやすいかどうかも物件の収益性を評価するポイントだからだそうです。

2.借入金のレバレッジド効果

REITでは、不動産を購入する場合、購入資金の全額を出資によらず一部分を借入金で行うことがしばしばあります。これは借入金を一部いれることにより、投資利回がよくなる効果があるからです。

例を使って説明します。

100億円の不動産を取得します。これを全額出資で賄うとすると

発行済出資総数は(100億円÷5万円=200,000口となります。

この不動産の純賃貸料が8億円で減価償却費が3億円とすると当期純利益が5億円(8億円―3億円)となり、全額配当にまわします。

そうすると利回りは 5億円/200,000=2,500 2,500÷50,0000=5%となります。

次に100億円の不動産を取得します。このうち半分の50億円を借入で賄うとすると、発行済み出資総数は(100億円―50億円)/5万円=100,000口となります。

この不動産の純賃貸料が8億円で減価償却費が3億円で、借入利息が1億円とすると当期純利益は4億円(8億円―3億円―1億円)となり、全額配当にまわします。

そうすると利回りは 4億円/100,000=4,000 4,000÷50,000=8%となります。

このように借入金を入れたほうが利回りの高い魅力的な投資商品となります。しかし借入金の比率が高いと、将来の金利上昇により利回りが下がるリスクがあるので、REITの計画上の借入比率は50%前後ですが、実務上は、総資産に対して40%前後の比率を一つのめどとしているようです(注)。

注 佐藤一雄 不動産証券化の実践完全版 ダイヤモンド社2006年 P270 

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2006年7月25日 (火)

REITとSPCはどう違うの? お返事

ど素人さんからいただいたコメントについて、自分なりにかんたんにまとめてみます。

1.REITとSPCの概念的な違い

REIT(Real Estate Investment Trust)とSPC(special purpose company)は、いずれも投資家からお金を集めてきて、それで不動産を購入し、不動産から生ずる収入(家賃、地代、売却代金)をベースに投資家に利益を分配するために必要な器(ビークル)です。

本質的なものは同じですが、使われ方は微妙に違います。

ど素人さんがイメージするように、会社がSPCを作って、資産をSPCに譲渡して、それからREITが買うというスキームはあまりききません。 会社がSPCに資産を移すか、 会社がREITに資産を移すかいずれかだと思います。資産を転々と移すと当然、流通コストがかかりますから。

概念的な違いといえば、REITは先にお金ありき、SPCは先に資産あり言われます。REITは、投資家からお金を集めてきてそのお金で儲かるような資産を集めてくるようなもの。 SPCは、資産を売却して資金調達をしたいがその資産を今後も利用したいというようなニーズがまずあって、資金の出し手を捜しましょうというようなものです。ただ実際には、REITでも先に資産ありということが多くあります。

2.REITとSPC 誰が投資することを前提にしているか?

REITというのは、大きなお金を広くあつめて投資するためのビークルですから、素人が投資家であるということが前提に作られています。このビークルの投資口(株式のようなもの)を証券取引所に上場させることができます。上場しているから、投資口を投資家は、いつでも売買できます。素人の投資家でも参加して困らないように証券取引法(金融取引法)による規制が厳格になされています。

SPCというのは、少人数のプロ投資家やセミプロ投資家からお金をあつめてくるということが前提に作られています。

会社法施行前は、有限会社をビークルとしてしばしば使われていました。会社法施行後は合同会社を利用するものが多くなると予想されています。投資家はSPCの出資金に直接投資するというよりも、SPCと匿名組合契約を結んで投資するという手法を使うことが多いです。匿名組合契約というのは、お金をだすけど口はださないというパトロン契約のようなものです。プロ投資家やセミプロ投資家向けの投資が多いため、REITに比べると規制は穏やかではないかと思います。

3.REITとSPC 税務上の違い

 REITというのは、特別な法律によって作られたビークルです。特徴としては、条件を満たしたら、支払った配当がビークル側で税務上の費用(損金)になることです。ビークル側で法人税の負担が減少されるから、その分多くのお金を投資家に分配することはできます。また配当について、源泉所得税が差し引かれますが、上場しているREITで平成20年3月末までの配当は、源泉税率が個人投資家の場合10%、法人投資家の場合は7%となります。

 SPCに対して、投資家は匿名組合を通じて出資するのが一般的ですが、この匿名組合分配金は、SPC側では損金となります。なお日本の会社や日本の居住者10人以上と匿名組合契約を結んでいるような場合は、分配金に対して20%の源泉税を差し引かなければならないので、日本の投資家向けの場合は投資家数を10人未満にすることが多いです。また外人投資家の場合は、人数にかかわらず20%の源泉税が必要ですが、その外人の国と日本の間で結んでいる租税条約によっては、源泉税が免税となるような場合もあります。

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2006年7月 6日 (木)

イレギュラーな土地信託の場合の課税関係は?

1.         土地信託

土地信託というのがあります。土地を信託財産としているようなものですが、税法でいう土地信託というのはいくつかの条件を満たしているような土地信託です。現在取引されている土地信託は、税法上の条件を満たしているものばかりと思います。

土地信託に該当する場合は、その信託受益権を持っている人があたかも土地を持っている人とみなして課税するというルールです。

それでは土地信託の条件を満たしていないような土地の信託を行った場合の課税関係はどうなるのでしょうか。

2. 収益受益権と元本受益権

土地信託の条件の中で、元本受益権と収益受益権が分割されていないというのがあります。

元本受益権というのは、信託期間が満了したときに、元本を受け取る権利があることです。信託期間中の地代収入は1円ももらえません。収益受益権は、信託期間中の地代収入はすべてもらえる権利があります。

今回はこの元本受益権と収益受益権が分割されている信託を設定した場合の課税関係を考えます。

3.信託した土地を売却した場合の収入はどのように配賦されるのか

信託期間中に土地を売却した場合の売却収入はどうなるのでしょうか。

信託法の考え方によると、信託期間中の収入はたとえ土地売却による収入であっても収益受益権者が受け取ることになります。

でも税法的には、収入は元本受益権者と収益受益権者が受け取ると考えます。

たとえば土地の所有者Aが土地を信託し、元本受益者をBに、設定した場合、Bは設定時に取得した元本受益権について贈与税を納めないといけません

そうすると税法的には、Bは、信託設定時に土地信託の元本受益権すなわち土地を取得したと考えるから、その土地を売却した場合の売却収入のうち元本受益部分は、Bが土地を譲渡した部分と考えて譲渡所得を計算するのが合理的です。

もしAが収益受益権を持っているならば、売却収入のうち元本受益部分を差し引いた残りが収益受益部分として課税することになるのではないでしょうか。

信託法の考え方と税法の考え方が異なるので奇異ですが、このような元本受益権と収益受益権が分割したような信託をするのは、家族や同族間しか行われないと思います。

4.元本受益権の所得の計算

 土地の信託の元本受益権の譲渡は、土地の譲渡と同じと考えられます。土地を譲渡した場合は、譲渡収入から取得費と譲渡費用を差し引いて所得を計算します。元本受益権者が個人の場合は、分離課税され、所有期間によって税率が異なります。 BはAから元本受益権を贈与により取得しているから、Aの土地の取得費と取得時期を引き継ぎます。

ですからたとえばAが10年前に1億円で購入した土地を信託して、その土地を2億円譲渡した場合でBの元本受益権に対応する部分が1億5,000万円であるならば、 譲渡所得は5,000万円(1億5千万円-1億円)となります。税金は   5,000万円X20%=1,000万円

(15%は所得税 5%は住民税)

5.収益受益権の所得の計算

それでは収益受益権を譲渡した場合の所得はどうなるのでしょうか。収益受益権というのは、土地や建物のような資産ではなく、金銭債権と考えます。金銭債権の譲渡による所得は、譲渡所得と考えません。なぜなら金銭債権を譲渡したことによる所得はキャピタルゲインではなく、利子相当分だから、譲渡所得として課税するのは合理的ではないと考えるからです。

したがって収益受益権の譲渡所得は雑所得と考えます。それでは、雑所得の計算上の控除する取得費相当額はいくらになるのでしょうか。この収益受益権は、信託を設定することにより自動的に発生したものだから取得費相当額は0と考えます。

ですから上記の事例で 収益受益部分が5,000万円(2億円―1億5,000万円)ならば、この部分については他の所得と合算して超過累進税率で課税されるので、長期譲渡所得よりはるかに高い税金をAは納めることになります。

参考文献 山田煕、中森真紀子 『信託の税務 相続税対策としての戦略的活用本』 ぎょうせい

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2006年5月29日 (月)

TMKとTK+GK(旧YK)どっちがいいか

KHPさんの質問です。『自社保有の不動産、今後購入予定の不動産を本体の会社から切り離したい 株式会社がいいのかTMKがいいのか。』自社保有の不動産、今後購入予定の不動産を本体の会社から切り離したい 株式会社がいいのかTMKがいいのか。

株式会社は流動化のビークルではあんまり使わないですね。従来は有限会社(YK)を作りましたが、会社法改正からは、合同会社(GK)を利用すると思います。GKとは、有限責任だけど株式会社より会社の組織を柔軟に設計できて、会社更生法の対象にならないから、GKにお金を貸した金融機関は、GKが潰れても、しっかり自分の取り分は優先的に返済できるので債権者にやさしい会社です。

1. TMK

特定目的会社は、資産の流動化のための会社ですが、設立されるためには、お上に資産流動計画を提出しないといけません。これ自体はそんなに膨大な作業がいらないのですが、一番大変なのが、税務上の恩典である配当が損金となる要件を満たすことです。

この要件のメインは、

◎社債を公募(50人以上)で1億円以上集めるか、適格機関投資家のみに引き受けてもらう 又は優先出資証券(議決権がないかわりに配当を多くもらえる)を50人以上が引受けるか適格機関投資家のみが引受けるか

◎同族会社にあてはまらないこと

◎配当可能所得の90%超を配当として支払うこと

 TMKがやっかいなのは同族会社(3人の株主が過半数の株を持つ会社)にあてはまらないのが難しいことです。なぜなら劣後部分はオリジネーターが持つのがお約束みたいなものだからです。

 ただTMKに関しては、社債を1億円以上公募で集めるか、適格機関投資家のみに引受けてもらう場合は同族会社でもいいので、実務でTMKは、ほとんど適格機関投資家が社債を引受けているパターンです。

また90%超の配当をしないといけないのも問題です。このベースになるのは税務上の利益ですが、税務上の利益と会計上の利益が異なる場合(会計上の利益の方が低い場合)は、税務上要求される90%超の配当が行えないので、自動的に利益全部が課税されます。

このように厄介な問題があるので、あまりTMKは使われていません。といっても平成183月末現在で関東財務局届出分は547件ありますが、

2.TK+GK(旧YK)スキーム

TMKは、上記のような問題があるので、私募の多くはTK+GK(旧

YK)スキームが利用されています。

どんなスキームかというと

会社(オリジネーター)が持っている不動産を信託して、信託受益権を受取る。

オリジネーターが有限責任中間法人(そのうち一般社団法人になる)に出資し、中間法人がGKに出資する。GKが投資家と匿名組合(TK)契約を結び、金融機関からノンリコースローンローンを借り資金調達をする。

その資金でオリジネーターの持っている信託受益権を購入する。

信託受益権から生ずる利益を原資に利息や、TKの分配金を支払う。

?なぜ信託受益権なのか

信託受益権をGKが取得した時に不動産取得税がかからないし、登録免許税もナマの不動産売買よりもはるかに安いから。信託受益権をGKが購入した場合、GKが不動産特定共同事業法の事業にあてはまらないので、資本金が1億円以上とか宅建免許が必要という規制の対象外になります。

?なぜ有限責任中間法人か

これは会社が倒産した場合に、会社の債権者が、GKに移った資産は会社の資産だから召し上げる!となったら投資家がつっこんだお金がパーになるので、これを避けるために中間法人をかましています。中間法人は、出資者が経営者をコントロールできないしくみになっているから倒産隔離が図れます。

?なぜ匿名組合(TK)か

TKは、パトロン契約みたいなもので、出資者は、金はだすけど口はださないので、経営者としては自分の自由に運営でき、分配金が損金となるからです。TMKも配当が損金となるので、受取の実質手取りは同じになります。

3.TMK TK+GKの共通の留意点

資産の流動化でTKやらGKに資産を移動する目的は、オリジネーターの資産を減らして(オフバランス)、資産効率をよくしましょうという目的のためです。とはいっても証券化した部分のうち劣後部分は通常オリジネーターが引受けます。

この引受け部分が不動産の総額のおおむね5%を超えるような場合で、オリジネーターに会計監査が入っている場合は、売買ではなく金融取引だ!ということになり、オフバランスはできなくなります。

コストやらリスクと効果を考えるとTK+GKの方がいいのですが、投資家が、TKの出資よりも社債を引き受けたいというならTMKなのでしょうか。でもGKだって会社法の改正により社債は発行できるので、今後TMKが他のビークルよりも競争力を得ようとしたいなら、特別のセールスポイントが必要じゃないかなと思います♪